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拝啓、父へ。

私が派遣社員として、離婚後廃人のように働いていた日々。

自由を愛しレニークラビッツのように兄がやっとの思いで入所できた老人ホームから疾走し、私の目の前で兄と父は喧嘩をした。

号泣する私にできることと言えば父は、彼の全財産の小銭を渡すことだった。

幼い時から1円玉でウイスキーを冬場に買いに行かされることもあれば、友達に電話すると脅迫される日々だった。

兄と暴れる父をミイラ巻きにガムテームですることもあれば、鍋の底をお玉オーケストラで応戦した。

父は死んだ。道端で。誰にも看取られることなく、死んだ。

私と交わした最後の言葉は「一万円貸してくれ」兄から止められていた私はそのまま、「貸すことはできないから」とガラケーを閉じた。

死に意味があったかはわからない。次の日市役所の人に弔われた父は幸せだったのだろうか。

私は翌日家族に呼び出され、焼肉を食べた。何の味もせずに、兄は淡々と悪口を言い、母は未練といたたまれさを口にした。

私には家族の権限がない。言われることだけ聞いてきた。

そして、45歳に青葉と共に暮らしている。父はたまにふと幽霊になり部屋にやってきて様子を見ている。(青葉談)

でも、最後に言わせて、父を愛していることを。
憎んだのはアルコールだけだということを。

なんでも嬉しいお年頃です!よろしくお願いいたします🙇