究極のカメラバッグ

重いものを持ち歩きたくない、とズームレンズ付きのコンパクトデジカメで撮影する森山大道氏のようなスタイルがある意味理想なのだけれど、現実にはそうも行かない。仕事ではそれに合った機材が必要だし、自分のために撮影するとしても何らかの意図があれば、それに沿った道具を用意する。自宅スタジオでもない限り、それを持ち運ぶカメラバッグが必要になるわけだ。

今まで比較的長く使ってきたのは3タイプ。機内持ち込みサイズのローラーバッグと、機材を取り出した後、薄くできるタイプのリュック、それからショルダーバッグだ。前二つはシンクタンクフォト、ショルダーはドンケ。ちなみに機内持ち込み可と行っても航空会社によって持ち込み可能なサイズや重さに違いがあり、特に重さが気になるのでだんだん使用頻度が落ちてきている。治安のあまり良くないところでゴロゴロと引いて歩くのも気が引ける。

リュックはまだ使っているが、担いでいる時は機材の取り出しができないので、場合によっては不便。レンズの付け替えなどのため、ウエストベルトに取り付けられるポーチを使っているものの、ウエストベルト自体があまり好きでないのでショルダーベルトに付け替えている上、肩にかけられるライトスタンド用のバッグを持つと荷物が3つになってしまう。これが嫌でライトスタンド用のバッグが必要な時はショルダーバッグを使うことが多くなっていた。

このショルダーバッグはドンケのF2と呼ばれるその業界では有名なバッグで、丈夫なキャンバス地なので長く使える。はずだったのだが、裏のポケットには穴があき、レンズなどを分類して収納できる田の字の形をしたインナーもボロボロに。インナーは慣れない裁縫で修理。ショルダーベルトは交換したものの、そのベルトを通す金具(実際はプラスチック)とバッグ本体をつなぐストラップが痛んできた。だいぶ前に買ったものではあるものの、全く使っていなかった時期もあるから、実際には10年も使っていないと思う。どうやらたすき掛けにすると上蓋の縁が干渉し、経年で痛んでいくようだ。この部分は縫い付けてあるので、交換は想定されていない。

それで新調しようかと思ったのだが、結構高い。アメリカ製で為替レートの影響を受けるのか、アマゾンでの値段が結構変動する。他は在庫切れのままのところが多い。で、色々探していたら、若干安いモデルを見つけた。リップストップナイロンで軽量化したリミテッドエディション。F2といえばキャンバス地で濡れると乾きにくく、また重いのが難点だったので、ある意味渡りに船だ。しかしアマゾンでの顧客評価はすこぶる低い。どうも生地がペラペラなようだ。

もともとドンケF2は機材の保護よりも現場での機材の取り出しやすさ、使いやすさに重点を置いているので、さらにプロテクションが弱いとなれば慎重な扱いが必要になる。いつものインナー以外に何か緩衝材的なものは入っているのか調べてみたが、よくわからなかった。もちろん自分でインナーを入れることはできるはず。そんなことを考えていると、自分がカメラバッグに求めていることが浮かび上がってきた。

まず機材が取り出しやすいショルダーバッグであること、次に最低限のプロテクション性があること、ナイロン素材で乾きやすいこと、あまり重くないこと。と考えていくと自分で気に入ったバッグとインナーを組み合わせて使えばいい気がしてきた。薄いナイロンのショルダーバッグに底板のような中敷、インナーバッグ、あるいはポーチを入れておけば、機材によってインナーなどを入れ替えできるし、あまり重くもならないはずだ。

とすれば、もちろんドンケでなくともいいはずで、実際昔買った無印良品のペラペラのショルダーにF2のインナーとシンクタンクのポーチを入れたら、何かいい感じになった。それはそうだろう。ドンケF2もフォトジャーナリストだったジム・ドンケ氏が自分が使いやすいカメラバッグを作り始めたのが発端なのだから。自分にとって究極のカメラバッグは自分で作るしかない。手先の不器用な筆者はまずは組み合わせで何とかしようと思っているけれど。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?