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通貨が変わった日

ミラノのマルペンサ空港に到着したのは、2001年12月31日の夜のこと。大急ぎでヴェローナに向かうと、友人宅ではユーロの流通開始を祝うパーティーが始まっていた。皆の手には、真新しい財布。イタリアリラに比べて、ユーロの紙幣はサイズが大きいので、これまで使っていた財布は使えない。「ほんと、困っちゃうよね」と言いながらも、皆、なんだか嬉しそうだ。

零時が近づき、ワインボトルとグラスを持って街へ繰り出す。カウントダウンの花火が上がり、路上のあちこちから新年を祝う声とグラス同士がぶつかる音が聞こえてくる。チーン! ガシャーン! どうやらグラスが割れるのは想定内らしい。

ワインボトルが空になったところでバーに入る。店は大変である。何しろ、当面はイタリアリラとユーロの両方に対応しなくちゃいけないのだ。リラで払う客。ユーロで払う客。リラで払ってお釣りはユーロで…となると、もう大混乱。お釣りの計算がうまくできなくて、「タダでいいよ」「お釣りはいらないよ」という会話も飛び交っていた。

ちなみに、ユーロ導入が一番スムーズにいったのはドイツで、一番混乱が多かったのはイタリアなのだとか。あまりにも想定内すぎて思わず笑ってしまう。

日本で新しいお札の流通が始まった今日、ふと、ユーロの流通が始まった日を思い出して、大事に保管しているイタリアリラを引っ張り出してみた。ユーロとリラの紙幣のサイズは、ほとんど変わらなかった。財布に入らなかったのは、どうやら50ユーロ紙幣らしい。

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