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著作権の認められない写真

カメラの話ではないが、以前ボクの勤務先で、客先の製品カタログを制作するために製品写真を撮ることがあった。わざわざカメラマンを雇って撮るような大きな仕事ではなかったので、当時担当営業だったボクが撮ったのだ。
その後、ふと著作権についてどうなっているか疑問に思ったため、社内の法務担当に問い合わせた。広告代理店が絡むような正式な案件であれば契約書に明記するであろうが、狭い業界向けカタログの制作に伴う撮影であったので特に明記されていなかったからだ。

すると法務担当からは、「撮影者の思想信条を表したものでない限り著作物とは認められない。今回の写真は誰が撮っても同じ写真であるから当然である。」との回答だった。
ボクはその回答にショックを受けた。時間やコストをかけ苦労して撮った写真にも関わらず、著作物と認められないとは。

しかしよく考えると、それも仕方ないとも思えた。
なぜなら、カタログやチラシに数百もの大量の写真を掲載する場合には、1つ1つを丹念に撮るようなことはしない。一定のライティングを決めた撮影セットの上に、次々と製品を乗せて流れ作業で撮っていくのである。
それはつまり、シャッターを切る人間は誰でも良く、昨日採用したアルバイトでも務まる。そんな写真が著作物と認められるはずがない。

もし分かり易く極端に言うなら、スキャナーにかけて製品を画像化したものが著作物と認められるかという議論にもなろう。製品写真とは、そういうものなのだ。

<スキャナーによる画像>

もちろん、スキャナー作業の人工費として客先に請求することは当然だが、それはまた別の話。

だがボクは考えた。
写真を撮るのは、何のためか。
人様に著作物と認められたいがために写真を撮るのか?
それは違うんじゃないのか?

ボクの写真は、ボク自身のために撮るものだ。自分が欲するから撮るものだ。

形あるもの、いや、形が無くとも目に映るものは無常である。いつか朽ち、消えて無くなる。だからそれをそのままの形に留める写真として残すのだ。
そして、気付いた。その写真を撮ることこそが、本当の意味でそのものを所有したことになるのだと。

もしかしたら、下のように場の雰囲気を作り出した写真なら、少しは著作物として認められるかも知れない・・・?

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