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カリフォルニアワインの記憶とその澱

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晩酌の記憶で綴る、個性と多様性のカリフォルニア・ワインについての雑感。
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2024年8月の記事一覧

暮らしとテロワール

暮らしとテロワール

カリフォルニアに行くと、過ごしやすい気候と青い空のおかげか、開放的で前向きな気分になるのは筆者だけではないだろう。現地の人達も、どこか楽観的な性格の人が多いように思う。カリフォルニア・ワインが親しみやすく享楽的なのは、こうした気候や人々のパーソナリティと無縁ではないと思う。

ただ、近年は、サンノゼの住宅価格の高騰やサンフランシスコの空洞化といったニュースも聞かれるようになり、カリフォルニアでの暮

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先駆者

先駆者

音楽や芸術の分野で、強い衝撃が多くのフォロワーを生む現象は珍しくない。しかし、先駆者が革新を続ける限り、後進がオリジナルを超えることは容易ではない。

Sine Qua Nonというワインがある。カリフォルニア・ワイン好きの間で長く崇められてきた銘柄だ。漫画「神の雫」で使徒の一つに選ばれ、随分と話題になったこともある。今でも好事家達の憧れのワインと言って良い。

創設者であるManfred Kla

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人気と実力

人気と実力

どこの社会やコミュニティにも人気者というのはあるものだが、きちんとして実力のある人は、意外と目立たず静かに佇んでいるものだ。

先日、いわゆるカリフォルニア・ワイン好きが集うイベントに参加する機会があった。珍しい趣向で、各々がワインを一本持ち寄ることが参加条件となっていた。腕によりをかけて選んだワインを携えた参加者が集まり、ワインの話にも大いに花が咲いたので、会としては成功だったと思う。

多くの

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愛嬌

愛嬌

愛嬌のある人にはつい親しみを感じてしまうものだが、そんな人柄がワインに出ることもある。

カリフォルニアにおけるローヌ品種の草分けと言えば、Alban vineyardsを興したJohn Alban氏をおいて他にはない。同氏は、20代の誕生日にコンドリューの「安ワイン」と出会ったことで、後にローヌに渡ってワインを学び、カリフォルニアでローヌ品種の可能性を探求するパイオニアにまでなった。

生産者と

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矜持

矜持

「不可能だと言われれば、それを可能にしてしまう。それがアメリカの矜持だ。」

という台詞を、「沈黙の艦隊(かわぐちかいじ作)」で読んだ記憶がある。本作は手に汗握る展開が見ものだが、登場人物の口から出てくる印象的な言葉も魅力だ。ちなみに、実写ドラマもなかなかの完成度なので、気になる方にはお勧めしたい。

ところで、カリフォルニアでは、長らく以下のニ領域ついては優れたワインを作ることは不可能だと言われ

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