カリフォルニアワインでまったり

カリフォルニア・ワインについて語る人。 WSET Level3, Capstone …

カリフォルニアワインでまったり

カリフォルニア・ワインについて語る人。 WSET Level3, Capstone California Level 1

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人気と実力

どこの社会やコミュニティにも人気者というのはあるものだが、きちんとして実力のある人は、意外と目立たず静かに佇んでいるものだ。 先日、いわゆるカリフォルニア・ワイン好きが集うイベントに参加する機会があった。珍しい趣向で、各々がワインを一本持ち寄ることが参加条件となっていた。腕によりをかけて選んだワインを携えた参加者が集まり、ワインの話にも大いに花が咲いたので、会としては成功だったと思う。 多くの参加者がWSETやワインエキスパートといった資格を有していることもあってか、豪華

    • 愛嬌

      愛嬌のある人にはつい親しみを感じてしまうものだが、そんな人柄がワインに出ることもある。 カリフォルニアにおけるローヌ品種の草分けと言えば、Alban vineyardsを興したJohn Alban氏をおいて他にはない。同氏は、20代の誕生日にコンドリューの「安ワイン」と出会ったことで、後にローヌに渡ってワインを学び、カリフォルニアでローヌ品種の可能性を探求するパイオニアにまでなった。 生産者としても、Alban vineyardsはカリフォルニアの中で名実共に屈指のローヌ

      • 矜持

        「不可能だと言われれば、それを可能にしてしまう。それがアメリカの矜持だ。」 という台詞を、「沈黙の艦隊(かわぐちかいじ作)」で読んだ記憶がある。本作は手に汗握る展開が見ものだが、登場人物の口から出てくる印象的な言葉も魅力だ。ちなみに、実写ドラマもなかなかの完成度なので、気になる方にはお勧めしたい。 ところで、カリフォルニアでは、長らく以下のニ領域ついては優れたワインを作ることは不可能だと言われてきた(あるいは、今もそう言われている)。 それは、ピノ・ノワールとスパークリ

        • カリフォルニアのヴァン・ナチュール

          ヴァン・ナチュールの流行が、一層、熱を帯びてきている。 若年層のアルコール離れや人口減少による需要減が話題になる中、今年、東京で開催されたRAW Wine Tokyo 2024は、想像を超えて盛況だったようだ。 ヴァン・ナチュールという言葉が想起する、伝統産地の格付けや品種の制約に囚われず、できるだけ介入を減らして個性やパーソナリティが感じられるワインを作り、持続可能な方法で消費者と生産者が手を取り合ってワインのある生活を育んでいくというイメージが、循環型社会に関心のある

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        • カリフォルニアワインの記憶とその澱
          11本

        記事

          歩幅

          分かってはいても、自分の歩幅で生きていくことは、なかなか難しい。 人間が社会的な生物である以上、顔色をうかがったり、関心の目に晒されることは避けられない。好むと好まざるに関わらず、人となりの比較や品定めには、それなりの「需要」がある。 比較と競争があってこそ、新しいアイディアや価値観を生み出すことができる、と言われる。だとしても、絶え間なく注がれる好奇の視線と向き合い、承認欲求に心を振り回されて、果たして人間は幸福や満足に近づけるのだろうか。 目を転じれば、ワインほど比

          挑戦の意味

          映画やドキュメンタリーの「挑戦」は、結果が半ば約束されている。しかし、現実は厳しい。ただ、あるワインを飲んでいるうちに、「その挑戦に向けた準備を整える」ことに価値があると思うようになった。 EnfieldはFaillaやLittoraiで経験を積んだJohn Lockwood氏のプラベート・ブランドだ。Tempranillo、Syrah、Chardonnay、Grenache、Chenin blancといった品種を手掛けており、エレガントでバランスの取れたワインを穏当な価格

          気骨と気質

          Napaは世界で最も成功したワイン産地の一つだろう。Opus Oneの成功以来、Sonomaの半分の広さしかない土地の中に、一本数百ドルものワインを生産する大小様々なワイナリーがひしめき合うように立地している。かつては評論家にすり寄ったワインを作ると批判されたこともあったが、近年は様々な評価誌が幅広いワインに高得点をつけている。 Napaはオープンマインドで先進的な産地でもある。国内外の資本、多様な人材、新しい品種や技術を受け入れる懐の広さを持ち、栽培や醸造だけでなく経営面

          「すれ違い」という縁

          今年は映画が豊作の年だったが、見た中では「Past Lives」が印象に残っている。 「子供の時に想っていた相手と、偶然、大人になって再会したら・・・」というあらすじの本作では、想い合っているのに生きる道が分かれていく二人の揺れる感情が上手く描かれていた。結局、互いが「ねじれの位置」に立っていたことで、二人の歩みが重なったように見えただけという結末も、リアルで共感できた。 名作映画ほどドラマがある訳ではないが、以前、ある生産者のワインとのすれ違いを経験したことがある。

          「旬」の生産者

          つくづく、ワインが買いにくい時代になったと思う。 止まらない円安や有名生産者のワイン価格の上昇も勿論だが、自分に必要なワインを吟味することが、年々、難しくなってきているように思う。 フランスやイタリアのような伝統産地では、ワインの「格付け」がそれなりに決着しており、自分の好みに合うか、価格に対して適正な味なのか、吟味するための材料が豊富にある。 こうした産地のワインで事足りる時代であれば、小売店や専門家の適切なアドバイスに基づいて必要なワインを選ぶことは難しくなかっただ

          ジンファンデルという盲点

          ジンファンデルはワインの世界で最も見落とされている品種の一つだと思う。 イタリアのプリミティーヴォと同一品種であることが分かった後でも、様々な評論誌で高得点を取るワインが出てきても、人気は今ひとつで、注目される機会に乏しい品種だ。 その理由は、恐らく以下の二点にある。 第一に、消費者や専門家の間でジンファンデルの格付けが低いこと。欧州の有名産地のワインに慣れた人々は、例えば、フランスで多く栽培されているブドウ品種を通じて、新興産地の価値を判断しようとする「きらい」がある

          「正しい」ワイン

          また猛烈な夏の暑さがやってくるこの時期は、白ワインが飲みたくなる。とはいえ、それで素直にシャルドネを開けてしまうようなら、セラーにワインを溜め込んだりはしない。 この日は誘惑に負けてピノ・ノワールを開けることにした。 SandlerはEd Kurtzman氏のプライベート・ブランド。同氏はカリフォルニア・ワイン好きの間ではちょっとした有名生産者で、ピノ・ノワールの作り手として一世を風靡した。 赤スグリ、ブラックチェリー、カシス、オリーブ、甘草、レザー、ダークチョコレート