カリフォルニアワインでまったり

カリフォルニア・ワインについて語る人。 WSET Level3, Capstone …

カリフォルニアワインでまったり

カリフォルニア・ワインについて語る人。 WSET Level3, Capstone California Level 1

マガジン

記事一覧

きっかけのワイン

「きっとまだ見ぬ驚きのあるワインがあるんじゃないか。」 関心が高まってくると、そんなワインを自分の手で見つけ出したいという欲が出てくる。しかし、案外、偶然に頼る…

ABC?

知識欲や好奇心を満足させることはワインの大きな楽しみに違いないが、何も考えずに飲んで楽しめることも大事なことだと思う。 アルコール飲料の中でも、ワインほど品種や…

ふさわしい機会

身の丈に合った生活には、素直に憧れてしまう。 日々の家事や生活、寝食や運動に、もう少し気を遣えたら良いのにと思うが、現実には時間に追われる内におざなりになってし…

幸運

先入観を変えるほどのワインに出会うことは、稀で幸運なことだ。 2000年代の中頃、「カリフォルニアでまともなピノ・ノワールなど、作れる訳がない。」という論調が、国内…

過剰

最近、円安で価格が高騰しているとはいえ、レストランやショップがこだわりのワインを揃えることは珍しくない時代になった。店としては、自身が表現したいことを体現できる…

時の人

「舞台に立つ役者は、観客に鍛えられる」 役者の成長には観客が欠かせないという意味だが、聴衆が見識に欠けていれば相応の役者しか生まれないとも取れる言葉だ。 今、Na…

生産者と評論家

新しい生産者の情報を探すときには、専門家のレビューが掲載されている専門誌は役に立つ。ここのところ、Antonio Galloni氏が創設したVinousを購読してるが、同誌には様々…

暮らしとテロワール

カリフォルニアに行くと、過ごしやすい気候と青い空のおかげか、開放的で前向きな気分になるのは筆者だけではないだろう。現地の人達も、どこか楽観的な性格の人が多いよう…

先駆者

音楽や芸術の分野で、強い衝撃が多くのフォロワーを生む現象は珍しくない。しかし、先駆者が革新を続ける限り、後進がオリジナルを超えることは容易ではない。 Sine Qua N…

人気と実力

どこの社会やコミュニティにも人気者というのはあるものだが、きちんとして実力のある人は、意外と目立たず静かに佇んでいるものだ。 先日、いわゆるカリフォルニア・ワイ…

愛嬌

愛嬌のある人にはつい親しみを感じてしまうものだが、そんな人柄がワインに出ることもある。 カリフォルニアにおけるローヌ品種の草分けと言えば、Alban vineyardsを興し…

矜持

「不可能だと言われれば、それを可能にしてしまう。それがアメリカの矜持だ。」 という台詞を、「沈黙の艦隊(かわぐちかいじ作)」で読んだ記憶がある。本作は手に汗握る…

カリフォルニアのヴァン・ナチュール

ヴァン・ナチュールの流行が、一層、熱を帯びてきている。 若年層のアルコール離れや人口減少による需要減が話題になる中、今年、東京で開催されたRAW Wine Tokyo 2024は…

歩幅

分かってはいても、自分の歩幅で生きていくことは、なかなか難しい。 人間が社会的な生物である以上、顔色をうかがったり、関心の目に晒されることは避けられない。好むと…

挑戦の意味

映画やドキュメンタリーの「挑戦」は、結果が半ば約束されている。しかし、現実は厳しい。ただ、あるワインを飲んでいるうちに、「その挑戦に向けた準備を整える」ことに価…

気骨と気質

Napaは世界で最も成功したワイン産地の一つだろう。Opus Oneの成功以来、Sonomaの半分の広さしかない土地の中に、一本数百ドルものワインを生産する大小様々なワイナリーが…

きっかけのワイン

「きっとまだ見ぬ驚きのあるワインがあるんじゃないか。」 関心が高まってくると、そんなワインを自分の手で見つけ出したいという欲が出てくる。しかし、案外、偶然に頼る他は、そういうワインに出くわすことは難しいのかもしれない。 筆者がカリフォルニア・ワインに興味を持って調べ始めた頃は、白ワインと言えばシャルドネかソーヴィニヨン・ブラン、赤ワインならカベルネ・ソーヴィニヨンかジンファンデル、稀にピノ・ノワールというくらいで、選択肢は多くなかった。 そのせいか、しばしば代わり映えの

ABC?

知識欲や好奇心を満足させることはワインの大きな楽しみに違いないが、何も考えずに飲んで楽しめることも大事なことだと思う。 アルコール飲料の中でも、ワインほど品種や産地、醸造法が多様なものは少ないだろう。品種や産地、生産者、ビンテージや醸造法に至るまで、「こだわる」ポイントが多い分、自分が好きなワインを探す楽しみがある。 しかし、選択肢が豊富であるということは、なかなか自分の好みのワインに出会うことができない可能性も孕んでいる。情報収集し、予測を立て、選び抜いたワインが、思っ

ふさわしい機会

身の丈に合った生活には、素直に憧れてしまう。 日々の家事や生活、寝食や運動に、もう少し気を遣えたら良いのにと思うが、現実には時間に追われる内におざなりになってしまう。働くこと、生活すること、小さな楽しみを見つけて生きていくことを両立することは、分かってはいてもなかなか難しい。 最近は、都会の生活に限界を感じて、農家になって田舎暮らしをする人もいるそうだ。実際は都会での生活よりもかえって忙しいと思うが、自分たちの歩幅を大事にするような、地に足が着いた生活のイメージが魅力的に

幸運

先入観を変えるほどのワインに出会うことは、稀で幸運なことだ。 2000年代の中頃、「カリフォルニアでまともなピノ・ノワールなど、作れる訳がない。」という論調が、国内外で広く信じられており、カリフォルニア・ワインの愛好家の中でも懐疑的な意見は少なくなかった。Kistlerなどは良い意味で例外だったが、「カリピノ」に対するイメージを転換するほどではなかった。 当時、筆者はカリフォルニア・ワインに傾倒し始めた頃で、ピノ・ノワールにさほど大きな関心は無かったが、「そうまで言われな

過剰

最近、円安で価格が高騰しているとはいえ、レストランやショップがこだわりのワインを揃えることは珍しくない時代になった。店としては、自身が表現したいことを体現できるワインを探すことが求められている時代とも言える。ヴァン・ナチュール・ブームの後は、北海道を始めとする国産ワインが人気のようだ。 他方、カリフォルニア・ワインの人気はそれほど高まっていない。どうやら、エレガントな味わいのイメージが持てないこと、高価格帯は伝統産地の高級品と大して変わらない価格であることが、敬遠される理由

時の人

「舞台に立つ役者は、観客に鍛えられる」 役者の成長には観客が欠かせないという意味だが、聴衆が見識に欠けていれば相応の役者しか生まれないとも取れる言葉だ。 今、Napaの生産者達には厳しい視線が注がれている。世界的な高級ワインの価格高騰の中にあって、同地域は特に値上げが激しい産地の一つであり、高価格帯のワインが売れなくなっているという。 消費者も鵜の目鷹の目で価値のあるワインを探している。Napaに代えがたい魅力があることは分かるが、高級ワインが争って高騰する様子を見て、

生産者と評論家

新しい生産者の情報を探すときには、専門家のレビューが掲載されている専門誌は役に立つ。ここのところ、Antonio Galloni氏が創設したVinousを購読してるが、同誌には様々なレビュアーがいて、世界各地のワイン産地に関する記事を公開している。 購読期間が長くなってくると、好きなレビュアーが分かってくる。中でも、Josh Raynolds氏はお気に入りだった。同氏のレビューは、簡潔だが必要なポイントが抑えて書かれており、点数の相場はやや厳し目だが、スタイルの違いに関わら

暮らしとテロワール

カリフォルニアに行くと、過ごしやすい気候と青い空のおかげか、開放的で前向きな気分になるのは筆者だけではないだろう。現地の人達も、どこか楽観的な性格の人が多いように思う。カリフォルニア・ワインが親しみやすく享楽的なのは、こうした気候や人々のパーソナリティと無縁ではないと思う。 ただ、近年は、サンノゼの住宅価格の高騰やサンフランシスコの空洞化といったニュースも聞かれるようになり、カリフォルニアでの暮らしもかつてほど魅力的でなくなってきているようだ。 ワイン産地についても、開発

先駆者

音楽や芸術の分野で、強い衝撃が多くのフォロワーを生む現象は珍しくない。しかし、先駆者が革新を続ける限り、後進がオリジナルを超えることは容易ではない。 Sine Qua Nonというワインがある。カリフォルニア・ワイン好きの間で長く崇められてきた銘柄だ。漫画「神の雫」で使徒の一つに選ばれ、随分と話題になったこともある。今でも好事家達の憧れのワインと言って良い。 創設者であるManfred Klankl氏は、元々、ワイン業界の異邦人だが、趣味が高じて作ったワインがロバート・パ

人気と実力

どこの社会やコミュニティにも人気者というのはあるものだが、きちんとして実力のある人は、意外と目立たず静かに佇んでいるものだ。 先日、いわゆるカリフォルニア・ワイン好きが集うイベントに参加する機会があった。珍しい趣向で、各々がワインを一本持ち寄ることが参加条件となっていた。腕によりをかけて選んだワインを携えた参加者が集まり、ワインの話にも大いに花が咲いたので、会としては成功だったと思う。 多くの参加者がWSETやワインエキスパートといった資格を有していることもあってか、豪華

愛嬌

愛嬌のある人にはつい親しみを感じてしまうものだが、そんな人柄がワインに出ることもある。 カリフォルニアにおけるローヌ品種の草分けと言えば、Alban vineyardsを興したJohn Alban氏をおいて他にはない。同氏は、20代の誕生日にコンドリューの「安ワイン」と出会ったことで、後にローヌに渡ってワインを学び、カリフォルニアでローヌ品種の可能性を探求するパイオニアにまでなった。 生産者としても、Alban vineyardsはカリフォルニアの中で名実共に屈指のローヌ

矜持

「不可能だと言われれば、それを可能にしてしまう。それがアメリカの矜持だ。」 という台詞を、「沈黙の艦隊(かわぐちかいじ作)」で読んだ記憶がある。本作は手に汗握る展開が見ものだが、登場人物の口から出てくる印象的な言葉も魅力だ。ちなみに、実写ドラマもなかなかの完成度なので、気になる方にはお勧めしたい。 ところで、カリフォルニアでは、長らく以下のニ領域ついては優れたワインを作ることは不可能だと言われてきた(あるいは、今もそう言われている)。 それは、ピノ・ノワールとスパークリ

カリフォルニアのヴァン・ナチュール

ヴァン・ナチュールの流行が、一層、熱を帯びてきている。 若年層のアルコール離れや人口減少による需要減が話題になる中、今年、東京で開催されたRAW Wine Tokyo 2024は、想像を超えて盛況だったようだ。 ヴァン・ナチュールという言葉が想起する、伝統産地の格付けや品種の制約に囚われず、できるだけ介入を減らして個性やパーソナリティが感じられるワインを作り、持続可能な方法で消費者と生産者が手を取り合ってワインのある生活を育んでいくというイメージが、循環型社会に関心のある

歩幅

分かってはいても、自分の歩幅で生きていくことは、なかなか難しい。 人間が社会的な生物である以上、顔色をうかがったり、関心の目に晒されることは避けられない。好むと好まざるに関わらず、人となりの比較や品定めには、それなりの「需要」がある。 比較と競争があってこそ、新しいアイディアや価値観を生み出すことができる、と言われる。だとしても、絶え間なく注がれる好奇の視線と向き合い、承認欲求に心を振り回されて、果たして人間は幸福や満足に近づけるのだろうか。 目を転じれば、ワインほど比

挑戦の意味

映画やドキュメンタリーの「挑戦」は、結果が半ば約束されている。しかし、現実は厳しい。ただ、あるワインを飲んでいるうちに、「その挑戦に向けた準備を整える」ことに価値があると思うようになった。 EnfieldはFaillaやLittoraiで経験を積んだJohn Lockwood氏のプラベート・ブランドだ。Tempranillo、Syrah、Chardonnay、Grenache、Chenin blancといった品種を手掛けており、エレガントでバランスの取れたワインを穏当な価格

気骨と気質

Napaは世界で最も成功したワイン産地の一つだろう。Opus Oneの成功以来、Sonomaの半分の広さしかない土地の中に、一本数百ドルものワインを生産する大小様々なワイナリーがひしめき合うように立地している。かつては評論家にすり寄ったワインを作ると批判されたこともあったが、近年は様々な評価誌が幅広いワインに高得点をつけている。 Napaはオープンマインドで先進的な産地でもある。国内外の資本、多様な人材、新しい品種や技術を受け入れる懐の広さを持ち、栽培や醸造だけでなく経営面