「むかし試した古典技法の話」Vol.4-ドライコロジオンの作り方2- by K
こんにちは。カロワークスのKです。
関東はやっと梅雨明けとなりました。長々と雨が振り続けていた印象があるので、晴れた空が尚更うれしいですね。
意気揚々と外に出て行ける状況ではないことが大変もどかしいのですが、対策を取りながら少しでも夏を満喫したいと思うばかりです。
さて、ドライコロジオンについて連載をしている当記事ですが今回もお話をさせて頂きます。
引き続き専門的な記事となりますが、ご興味のある方は是非よろしくおねがいいたします。
前回はドライコロジオンの製作方法の種類や、プレートに使用する支持体のお話をしました。
ガラスを支持体とすればネガとして使用することができますが、「アンブロタイプ」として見せようとすると画像濃度やガラスの厚みの問題でうまく見せることができない、と解説しました。
こちらの画像が、ガラス板を用いて製作したドライコロジオンプレートをアンブロタイプとして見せたものになります。
光源が若干黄がかっていますが、タンニンの茶色い色素が表出し、ガラスと黒色部分の空間(ガラスの厚み)があることで見えづらくなっていることが確認できます。
そしてこちらが、黒塗りのアルミ板を用いてドライコロジオンプレートを制作したものとなります。
かなり視認性が上がっていることがわかります。
ネガとして用いる制作の方向性ではなかったこと、元よりアンブロタイプとして見せることを目指していたため、比較実験の上アルミプレートを用いることにしました。
アルミプレートを用いる場合には必要ありませんが、実験としてはガラスでの制作も平行して行なっていたため「ガラスの研磨」についても記載させて頂きます。
コロジオン法の実験が行われていた19世紀当時、ヨーロッパではガラス工業の近代化も急速に進んでいました。とはいえ現代のそれに比べるまでもなく、表面の平滑さや透明度には難がありました。
それゆえ当時の文献にはとにかくガラスをしっかり磨くことが第一と記されています。ガラスを磨くことを怠れば、良い結果が得られることはありません。コロジオンとガラスが密着していなければ、剥がれの原因になるのです。
“初期の方法ではコロジオンに皺が寄るか、完全にプレートから流れ落ちてしまい、うまく乗らない。コロジオンをうまく乗せるために、ガラスに準備する方法が2つある。
1つ目はプレートの端を滑らかにする。最初にプレートをゼラチン溶液で覆わない場合、プレートを平坦な面に置き、テーブルの角のようにいずれかの縁に沿って定規を据え、縁との間を8分の1インチ残して、歯医者で使われているようなエメリー研磨材や、コランダム砥石でこの部分を細く帯状に研磨する。すると、プレートとコロジオンは強く付着し離れない。”
“プレートをよく洗浄し、綺麗にする必要がある。これによってトラブルを起こすリスクを取り除き作業ができるようになる。”
当時は上記のようにエメリー研磨剤やトリポリ石を用いて研磨する実験記録が多く残されていますが、私が行なった実験では炭酸カルシウムをアルコールで溶いた液を研磨剤としました。
特にコロジオンはガラスの縁から剥がれやすいため、角は入念に磨きます。まず細かいヤスリで数回削り、滑らかにしておきます。
ガラスを台に固定し、研磨剤を適量流します。柔らかい布で伸ばしながら、円を描くように全体的に磨くとよいでしょう。
加湿器等の蒸気を当てると磨きムラが発見できるため、時折確認しながら磨くことをおすすめします。
この磨きを怠ると画像の出方にも影響があるため、のちの苦労を軽くする意味でもとにかく丁寧に繰り返し磨き、研磨後は別の布でよく拭き取り、拭き残しやムラがないことを確かめて立てかけ保管します。
水で洗うことができないので、この最後の拭き取りもしっかり行います。
この後はアルミプレートもガラス板も「下引き」という行程に入ります。
次回の記事にて引き続き解説させて頂きます。
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さて、前回記事でも解説しましたが、硝酸銀を一度洗い流してからタンニン液でコーティングする手法を採用しているので、タンニンプロセスは感度が著しく低くなっています。
毎回同じ結果にはならないので平均ですが、大体私が製作したドライコロジオンプレートは、晴天屋外・絞りF8程度で通常撮影するのに10-15分程度かかりました。
通常低感度はデメリットと捉えられがちですが、私にとっては寧ろ好都合でした。
前述の比較画像に戻りますが、画面上部に線のようなものが写っているのが確認できると思います。これは太陽光の軌跡です。ここまで線が伸びているので、4-6時間の長時間露光をしたことが見て取れますね。
自分で作ったドライコロジオンプレートで、太陽光の軌跡を長い時間はっきりと撮影することができた時、私は大変感動しました。こんなに綺麗に写るとは思っていなかったのです。
「古典技法を用いて"時間"を表現したい」と考えていた私にとってこの上ない結果でした。また、コロジオンを用いた技法で長時間露光はドライタイプでないと不可能です。
然して私が表現したい画と、私が様々な要因を鑑みて選んだ手法が偶然合致したのです。
当初はウェットコロジオンに替わる技法としてドライコロジオンを模索し選んでいましたが、ドライコロジオンでないと出来ない表現があり、選ぶべくして選んだのだと思わざるを得ません。
自分が選んだのか、選ばれたのか…そういう経験は往々にしてあると思っていますが、なんとも面白い経験で運命的だったな、と思ってやみません。。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
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