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【写真について知っているいくつかのこと Vol.8】カメラの仕組み ~ミラーレス一眼カメラ~ by KISHI Takeshi

カロワークスのKISHI Takeshiです。写真やカメラに関わる技術や歴史、写真業界の最近の出来事や思い出話などを月イチで綴るシリーズの第8回です。

今回は「ミラーレス一眼カメラ」についての話題です。

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つい先日、株式会社ニコンはカメラ事業の急激な業績悪化を背景に、海外の従業員2000人強の人員削減を発表しました。また、カメラ本体の製造もすべて海外に移管し、販社の統合などをすすめて大幅なコスト削減を目指すようです。


今年6月には、カメラメーカーのオリンパスもカメラ事業売却を発表しており、カメラ業界は相変わらずの厳しい状況が続いています。

カメラやフィルム、印画紙など写真に関わる機材や材料は工業製品なので、メーカーの経営状態によって、自分の仕事や表現のために愛用していた製品が廃盤になる…ということは宿命なのですが、コロナ禍の現在、そのリスクがさらに高まっており、ユーザーとしては不安を覚えてしまいますね…。


さて、そのような中でもメーカー各社が最も注力している製品が「ミラーレス一眼カメラ」と言えるでしょう。

まずはその特徴を見ていきましょう。

・ミラーや光学式ファインダーが不要で機構の簡略化・小型軽量化が可能
・ディスプレイやEVF(電子式ビューファインダー)を用いて像を確認
・フランジバックを短くできレンズ設計の自由度が高い
・画像認識やカメラ設定を反映したリアルタイムプレビューなどの機能
・センサの駆動やディスプレイの表示などでバッテリーの消費が大きい
・表示のタイムラグなどディスプレイに関しての課題が多い

前回・前々回と取り上げた「一眼レフカメラ」と比較して、構造上の最大の違いはレンズから入射した光を反射するミラー(レフ)を廃している点です。カメラの分類としては以下のようになるでしょうか。

《画像の記録方式》
・デジタル
《外観のサイズ》
・小型
《画面サイズ》
・35mmフルサイズ/APS-C/フォーサーズ/中型 ほか
《本体・レンズの機構》
・レンズ交換型
《ファインダーの機構》
・ディスプレイおよびEVF

もともと本体にミラーを持たないデジタルカメラには、小型の「コンパクトカメラ」がありましたが、それらの多くはレンズ固定式であるのに対して、ミラーレスカメラはレンズ交換式で、カメラ初心者からハイアマチュアまで様々なニーズに応えるシステムと言えるでしょう。

このミラーレス一眼、2008年にパナソニックとオリンパスが策定した「マイクロフォーサーズシステム」の規格を実現するカメラとして登場しました。
しかし、この名称にはメーカーや団体によって違いがあり「マイクロ一眼」「デジタル一眼」のように“レフ”という単語を外したものや「レンズ交換式アドバンストカメラ」(長い…)なんてものまであり、メーカーごとの販売戦略や、既存のカメラシステムとの差別化のための苦心が伺えますね。

カメラの製造や販売の統計を発表しているCIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)も統計の区分として「ノンレフレックス」という呼称を用いていましたが、2019年以降は「ミラーレス」に変更されており、現在は一般的にも「ミラーレス」ないし「ミラーレス一眼」という言葉が広く普及しているように思います。


つづいてミラーレス一眼の図解と機能を見てみましょう。

ミラーレス

【レンズ】
本体内部にミラーが無いので、フランジバック(レンズマウントから焦点面までの距離)が短くでき、とくに焦点距離の短い広角レンズなどは設計上の自由度が大幅に向上しました。

各社で新たなレンズマウントが採用されましたが、同じメーカーであっても過去のレンズをそのまま使用できないという問題があり、マウント変換アダプタがメーカー純正品やサードパーティ製で販売されています。

【ディスプレイ】
一眼レフカメラや他のカメラシステムでは、ファインダーで視認できる範囲と実際に撮影できる範囲の違い(視野率)やパララックス(視差)の性能が重要となりますが、ミラーレスでは原理的にファインダーと撮影する画面が同一なのでこれらの問題が発生しません。

また、センサからの信号に処理を施してディスプレイに表示するため、レンズの収差補正やホワイトバランス設定、フィルタ効果などを撮影時にリアルタイムでプレビューしながら撮影することが出来ます。

一方で、表示に若干のタイムラグが生じたり、画像を読み出し中にプレビューがブラックアウトしてしまう、晴天の屋外など周囲が明るい場所では表示が見にくいなどの問題があります。今後は、有機ELなどディスプレイ材料の向上や信号処理の高速化によって、これらの改善が進むのではないでしょうか。


【EVF(電子式ビューファインダー)】
上記のディスプレイも広義では「EVF」といえるかも知れませんが、狭義のEVFとして小型のディスプレイを接眼窓ごしに視認するタイプのファインダーがあります。周囲の明るさの影響をうけにくく、一眼レフ以上にファインダー内に様々な情報を表示できるなどのメリットがあるのですが、光学式のファインダーに比べると解像度が低いという弱点もあります。

このEVFは取り外し可能な機構になっていることも多いのですが、個人的には、ファインダーを覗き込んだまま撮影できると、両手+接眼部の3方向でカメラをホールディングでき撮影時にブレが発生しにくく安心…というメリットもあり、手持ち撮影では積極的に活用したいところです。


【イメージセンサ】
ミラーレスカメラではセンサを常に動作させており、画像信号をもとに顔認識や被写体追尾などの画像認識技術を活用し、オートフォーカスやプレビュー表示と連携して様々な機能を実現しています。(センサの画素の情報から高精度なフォーカシングを行う「像面位相差方式AF」も多くのミラーレスカメラで採用されています)

また、本体のミラー動作が無いため、撮影時にセンサの電子シャッターを使用すれば機械的な動作の無い無音撮影も可能という利点もあります。

ただし、センサやディスプレイ、EVFなど電子部品をフルに稼働させるためバッテリーの消費が早い傾向にあり、長時間にわたる撮影などではネックとなります。こちらも消費電力の低減やバッテリーの性能向上に期待したいところですね。


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と書いてきましたが、実は私は、まだ私物でのミラーレスを所持しておらず、この数か月、猛烈に迷っております…。

今から新しくカメラを買いたい!という方には、今後もさまざまな技術的アップデートが期待されるミラーレスカメラシステムをお勧めするところなのですが、一眼レフカメラで、ある程度のシステムを所有している場合には、現在のミラーレスの利点と弱点、自身の撮影のスタイル、システム入れ替えに伴うコストなどを天秤にかけると悩みます…。

ちなみに、弊社の業務では富士フイルムのミラーレス中型カメラ「GFX100」を使用することがあるのですが、一眼レフ型の中型カメラよりも、圧倒的に小型軽量でミラーレスの恩恵を感じられますね…。

ぜひ、この記事を御覧になっている方の中で、ミラーレス推しの方がいらしたら、ぜひおすすめの機種を教えて頂きたいです…!

それではまた次回、12月・師走にお会いしましょう!

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