見出し画像

6/20 日本代表 vs ペルー代表 試合感想メモ

試合を通しての感想

試合結果は4-1で日本代表の勝利。90分の大半の時間を日本が支配しての完勝とも言える試合だった。
ボール保持の状態でも、非保持の状態でも全ての局面において「個」の力で相手を上回り、質の高い攻撃で4得点を奪い切った。
以前の日本代表のサッカーよりも攻撃にかける人数を増やし、相手ボールになった瞬間から素早くプレスをかけ、高い位置でボールを取り切るという意識が徹底されていた。それを可能にしていたのはCB2人の守備の安定性とビルドアップの安定性があってこそだと思う。
日本代表の選手のクオリティが非常に高くなったことは紛れもない事実であるが、ペルーの攻守のクオリティが高かったとは言えない。「個人能力の差」で相手を上回ったことによる勝利は嬉しいことではある反面、個人能力で上回れない相手には勝つことが難しいということでもあると思う。

個人能力の差を埋める、さらに上回るためには、やはり戦術が必要だと思う。ペルー戦で「戦術」の観点から見ると、一定収穫はあったと思う。が、エルサルバドル戦と大きく異なった戦い方をしていた。ペルー戦では今までの日本代表のような個人の能力に依存した戦い方に戻ってしまったのでは、とも見れた。(出場選手によって複数の戦い方のオプションを持つためのトレーニングだったと思いたい、、)

個人的なMOMは谷口選手。板倉選手もだが、CBからのパスのスピード、タイミングが非常に上手い。今まではバックラインのパス回しがゆったりとしていて、隣の選手へのパスが多いため、相手を動かすことができていなかった。谷口のスピーディーな動かし、間が空いた際の効果的な縦パスによってビルドアップを行っていた。さらにビルドアップで運ぶプレーも多く見られた。こうしたプレーによってペルー側は左右に揺さぶられ、また、制限をかけづらいまま守備を強いられていたのではないか。
もちろん空中戦の強さとカバーリングといった守備の安定感もあり、攻守において軸となっていた。

CBの安定性とSBのポジショニング

上述の通り、この試合のCBは攻守ともに安定感があった。
ペルーのカウンターで、危ない状況を作られた
シーンもあったが、日本が攻撃に人数をかけていたことを考えれば、そのようなシーンが出てくるのは致し方ないと見れる。というよりも、そのようなシーンが出てくるのを承知の上で攻撃的に戦っていたのだと思う。
相手14番のオフザボールの動きの対応は難しいものであったが、決定機までは(もしくは失点)行かせない辺り、2人の対人能力、カバーリング能力の高さを以て上手く対応ができていた。

攻撃の場面では、「運ぶこと」「縦パスを入れること」が効果的に行われていた。CBはボールを持った際にフリーであることが多いため、自ら運ぶことで相手をある程度寄せてフリーな選手やスペースを作ると攻撃がしやすくなる。またSBへのパスコースが基本的に空いているが、ゴールに近いインサイドハーフやFW、ウイングへの縦パスが供給できると、一気に相手FWラインや中盤のラインを越すことができる。(後ろ向きで守備をする人数が増える)
このようなプレーが何度も見られた。
これを可能にしていたのは、素早いパス回しだと思った。ボランチを経由しながら、逆サイドまで素早くボールを回すことで、相手の守備の穴やフリーなスペースを生みやすくすることができていた。

SBに関しては基本的には、定位置が多かったように思える。エルサルバドル戦ではやや内側に位置して、インサイドハーフとサイドハーフと正三角形を作るような位置だったが、押し込んだ状態以外ではあまり見られなかった。(伊藤選手の先制点は押し込んだ状態で、絞った位置にポジショニングしていた)
個人的な感想としては、もう少し内に入ったほうが良かったのではないかと感じた。というのも、この試合では三笘選手と伊東選手のサイド突破をチームの武器として使おうとしていたのではないか、と思われる。一般的にもSBからサイドハーフへのパスが多いが、縦関係であればあるほど相手は守備しやすいのではないかと思う。SBの正面に立てば、SBのドリブルもサイドハーフへのパスコースも消せてしまうためである。さらに角度のついた所からよりも真後ろから来たパスの方が受け手となるサイドハーフはボールをもらいにくいし、前も向きにくいのではないかと思う。

また、この試合では前半(10分ごろ)に菅原選手が、後半に伊藤選手が「偽SB」を一度だけ行ったことを確認した。いずれのシーンも、CBがボールを持っていて、相手が遠藤選手にマークをつきに行き、アンカーへのパスが出しにくい状況だった。(相手が4-4-2の中盤ダイヤモンド型になって奪いに来ていた)この状況でSBがボランチの位置に入り、ダブルボランチ化した。偽SBにはペルーのマークがつかず、ボールをもらい展開をした。この場面では、ペルーの中盤のアンカーは日本代表のインサイドハーフのマークで取りに来れず、ペルーのサイドハーフは背後の動きで認識できなかったorサイドハーフのパスコースを切るために動けなかった。いずれにしても、相手の動きに対して効果的に配置がとれた非常に戦術的なシーンであった。

ペルーのシステム変更に対して

この試合のペルーは4-2-3-1だったが、攻守においてさまざまな形で戦ってきた。
まず攻撃に関して、前半は左SBが大きく前に出る形となり、後ろは3枚(かなり広く距離を取っていた)でアンカーに1枚、右サイドハーフと左SBが大きく張り出し、真ん中と前線に合わせて4枚が流動的に動くという形だった。キーマンは左サイドハーフの10番の選手で、左SBの押し上げにより、中央寄りで常にファジーな位置でボールを受けた。マークがしにくく、足元があるため、ボールを持った時に守備が寄せると、空いたスペースを上手く使って攻撃を組み立てていた。この10番が交代してからは、4-4-2もしくは4-2-3-1の陣形のまま攻撃が行われていた。
守備に関しては4-4-2でセットしていた。ただ、寄せがかなり甘く、FWとMFとDFの3ラインが連動せず、ライン間の距離もコンパクトではなかった。4-4-2守備に対して、日本は4-1-4-1でビルドアップしていたため、当然のようにアンカーの遠藤選手がフリーとなり、ここを起点に攻撃を組み立てていった。それに対して、ペルーのダブルボランチの1人が前に出て遠藤選手のマークにつくようになったが、偽SBやインサイドハーフへのパスコースが空き、そのスペースをつくことで、難なく前進できていた。
また、押し込まれると5-4-1の形を取り、ブロックを固めて守り、奪ったら一気にカウンターを狙うことを徹底していた。ただ個人能力差によって、サイドで人数をかけすぎたり、日本の素早いパスでのサイド展開に対してスペースを与えてしまうことが多く、侵入回数も多かった。実際に日本の伊東選手の先制点は、右サイドでのボール保持に対して、ペルーの選手(5-4-1の4のサイドとボランチ)がより過ぎてしまい、その皺寄せで5-4-1の4の右サイドハーフの選手が中央まで寄ってしまっていた。この選手が本来いるべきスペースにいた伊東選手はフリーでボールを受け、余裕を持ってシュートを打つことができた。
試合全体を通して、ペルーの守備の弱さを感じたが、それでもそれに対してスペースを生み出し(見つけ)、効果的にそのスペースを使いながらゴールに向かうことができた日本の上手さ、鋭さが見れた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?