私の嫌いな場所であなたと出会いましたね

ペットショプの生体売り場ってなるべく視界に入れたくないんです。
だからいつも近づかないようにしていました。
なのにその日は何故か、エサを買うついでにカートをしながら生体売り場を眺めながら通路を歩いていました。
犬、猫、空のショーケース・・・。

何を感じるでも思うでもなくのんびり歩き、空のショーケースの目の前に来た瞬間、裏側からスタッフがヒョイと猫をケースに戻しました。

その猫を見た瞬間に(あ、うちの子だ)と思いました。

柄も性別も値段も何もかも見ずにただそう思いました。
そのままスタッフを呼び「この子ほしいんですが」と声をかけます。
飼育説明書面契約のために別室へ移動。
ちなみにこの段階で、ケースに入れられたその猫の姿すらろくに見ていません。
本当に(うちの子。連れて帰る)それだけで高額な売買契約に移っていたのです。

生後8ヶ月であること。
マンチカンという血統書付き猫であること。
メスであること。
全て、契約時のスタッフからの説明で認識しました。
そして金額も。
ちなみに財布の中に現金はたいして入っていません。エサを買うためだけに行ったわけですから。

どこまで話が進んでも私の意思は変わりませんでした。
しかし、現実的な問題を無視できません。
お金です。
まぁクレジットカードがあるからと考えていたわけですが、14万円の買い物をするには限度額を超えてしまっていました。

店側も売りたいからか店長の人柄か、コメリでコメリカードを利用しようとしていたのに使えない私のために色々と手を尽くしてくれました。
限度額増額の手続きには日数を要します。
結果、当日には無理ということでお騒がせするだけしてその日は泣く泣く帰宅することに。

いくらか払っておいて取り置きという手段もありましたが、そもそも現金を持っていないのですからそれも叶いません。
カード会社の手続きが終わるまで、その猫は早いもの勝ち勝負へと移行します。

来る日も来る日も、カード会社からの連絡を待ちました。
そうしてついに念願の限度額増額。
仕事上がりに制服のまま、混雑した道を車で1時間近く走らせて目的のお店へ向かう私。

ちなみに、新潟県に住んでいると通勤にしろなんにしろ用事があれば車で40〜50分走ることはなんとも思わなくなります。
人によるでしょうが、私はドライブがてらあえて近場ではなく離れた店舗に買い物に行くということを良くしていました。

今度は必ず決済ができることを確認した上での入店。
小走りでペットショップへ向かう私。
いました。うちの子はまだ狭いショーケースの中にいました。
前回のようにスタッフを即座に呼びつけて、同じように別室で契約手続きを始めます。

そうして、帰宅ラッシュ真っ只中の時間に私はその猫を家に連れて帰りました。

実は帰宅途中で動物病院に行ったのですが「早すぎw普通は一週間は家に慣らしてからw」と獣医にくさ生やされながらの診察を受けました。
いや、事前に電話連絡してますけど?おたくの看護師がOKしたからここに立ち寄ったんですけど??

思い出しイラしたこともありますが、お迎えした喜びでその時は平和に診察してもらいました。
あ、ちょっとまだイラッ(笑)

繊細で環境の変化に弱いからと言われ、野良猫とのふれあいが物心つく頃からあった私は驚きました。
え!そうなの!?
繊細な心への配慮が足りないのが私です。
下手に神経図太いと、こういう弊害が生じます。
正直すまんかった。

マンチカンはまだ日本では珍しかったらしく、可愛い〜目が大きい〜と、獣医もちょっと物珍しさに興奮気味。
8ヶ月なのに一度もワクチン接種をしていないことに、その店ありえないと憤ってましたが・・・
そういうのは私に関係ないのでさっさとしてくれ腹減ったが正直な感想です。

確かに、生体価格+店のオプションで売上アップ+血統証明書料金+接種したワクチン代を支払うのがスタンダードなんだけれど。
ペットショップで説明の終わりに「検査も注射もしてないけれどこの子が元気で健康体なのは私が保証します」と、対応してくれた平スタッフの言葉には笑いそうになるのを我慢しました。

あのね、契約というものは、売買での保証というものは、書面なの。専門家の証明書なの。
書面という形に残るもので証明されてこその保証なの。

が、まぁ、病気だろうと疾患があろうとうちの子に変わりはない。知ったことではないので流しました。


自宅に連れて帰り、用意していたケージに。
1匹目の「るる」は人懐こく初日から緊張もなく過ごしていたので楽観視していたのが正直なところです。
ところが2匹目の猫は、まー懐かない(笑)

警戒心が強く、大きな目の瞳孔を常にかっぴらいて、最初の数日はクレートから出てきてもくれませんでした。
もちろん、触らせるなんて論外。

こりゃしばらくケージからでないわ。
繊細なの納得。
さて名前はどうしようか?
1匹目は風邪薬にあやかって「るる」
となると・・・頭痛薬から「イブ」だな。
12月24日生まれだけれどイヴではなくイブだ。
謎の自己満で名前を決めて2頭飼い生活のスタートです。

正確に記録していたわけではないし何年も前なのでうろ覚えですが、1年位は懐いてくれませんでした。
場所になれ、るるに慣れ、飼い主は一番後回しです(笑)

気高き女王様なので仕方ないですね。
同じ部屋にいても警戒されなくなり、近づいても威嚇されなくなり。
のんびりと少しづつ距離感のお許しをもらいながら過ごしていました。

猫2匹、お外が大好き。
現代では批判されがちな行為のようですが、換算とした工場と野原を自由に闊歩するうちの猫たち。

はい。孕みました。

なんかこのところやたら甘えてくる・・・
友好的だ・・・

そんな日がやってきたのか。
にしても掌返し急では?
なんて思っていたのですが、孕んでました。

ローテーブルにおいておいたマグカップの牛乳を飲むべく、短い手足をテーブルにかけたイブを横からふと見た時に。
(おっとー???)
張ってましたねお腹。デブ猫とは違う、妊娠特有の腹の出方。

まじか。
こいつ、やってきたのか。
飼い主より進んでやがるぜ。
ていうか、素で避妊手術忘れていたわ。

そう。本気の本気で避妊手術を受けるのを忘れていたスカポンタンな飼い主に飼われた外を出歩くメス猫は無事に出来ちゃってました。

手足の短いマンチカン。
お腹が人間の視界に入ることはなく、本猫も人目で腹を見せて寝るなどせず、偶然の発見でした。

ここで私はまだ生まれてくるのは先だろうと思っていたのです。
妊娠した動物は警戒心バリバリのはずだと思っていたから。
こんなに甘えてくるようになった猫の出産はまだ先であろうと。

さて、出産後の環境づくりと貰い手を探さねばならんな。
妊娠を知った日、そんなことを思いながら床につくわたし。

翌朝6時頃。
枕元においた猫ベッドから、聞き覚えのある甲高い鳴き声ーーー
頭で理解するより先に飛び起き、箱タイプの猫ベッドを覗いていると

ミー!ミー!

う、うまれてるー!?
しかも、この至近距離で産んでるー!?
こちらのパニックは相当でした。

ものすごく甘えてきた翌朝に出産。
人目につくどころか、私の枕元での出産。

隠れて生むというこれまでの経験上の知識がぶっ壊された瞬間です。
子猫かわいーより、なんで??状態。
ベッド内は血まみれで、羊水?羊膜?を食べ終わったあとでした。ペロペロと落ち着いて子猫を舐めるイブ。

死産の子はいないかとか気にもなりましたが、とにかく母猫はストレスで子猫を食べるので刺激したくありません。
手を突っ込んでいじくり回すなど言語道断だと、少し動画に収めてからなるべく見ないようにして、とりあえず出勤。

早急に環境整備が要されます。
仕事?おまけです(笑)
脳内は何を用意してどう配置するか。しばらくは子猫も動けずなのでダンボールで囲う程度でいいだろうと判断して、ダンボールだったかを買って帰宅。

数日はベッド内に。
血まみれが気になるけれどしょうがない。

刺激したくないけど気になるのが人情。そーっとそーっと手を入れて子猫に触れる。
ふわぁぁぁぁ(*^^*)♥♥
イブは私の手をペロペロ舐めてきて、そんな行動にまたもやびっくり。
と、またもや予想外の出来事が。
早々にイブが子猫をベッドから出して引っ越しを始めたのです。早いー!!
いや、やはり血まみれベッドは嫌か?引っ越し先はキャットタワーの足元。
めっちゃ開放的。隅っこでもなんでも無い。

え、見られて嫌じゃないのイブ?
相変わらず甘えたになってるイブ。
このあたりで、イブは警戒心を持っていないことを理解。むしろ私が近づくと甘えた声で歓迎してくれました。まじか・・・。

一方るるは、((≡゚♀゚≡))???の毎日。
突然の子猫に威嚇はなく、不必要に関心も寄せず、離れたところから眺めるくらい。
そうね。やっとイブとの同居に慣れて挨拶交わす仲になったのに、出産されたんだもんね。

イブは小さいからと高をくくっていたけれどきっちり5匹の元気な子をご出産。
母子ともにお健やかであります。
職場の人の人脈を借りて引き取り手を探し出す飼い主。
こちらはマンチカン、無料であっさり候補が集まりました。手足の短いのは2匹でしたけども。

こちらの条件は丸3ヶ月経過してからの引き渡し。
120日。社会科を学ぶためにも、母猫と兄弟猫との120日は絶対条件でした。
ドラえもんの手足にしわができ、肉球の形になり、爪が生え、目が開き、日々成長していく子猫たち。

ひょうひょうと、こなれた感じで母をするイブ。

子猫がある気がしたらさぁ大変。
より頑丈な柵を必要とする時期がやってきました。
私が寝てる間に潰しちゃうのは絶対避ける事項で、ま、ホームセンターでパイプラックを買って作成。
一安心。

一安心からのイブの引っ越し。
トイレに移動したりしたことも。
猫は子猫を連れてよく引っ越しをします。
そのたびに必死に柵作りをする飼い主=私。
乳も終わるとさー大変。
人間が離乳食を準備する時。
しかし、私はドライフードをお湯でふやかした匂いが大の苦手。くさやのほうがマシなレベルで無理。

何度もホームセンターに足を運んでは箱買いしていく子猫用パウチのキャットフード×5匹分。
えーもー諭吉がどんどん戦場に散っていきました。
もちろん成長するに連れて食べる量は増えるので更に散っていく諭吉。

そしてトイレ。生真面目に7個用意して、横一列に並べて、端からうんちを取り。
ゴールに辿り着いてまたスタートにうんち。

かわいいよりノイローゼですね。

それをたった8畳一間の自室でやっていましたのでなおさらノイローゼ(笑)
3畳一間の小さな下宿で2人ぐらしより密度高めです。

写真たくさん取って、一緒に昼寝したり。
でもやっぱり思い返すと、可愛いより死なせないよう生かすように必死で、可愛がるとかそれどころじゃねーってなってました。

きゃーかわいー!!
それは心に余裕がある時の話です。

イブは出産前後で明らかに私に対する態度が変わりました。妊娠前後といったほうがいいでしょうか。
体に触れてもシャーを言わなくなりました。
気高き女王がちょっと緩みました。

怒涛の120日で7匹から元の2匹に。

子猫がいなくなっても特に変わるk遠なく相変わらず散歩好きで、ネズミやモグラやトカゲやらを買ってきては玄関に置いて朝驚かせてくる猫。

ペットショップで出会ったのになぜ・・・
狩りうますぎるだろ・・・

抱っこは許さないけど撫でるのと尻尾の付け根を叩かれるのが大好きなイブ。
あなたは今どこで何をしていますか。
3日間も帰ってこないと思ったら野生の顔つきでツヤツヤの毛並みで帰還。
でももう1ヶ月あなたは帰ってきません。
警察への遺失届け。
役所への確認。
愛護センターへの報告。
ごみ焼却場で冷凍保存されてる遺体の確認。
全部してもあなたはいませんでしたね。

どこかで生きている気がしてならないのです。
唯一狩りがでいるイブ。
最近は家にいるとあなたの鳴き声を聞きます。
そのたびにあちこち探しても結局あなたは姿を表してくれません。幻聴の頻度が増している気がするのですが、なるべく早めに帰ってきていただけないでしょうか?

サビ柄マンチカンのイブ。
気の強さが一番わたしと似ているイブ。

心臓が痛いのでそろそろ帰ってきてください。
週イチで焼却所の冷凍保存確認も地味に精神削られます。

耳から離れない鳴き声が、聞こえる頻度が、これ以上増える前にお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?