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    ㊅ 天国

           芥川龍之介
 
 もし天国を造り得るとすれば、それはただ地上にだけである。
この天国はもちろん茨の中に薔薇の花の咲いた天国であろう。
そこにはまた「あきらめ」と称する絶望に安んじた人々のほかには
犬ばかりたくさん歩いている。もっとも犬になることも悪いことではない。

「十本の針」 昭和二年 遺稿


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