地球って小さい

生ぬるい風が吹く季節
カーディガンを羽織るとちょうど良いくらいの気温。
木で人が1人乗れるくらいの船を作ってみようと思い立つ。
作り方はよく分からないのでGoogleでそれっぽい言葉を入力してみる
人1人分の船は船ではなくてボートらしい、そりゃそうだ
見様見真似で腕を動かす
初めてにしては上出来ではないだろうか
自慢したくなって写真を撮ってみるけど見せる相手は居ない、たまに1人で見返して自慢げになってみよう

海に出る。
2リットルのペットボトルの水
ファミチキとポテトチップスうす塩味
それとスーパーで割引されていた鉄火巻き

オールで波をかき分ける。
陸が見えなくなるまで漕いで、ああもう元の場所には戻れないなと思う。
このまま死んでしまうのも悪くない
そう思えるほど波は穏やかで過ごしやすい
この下には数え切れないほどの魚がいる
飛び込んでみたいけどそれは怖い
潮風は気持ちがいいと思っていたけど、なんだか髪も肌もベタついてきた

ボートの上で仰向けになって空を見上げた
陽が落ちようとしてだんだんと赤に染まる空を眺める
空は広いけど、地球は小さいなと感じる
なんだかこの海は全部自分のものなんじゃないかと思えてきた
海を牛耳るということは地球を牛耳るということ
他の惑星よ、地球と勝負するということは私と勝負するということだ
怖気付くよなあ仕方がないよ
私には何もないけれど無敵の気持ち
心が海の広さほど大きくなっている

空はすっかりと暗くなった
星がびっしりと見える
もう少しプラネタリウムにでも通って星の勉強をしておくんだった
ただ眺めることしかできないのは退屈である
そうだ、私が新しく星座を作り替えてしまおう
あれとあれを結ぶと寿司みたいだ
あれとあれを結ぶと目みたいだ
起き上がって鉄火巻きを食べる
もう一度寝転んでみたけどどの星を見ていたか分からなくなってしまった

月明かりに照らされて
海のベッドに寝転がるのは気持ちがいい

そのまま寝てしまって、起きると陸に戻されていた
波が私を陸に返したのか
大きくなった気は小さくなっていてしぼんだ風船みたいになっていた
お腹が空いたな
お米が食べたい
お米を食べたら、あの子に昨日のこと、謝りに行こう

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