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Vol.36#挑め!Leading Article/ゼレンスキーと鉄の将軍

その日のLeading Articleから解釈の決め手となった語彙を記録していきます。身につけば読む事がどんどん”楽”になります。

ロシア侵攻へのウクライナの抗戦は長期化しています。昨年までは潤沢であった国外からの支援ですが、中東情勢の悪化に伴い分散し縮小傾向にあるのが現状です。そんな中でリーダーシップと類稀な弁舌によって抵抗をリードするゼレンスキー氏は引き続き世界の注目を浴びているわけですが、今回の話はウクライナ国内で彼と人気を二分するライバルについてのものです。

鉄の将軍と呼ばれるValery Zaluzhny(ヴァレリー・ザルジニー)氏。は支持率85%と絶大な人気を誇り、ゼレンスキー氏自身にとっては大統領の地位を奪われる可能性がある要注意人物です。この二人がちょっとした言葉選びが原因でピリピリしてしまっているそうです。

言葉選びの難しさを噛み締めながら、読み進めていきましょう。



◎今日のLeading Article:ゼレンスキーと鉄の将軍

There is martial law in Ukraine and elections pencilled in for March have been suspended for safety reasons, so the not-so-discreet power struggle between the two men is the closest they can come to testing each other’s strength.

Much more hangs on this rivalry, though, than the flexing of muscle. Ukraine is dependent on western arms and enduring political support. In the US, a bipartisan group of senators have shaped a deal that could send $62 billion of aid to Ukraine but it faces, in US election year, an uphill struggle in Congress. The speaker of the house, Mike Johnson, has said he will back a separate spending bill that includes $17.6 billion for Israel — but does not mention Ukraine. Donald Trump, the probable Republican candidate for the presidency, has made clear that he is no enthusiast for Ukraine’s continuing war effort.
(中略)
So when General Zaluzhny told interviewers that Ukrainian forces had entered a stalemate with the Russian invaders, he raised the president’s hackles. The general’s aides have said he intended to say “equilibrium”, a less charged description of the battlefield. “Stalemate” suggested that the Ukrainians might be exhausted enough to consider terms of settlement for Russia — an unhelpful contribution and exactly the wrong signal to send when Mr Zelensky is trying to scrape together many hundreds of thousands of rounds of ammunition and sophisticated, potentially battle-winning weaponry.

□解釈のポイント■■■

① martial law /戒厳令

非常事態に際し軍隊に行政権や司法権委ねられ、軍隊がその国や地域を管理することを意味しています。

当初は選挙をして常時に戻る予定だったウクライナですが戦いは治らず、引き続き軍が国を管理しているという意味です。ちなみに戒厳というのは警戒を厳しくするという難しい日本語です。

②flexing of muscle/権力の誇示

flexは曲げたり、動かしたりするという意味です。筋肉を見せて力の強さをアピールするという事になります。柔軟体操というより強迫ですね。

国外を説得し支援をとりつけなければロシアにやられるという状況下で内輪揉めをしている場合ではないという状況なわけです。

③raise someone's hackles/逆鱗に触れる

hacklesは鳥の首周りに生えている長い毛の事で、鳥は怒るとこの毛が逆立つそうです。そこから怒らせるという意味の言葉になりました。逆鱗は龍の鱗で触ると龍を怒らせてしまうとされているもので、若干スケール感に差がある気もしますが逆鱗に触れるとしました。

喧嘩の最中に将軍がテンションさがるような事を口にしてしまい、ゼレンスキーさんの毛が逆立つ展開です。


■試訳

現在ウクライナには戒厳令が敷かれており、3月に予定されていた選挙は安全を理由に延期されている。よって、控えめとは言い難いこの二人の権力争いはかろうじて衝突という所には至っていない。
しかしながら、この対立関係は権力の誇示というだけに留まらない。ウクライナは欧米諸国の提供する兵器と政治的な支援継続に依存しているからだ。アメリカでは上院超党派グループは620億ドルのウクライナ支援を提議しているが、今年は選挙年であり、下院では苦しい戦況に直面している。下院議長のMike Johnsonはイスラエル支援176億ドルを含む個別出費を支持するとしているが、ウクライナへの言及はなかった。共和党の大統領候補となる可能性があるドナルドトランプもウクライナが戦争への取り組みを続ける事に対して熱心ではない事を明言している。
(中略)
よって、General Zaluzhny将軍がインタビューでウクライナ軍はロシアの侵略軍に対して”こう着状態”にあると述べた事は大統領の逆鱗に触れた。将軍の側近によればそこで意図していたのは”均衡している”という事で、戦況に関する表現としてはより緩やかなものであったとの事。”こう着状態”という言葉はウクライナが疲弊していてロシアと停戦交渉を行う可能性を示唆し、Zelensky氏が勝利に繋がる可能性を持つ弾薬兵器をかき集めよう奮闘している中で少しもその助けにならないばかりか誤解を招く表現である。

◇一言コメント:

”鉄の将軍”はインタビューで戦況をstalemate(こう着状態)と表現してしまったわけですが、このstalemateはチェスで打つ手がなくなり行き詰まるとい状態を指す言葉です。ウクライナが困窮しロシアと停戦交渉をしようとしているというニュアンスになるという問題です。

ゼレンスキー氏にしてみれば、海外に向けて徹底抗戦をアピールして支援を求めているので水をさされた形です。余裕がなくなってきている欧米諸国が支援縮小に傾く致命傷となりかねない為、ゼレンスキー氏が激怒するのも致し方ないところかもしれません。そして、ゼレンスキー氏にもここらで将来のライバルの鼻をへし折っておこうという打算も当然あるはずです。

そういうつもりじゃなかった系のトラブルは会社でも、世界のどこでも存在するものです。言葉選びは難しさを踏まえ、誤解や一人歩きの隙を作らない事が大事ですね。

最後にちょっと鉄の将軍の御尊顔を。

わ、強そうですね まさに鉄の将軍


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