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幸せの分泌〜神経伝達物質の障害〜

ASD の 2 人に 1 人は不安や抑うつなどの 併存を認めるという報告もある.Croen らは,ASD 成人の 54%に精神医学的併存症を 認め,多いものから不安障害(29%),うつ病性 障害(26%),双極性障害(11%),注意欠如多 動性障害(11%),強迫性障害(8%),統合失調 症(8%)と報告した.

自閉スペクトラム症における「こころ」と「身体」と 「行動」 岡本百合

以前私が対応した児童で、突然過去のフラッシュバックで泣き叫ぶ子がいました。
全く関係のない状況で過去のトラウマにより暴れる子。

発達障害を抱える子はなぜこんなに精神が安定しないのか…今回学んだことが答えの一つとなりました。

今記事の目的と目次

目的
☑︎発達障害者のメンタルを神経伝達物質の観点から理解し支援する。


ASD・ADHDの深刻な併存症
ASDの成人の54%が精神医学的併存症を抱え、不安障害、うつ病性障害、双極性障害などの症状が現れています。

また、ADHD特質の衝動性が高い人は、メンタルヘルス問題により犯罪性が増す可能性が指摘されています。

ときに、衝動性が自殺につながることも。。。

発達障害者の生活習慣の乱れ、人間関係の構築の難しさ、興味関心の偏り。

これらは問題の表面に過ぎません。
本当の問題はこれらの特質が原因となり「脳内物質の調整が難しい」ということです。

これに対処するためには、科学的なアプローチと適切な環境支援が必要です。

メンタルヘルスのための適切な環境

グレーを黒に【リスク予防】

近年、グレーゾーンとよく言われます。
白でも黒でもない、中間地点。

どちらにも属さないので対応が遅れることが多いのがこのグレーゾーンです。

私は特別支援の目的は「二次障害の予防」だと強く思っています。

過去に対応が遅すぎたが故に、周りを全て敵視し支援にも心を閉じる子を見てきました。

そうならないためにも、いっそグレーゾーンを黒に変えて対応を考えても良いのではないでしょうか。

特に実行機能障害やワーキングメモリが低いADHD傾向の子供は影響を受けやすいです。

教育者が特定の子を叱ることで他の子もそれに同調します。
自尊心が傷つくリスクがあります。

このようなトラブルが多い環境では脳内物質が整いにくいのです。

また、勉強が苦手な場合、社会経験を通じて自己肯定感を高めるアプローチも考えられます。
報酬系障害を抱える子供は、簡単なバイト経験を通じて社会デビューし、メリットを経験することが適しています。

以下、人間の精神を安定させるための神経伝達物質の観点から発達障害者の支援を捉えていきます。

発達障害が影響する神経伝達物質

①健康な幸福 セロトニン

セロトニンは健康な幸福感と密接な関係にあります。
朝日を浴びたり、適したリズムの運動がきっかけで分泌されるこの神経伝達物質は、生活習慣が整いにくいと欠けやすくなります。
発達障害において生活リズムが不安定になると、セロトニンが不足し、精神も不安定になります。
特に自閉症は元来脳内のセロトニンの量が少なく、不安性が高い特質をもちます。その結果、恐怖時にノルアドレナリンが増加しやすくなります。

セロトニン不足への対策【生活習慣の確立が鍵】

運動: ウォーキング、ストレッチ、スクワットなどの適度な運動が重要。
タンパク質の摂取: 肉や魚を食べることで、セロトニンの材料となるアミノ酸を多く摂取する。
外出: 日の光を浴びることでセロトニンの分泌を促進。

平衡感覚や触覚を使った遊びは自律神経の発達を促進します。
好きなことを通じて心身を鍛え、セロトニンのバランスを整えましょう。セロトニン不足への対策は生活習慣を整えることから始まります。


②対人関係の幸福 オキシトシン

オキシトシンは対人関係の幸福に密接な関連があります。
家族、恋人、友人とのスキンシップ、マッサージ、ハグなどがオキシトシンの分泌を促進します。
発達障害(ASD)の特徴であるこだわりの強さや感覚過敏などが影響し、対人関係の構築が難しくなりがちです。

オキシトシン不足への対策【愛着の形成が鍵】

人間関係の増加: 家族、友達、地域などとのつながりを増やす。
心を通わせる: 肌が触れなくても、見つめ合う、家族と団らんする、楽しく食事するなどで心を通わせる。
感動や優しさ: 感動や優しさを経験することもオキシトシンの分泌を促進する。

ADHDの子供たちは他者への貢献を好む傾向があります。
自分のことができていないのに、お手伝いをしたがる子。
そこはツッこまずに素直に感謝してオキシトシンださせましょう。
感謝の報酬がオキシトシン支援に繋がります。

発達特質がある中で、過剰な適応は悪化に繋がります。
集団行動に無理に合わせず、好きなことを通じて自然な形で交流することが大切です。


③自己成長の幸福 ドーパミン

ドーパミンは自己成長と密接な関連がありますが、過剰になると反抗挑戦性症状を引き起こす可能性があります。
ADHDは衝動性によりドーパミンが不足もしくは偏って働く傾向があります。
また、依存性が高いものに弱く、関心のないものにはあまり反応しません。
失敗体験や虐待経験もドーパミンの発症に影響します。

ドーパミン不足への対策【リフレッシュ活動が鍵】

運動: 特に運動はドーパミンの分泌を促進します。仲間と楽しい経験をドーパミンが出ている時に積極的に経験すると、より記憶に残ります。
クールダウン: 発達障害の特徴である興味関心への強い傾向に注意しながら、過剰なドーパミン分泌を避けるために適度なクールダウンが重要です。
オキシトシンとセロトニンのバランス: ドーパミンの幸せは長続きせず、偏りが多いため、オキシトシンとセロトニンの増加を重視します。

予期せぬ状況でのパニックや焦りはドーパミンの過剰分泌を引き起こす可能性があります。
過度な興奮を避けつつ、クールダウンを心がけ、オキシトシンとセロトニンの増加を重視することが大切です。

まとめ

発達障害に直面する場合、単に症状だけでなく、背後に潜む神経伝達物質や生育歴にも注目し、科学的な視点から的確な対応を心がけましょう。

過去に私が対応して泣き叫んでいた子も、特質と環境の不一致で多くのトラウマがありました。
そのような状況で神経伝達物質がうまく機能していなかったのではないかと思います。

科学的アプローチの視点を持ち発達障害者のメンタルを支援していただけたらと思います。


参考文献:
こども発達支援研究会【第35回 発達障害を抱える子へのメンタルヘルス支援】研修(いつもすごく勉強になるセミナーありがとうございます)

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