檻の中の動物?野生に生きる動物?
なつかしの道を歩く。
実家へと続く道。
途中で小さな図書館によった。
小さい頃、無料のお茶飲みコーナーのためによく通った。
(あの作家さんの本、あるかな。)
好きだった作家。
重松清さん。
子どもの繊細な心情がよく描写されている。
『答えは風の中』を図書館で読む。
動物園の檻の中で暮らす動物は幸せか。
家族や故郷から遠ざかる動物。
人工的な環境で保護される動物。
どちらが幸せか。
自然の中では、自分を想ってくれる家族がいる。
人工の中では、自分を想ってくれる飼育員がいる。
幸せとは、相手を想うこと、想われること。
(一人では「幸せな状態」になれない)
ーー 平日昼下がり、僕は図書館で一人号泣し本を読んでいた。
周りは年配のおじさんだらけだった。
図書館をでて、いよいよ実家へ。
ベンチが多い。公園も多い。
かつての東京のベットタウン。よくある団地。
今は人気もない。年配だらけで、空いている部屋も多いと最近聞いた。
途中途中にある小さな休憩スペース。
芝生と花壇が少し置いてあるだけ。
そんなスペースを改造して、父は「秘密基地」をつくった。
「こんにちは!」
(え、俺に!?)
学校帰りの小学生たちがあいさつしてくる。
(今どき、見知らぬ大人にきちんと挨拶する子もいるんだな。)
「こんにちは。」
守られた地域なのだ、この団地は。
休憩スペース、父の秘密基地に入る子どもたち。
並べられた椅子、テーブル、人形、おもちゃ、緑のカーテン。
子どもが父の置いたピコピコハンマーで自分の頭を叩き笑っている。
(別に話しかけても不審者にはならないだろう。)
守られた雰囲気に気を許し、声をかける。
「すごいね、秘密基地みたいだね。」
「うん、そうだよ!秘密基地!」
嬉しそうに遊ぶ子が見られて、何だか私も嬉しくなる。
「ここ作った人、ここらへんに住んでいる人なんだよ!」
子どもが自分事のように自慢してくる。
(うん、知ってる。)
私も心の中で自慢する。
(ここを作ったのは俺の父さんなんだぞ。)
「おじさん、ここらへんに住んでるの?」
「うん、昔ね。小さい頃ここで育ったんだ。」
「ふーん。」
会話よりもおもちゃで遊ぶのに夢中そうな子ども。
水鉄砲で雑草を撃ち始めた。
「さようなら。」
「さようならー!」
子どもと別れたあと感情が込み上げる。
父が作った秘密基地。
その秘密基地で子どもたちが秘密時に遊ぶ。
父は勝手に遊び場をつくり、
子どもは勝手に遊び場を使う。
自然な状態。
(オヤジはすごいな、、、)
相手を想う、想われる幸せ。
想っているだけで幸せ。
「ただいまっ。」
ドアを開ける。
80歳にして自然な幸せを享受している父に
今から会う。
【あとがき】
こんな私のノンフィクション日記を引き続き読んで頂きありがとうございます。
私が6月20日に体験したことを、日記にしたことを、基に書いております。
重松さんの本は学生の頃によく読んでいました。
本とは、作者との会話であり、自分自身との対話なのだと、大人になって思います。
重松さんの本に、故郷に救われた1日でした。
次回、父との対話を書いていきます。
よろしければご覧ください。
願わくば、自然と読者様の力になれますように。
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