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【名盤伝説】”John Lennon / Walls and Bridges (心の壁、愛の橋)”

MASTER PIECEジョン・レノンの1974年にリリースしたアルバム『心の壁、愛の橋』です。

ヨーコとの別居生活(失われた週末)を過ごしていた1974年、ジョンはロスでの制作中のロックン・ロール・アルバムづくりを中断してニューヨークに戻り、全く別のアルバムを作り始めます。禁酒、禁ドラッグしたおかげでジョンの創造力に火がついたとされています。

そんなセッションの最中にエルトン・ジョンが訪問してヒット曲の「Whatever Gets You Thru The Night (真夜中を突っ走れ)」が生まれます。


制作の経緯について詳しい話は知りませんが、アルバム全体に漂う浮遊感は、まさに音楽に正面から向かい合った、等身大のジョンの音楽性が発揮されているのかなと感じます。

インナー・スリーヴのアートワークにはジョンの幼い頃の絵が随所に用いられています。NYっぽくゲージツ家的な雰囲気を感じさせてくれます。

収録曲
A1 Going Down On Love
A2 Whatever Gets You Thru The Night
A3 Old Dirt Road
A4 What You Got
A5 Bless You
A6 Scared
B1 #9 Dream
B2 Surprise, Surprise (Sweet Bird Of Paradox)
B3 Steel And Glass
B4 Beef Jerky
B5 Nobody Loves You (When You're Down And Out)
B6 Ya Ya

ゆるーく始まるアルバム・トップのA1。実にリラックスした雰囲気で、アルバム全体に漂う力みの無い作品づくりを象徴するようなナンバーです。


名盤『イマジン』の曲調を想起させるようなスロー・ナンバーA3。「薄汚れた砂利道」としてロスでの荒んだ生活を戒めている曲だそうです。ヨーコとの失われた週末を終えたいとの気持ちが込められているとされますが、果たしてそうでしょうか。あんな生活には二度と戻りたくないとして、それがいつの頃ことなのかは疑問に感じます。アルバム全体を通して幼い頃の純粋な自分に戻りたいというのが、テーマのように私には思えるのですが・・・。


収録曲の中でも割と力強いブルース・ナンバーのB2。現実社会と交錯する逆説的な世界に飛び交う小鳥は何の迷いもなく羽ばたいている・・・ビートルズの名曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」にも匹敵する空想の世界感を感じされてくれます。何よりアウトロの「ドライヴ・マイ・カー」のオマージュは、ビートルズ時代の狂ったような毎日が今でもトラウマのように思い出されるという、素直な思いがあるのではないかと妄想が膨らみます。小曲ですが味わい深い曲です。


先行シングルの大ヒットを受けて、発売2ヶ月でUSチャートでアルバムとシングルの同時1位を記録、UKでも6位になるなどアルバム『イマジン』以来3年ぶり、ジョンの生涯最後の全米ナンバー・ワン作品となりました。

政治色や社会的メッセージを排した、純粋な音楽性の発露としてのジョンのアルバムは本当に素晴らしいです。彼を社会運動の象徴に祀りあげたい勢力との関わりを個人的には残念に思っています。その結果があの悲劇に繋がるのですから・・・。

一人の人間としてのジョンは、深い愛情を求め続けていたのだと思っています。そんな彼の本音が見え隠れする優しいアルバムです。



ビートルズ解散以降の記事をまとめています。どうぞお立ち寄りください。




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