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【名盤伝説】 “Joseph Williams / S.T.” TOTOフリーク秘蔵のソロアルバム。

お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。今回はTOTOの3代目ボーカリストのジョセフ・ウィリアムスが、TOTO加入前に制作していたソロアルバム(1981)です。

ジョセフといえば実父が映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムスであるのは有名です。ジョンは「STAR WARS」や「未知との遭遇」「インディー・ジョーンズ」などのスピルバーグ監督作品などで知られています。

このアルバムはマクサスジェイ・グルスカがプロデュースしていますが、ジョセフ自身が全く無名だったため、リリース当初はほんの一部のマニアの間だけに知られる存在でした。そんなジョセフが1986年『ファーレンハイト』でTOTOに加入して、その歌いっぷりやコンポーザーとしての才能をアピールして注目を浴びると、そういえば彼にはソロアルバムがあるぞと話題になるものの、その時にはLP盤は既に入手困難な幻の存在となっていました。

そんなアルバムが2002年に完全版??としてCD盤として再再発されています。

参加ミュージシャンはドラムにジョセフの実兄のマーク・T・ウィリアムス、マクサスからはギターのマイケル・ランドウとキーボードのロビー・ブキャナンが参加。同じくキーボードにはデビッド・ガーフィールドも。さらにTOTOのスティーブ・ルカサー、パーカッションでレニー・カストロ、ホーンセクションにはジェリー・ヘイラリー・ウィリアムとお馴染みのミュージシャンが顔をそろえます。リアルタイムで国内盤がリリースされていたら、ファンは飛びつくメンバーだったのになと思います。

収録曲は出だしからまるでTOTOのようなロックチューンM1「What is She Hiding」。しかもルークがソロ取っていますし、ジョセフがボーカルですから、そのまんまTOTOですね。M2「That First Night」はミディアムなテンポにシンセアレンジが雰囲気を醸し出すアダルトなチューン。M3「Takin’ It」はサックスが効く、これもアダルトなロックチューン。M4「One More Chance」はジョセフお得意のメロウバラード。そしてA面最後M5「I Didn’t Do It」はランドウのギターが唸るハードなナンバー。完璧な構成です。

そしてB面、M6「This Girl」はシンセが印象的なポップなナンバー。ジョセフの表現力が若いのに大したものだと。ドラムがジェフ・ポーカロならこう叩くかなと想像したくなりました。M7「Something Special」はミディアム・テンポながら後半のランドウのハードなギターが聞きどころ。そしてM9「Make Some Time」は全編ジョセフのダブル・ボーカルと、中盤以降のルークそっくりのランドウのギターソロが強烈なロックチューン。格好よくアルバムを締めくくります。
CDにはボーナストラックとしてTOTO在籍中に制作したデモ音源2曲と、問題の曲の別テイクが追加されています。

このアルバムの思い出・・・1995年頃、私はとあるAORフリークの集まりに顔を出していました。その仲間内でもこのアルバムはウォントリストNo.1で、時折中古レコード屋の入荷リストに載るものの、瞬殺で消える超人気のレア盤でした。

この集まりに参加してからは、お互いの情報やコレクションを交換しながらそれぞれの知見を広げていくことに夢中になっていました。まだGoogle検索など無かった時代なので、こうしたローカルの情報交換は大変貴重でした。そんな情報や当時出版されていた「レコードマップ」という全国の中古盤屋が掲載されているDB本を元に、それこそ全国の輸入盤や中古レコード店を巡る日々を過ごしていました。

この集まりの存在が何気に業界にも広がり、当時伝道師を名乗るほどAOR好きだった某音楽ライター氏も関係してきた流れで、このアルバムがCD盤として再発に向けての動きが出てきます。そして遂に彼が立ち上げたレーベルからのリリースが決まりましたが・・・

こんな趣味に夢中になっていたある時、その中で親しくしていた方から、このジョセフのアルバムとトレード希望の話があると声をかけられ、候補のアルバムを持っていた私は即OKと返答して、待望のアルバムを入手することが出来ました。持つべきものはやっぱり友達だと思いました。

すでに音源だけは入手して聴き倒していた私には、アルバムの内容は分かっていたものの、せっかく届いた現物なので、ターンテーブルに乗せて至福の時間を過ごしていました。そしてM5が流れ出した時に、どことなく違和感を感じました。何だろうと耳を澄ますと入っているはずのギターが聞こえません。何だ何だと、改めて既に入手していた音源を聞き直すと確かにギターリフやソロもあります。別テイクがあるのかと仲間に問い合わせしてみても、そんな話は聞いたことが無いと大騒ぎになりました。中には要領よく複数枚数アルバムを所有する人もいましたが、あまりの貴重盤だったので、すべての盤をかけたことが無かったようです。マニアにあるあるの手を付けない保存盤ということ。そもそも別テイクがあるとは思ってもいないので、手持ちの盤を順に確認する人なんて、よほどの音盤マニア以外には普通はいませんよね・・・

そんな話は某ライター氏にも伝わり、この再再発盤には2テイクが堂々と収められました。まさにマニアも納得の完全版ということです。

もう一つの思い出。この写真はTOTOの活動が停滞していた時期にソロで来日した時に楽屋訪問が叶い、その際に本人にお会いした時のものです。ステージで見るよりも案外小柄でしたが、とても人の良いお兄さん(実際は私より一つだけ年下ですけど)という印象でした。

写真データでは2016年となっていますが・・・

記事公開時点でこのアルバムを密林で探すと新譜は入荷見込みなし、中古でも高値で出品されていました。また幻になってしまうのでしょうか。TOTOファンの方には是非とも聴いてほしいアルバムです。今時なので配信でも良いので解禁にならないかなと思いますが、権利を持っているのがJCでは無理だろうなと・・・。
何処かで中古盤でも見かけたら、値段にもよりますが即入手しましょう。

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