見出し画像

血は争えない 自転車になったら歌ってしまう

小学生の頃から自転車に乗るといつも鼻歌を歌っていた。
鼻歌ではなく普通に歌っている時もあった。
車に乗っていても同じで、窓を開けていると今でも歌ってしまう。
顔が風にあたるとどうも気分がよくなってしまうからだと思う。
耳を横切る風の音で、私の声も周りにあんまり聞こえないだろうと錯覚してしまう。
特に自転車で下り坂の時はこがなくてもいいからさらに声がはずむ。
大人になって自分以外の人が歌っているのが聞こえて、あ、けっこう聞こえるんだと気づいた。
それでも自転車に乗ると小さく鼻歌を歌っていた。

ある日の夕方私は家の近くを歩いていた。
その日はいつもの遊歩道ではなく駐車場の道を歩いていた。
人も少なくのんびり歩いた。

すると向こうから学ランを着た高校生が自転車でやってくるのが見えた。
近づくに連れて歌が聞こえてきた。
当時流行りの曲だった。

わっかるわあ。この夕日の中、気持ちいいよねえ。いいねえいいねえ。

なんて思いながらすれ違った。

キィー。
「お母さん!」

え…

息子だった。

血は争えない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?