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小学校の思い出4 洞窟探検

小学校の近くに池と、それを囲むように林があった。
当時は山と思っていた。
細い道があってずっと歩くと池を一回りして戻るようになっていた。

ある日誰かが洞窟があるという情報を得て何人かで行ってみることになった。

「探検しようぜ!」
もうみんなわくわくして急いで家に帰ってランドセルを玄関に置いてすぐまた小学校の校門前に集まった。

まず池のザリガニを確認してその後すぐに林の中へ入った。
ちょうど池の半分くらい回ったあたりだった。

左手に穴があった。

粘土で固められたような穴だ。
小学生なら少し首を下げれば入ることができる。
でも、なんだか暗いし、足元はどうもどろどろしている。水も溜まっていた。
覗くとひんやりした。

「どうする?」

先頭にいた男の子が聞いた。
みんな黙っていたが連れてきた子犬が急に吠え出したので、みんなで一斉にもと来た道を走った。

1人の女の子が
「クロがこんなに吠えるねんから、なんかあるねんで。入ったらあかんのちゃう?」
っということでその日は諦めた。

別の日、やっぱり入ってみようということになった。
あの女の子は誘わなかった。

そしていよいよ中へ。
こわごわ進むとどんどん狭くなっていった。もう帰りたくなった時、

「あ!」

向こうに光が見えた!
みんなの表情が緩むような気配がわかった。

でもそこからはさらに洞窟の天井が低く、腰まで屈まなくてはならなかった。
ここまで来たんだからもう後戻りはしたくない。もう怖さはなくなっていた。

背中に天井が擦れる。
そしてついに外へ出た!

みんな声が出なかった。
眩しさを感じながら辺りを見渡した。
その場所からは住宅がいくつか見渡せた。
しかもなんとそこは電車で通ってきているクラスメートたちの地域だった。

魔法の抜け道だと思った。

達成感と夢を見ているような気持ちで再び洞窟を通って帰った。

「明日あいつらに教えてやろうぜ」
なんて得意げに話しながら。

次の日、電車で通学しているMちゃんにそのことを話すと、
「それ、昔防空壕だったところやと思う。おじいちゃんがあそこは行ったらあかんでって言ってた。」

…。

それ以来もう洞窟には行かなかった。

大人になってたまたま車で通ることがあった。
もう池も林もなくて住宅が遠くまで広がっていた。
洞窟を抜けて出た林の反対側まで続く住宅街になっていた。

Mちゃん、これで歩いて小学校まで通えるね。

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