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月刊ショパン4月号 発売になりました!  ♬連載16回目は日本のピアノ教本♫


連載16回目となる今回は、日本のピアノ教本を取り上げています。
連載が始まったばかりの最初の2回は日本の教本でしたから、正確には3回目。
新版 みんなのオルガン・オルガンピアノの本が登場です
日本にまだピアノが普及しておらず、オルガンが主流だった時代を反映して付けられたこの教本名。
そんな時代の名残を残しながらも、すっかりこの名前は定着して超ロングセラーとなっています。
1957年に初版が出版された当時は、まだ他にほとんど教本がなく、バイエル、メトードローズが主流。
初版は別の教本名だったそうですが、2014年に新版が出版されたものの、現在も旧版の人気は高く、現在どちらの版も日本中で愛用されています。


私が所有している旧版は初版第1刷。
4巻構成で、執筆者は作曲家で子供のための教材をいくつも書いている髙橋正夫氏。
初めてピアノを学ぶ子どもたちのために、わかりやすく丁寧に作られたこの教本は、音階や和音、調などの基本、楽譜を読む力を身に付けるための練習や偉大な作曲家作品に親しんでもらうために、弾きやすさを求めて簡単なヴァージョンに編曲された名作をたくさん取り入れています。
当時、日本でこれほど内容と構成がわかりやすくしっかりした教本が誕生したのは画期的な事でした。
ワークブックは約50年経って、後付けで誕生しました。
これは2014年に出版された新版。教本の内容骨子はほとんど継承され、
印刷技術の発展のおかげで、より鮮明な色使いで、挿絵や学習曲の多くが差し替えられました。
誕生以来、約70年間も人気を保持してロングセラーのこの教本の魅力とは⁈
◯シンプルで、見やすく分かりやすい。
◯ピアノ学習で大切な学習内容を総合的に網羅している。
◯学習曲が段階別によく整理されていて、取り組みやすい短い曲で構成されている。
◯さまざまな時代、国の民謡、舞曲などが多く取り入れられ、さらに、
偉大な芸術家による名作が弾きやすいように編曲されて配列されている。

まだ、子ども教材がほとんどない時代に、この教本の登場は、
本当に多くの指導者や学習者の心を掴んだ事でしょう。
著者 髙橋正夫氏の教育者としての力量、考え方の素晴らしさが伝わってきます。
YAMAHAの教材創成に貢献した彼の熱意はただならぬものがあったに違いありません。
YAMAHAの音楽教育メソッドは、アメリカ合衆国の教育雑誌にも大きく掲載されています。
米国でもよく知られたメソッドの一つなのです。
この雑誌は、私がコロンビア大学のSUMMER SCHOOLに参加していた最中、
学内の図書館で見つけたものです。
コピーが許可されているので、図書館でコピーを取り、日本に持ち帰りました。
日本国内では、全国規模で沢山の楽器店が楽器や書籍、楽譜の販路を拡大し、
付属の音楽教室で、音楽教育を展開、発展させる時代を迎えます。
複数の楽器メーカーが母体となる出版社を立ち上げ、付属の音楽教室専用のテキストを作成。
各社がそれぞれのメソッドを持ち、それを特色として掲げる音楽教室と教本は
広く普及する時代へ向かうことになります。
これはすでに絶版になってしまった日本の画期的な教本の一つ。
楽器メーカーのアトラス社が自社付属の音楽教室向けに作成したテキストです。
リトミックを取り入れ、総合学習をわかりやすく取り入れている教本名はメトード・クリエ。
その内容と構成は、大変素晴らしいものです。
リトミックをピアノ教育に導入する考え方は、世界各国で様々な方法で取り組まれてきました。
しかし、リトミックを取り入れた教本で長く生かされているものはとても少ない現実があります。
このメトード・クリエでも画期的なリトミックの取り入れ方をしています。
残念ながら、母体のアトラス社と共に姿を消してしまいました。

この続きは次回に繋げたいと思います。

最後までお読みくださりありがとうございます。
皆様とのご縁に感謝しつつ
素敵な春をお過ごしくださいませ。

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