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月刊ショパン6月号発売中です。連載最終回では、リトミックとピアノについてを取り上げました。教本はリトミックの考え方が生かされている「まいぴあの」!


リトミックの創始者として知られるエミール・ジャック=ダルクローズ(1865-1950)。
本名はエミール・ジャック、ダルクローズは改名で付加された呼称だそうです。
ダルクローズの方が、ひょっとしたら耳馴染みがあるかもしれませんね。
音楽の勉強は、まず感じる感覚を育てること
さらに、ソルフェージュや基礎理論、リズム、即興など総合的な学習と、
さらには脳生理学や心理学の側面からもアプローチすることが大切だと考え
実践と研究を重ねて音楽教育システムを体系的に築いた人物です。
初心者向け読譜学習の工夫、プレリーディングの基礎を築いています。
私は、アメリカの教本でこのリトミックを取り入れたピアノ指導法を知り、
深く興味を持ちました。
世界の教本を研究するきっかけだったように思います。
日本にリトミックを最初に広めたのは、戦後に米国留学から帰国した板野平氏。
板野氏によって、国立音楽大学でリトミック教育が始まったのがきっかけでした。
堪能な語学力を活かし、リトミックについての書籍を翻訳して日本に紹介したり、
次々に専門雑誌に執筆したりと、意欲的な氏の活動は日本の音楽教育界に大きな影響を与え、
徐々にピアノ教育へのリトミック導入が熱心な教育者たちによって工夫され、
ピアノ指導のあり方に、ある意味大きな革新をもたらした言えます。
リトミックの影響は日本だけではなく、世界中に広がりました。
写真は、リトミック研究家のクラウス・ルンツェ氏によるピアノ教本(1986日本初版)
翻訳は夫人の喜久子氏が担当。
ダルクローズの影響が随所に現れています。

日本では、リトミックを生かしたピアノ教本が次々に出版されてきました。
写真は、リトミック研究者たちによるピアノ教本。
板野平氏も執筆に関わっています。
板野平氏の活動によって、日本では多くのリトミック研究家が育ちました。
ご子息の板野和彦氏もその一人。
写真の音楽教育メソードの比較は、板野和彦氏の翻訳によるもので、
アメリカ合衆国における音楽教育がどのような研究のもとで発展したのか、
様々な米国ピアノ教本のルーツを感じる名著です。
日本では新しいピアノ教本として
それまでの指導法にリトミックが取り入れられるものも現れました。
写真は1993年に出版。現在は絶版。
これは、リトミック専門家の石丸由理氏による教本(1988初版)
総合学習分冊型教本でとても種類が多く、
ダルクローズの考え方が生かされています。
現在は改訂版が出されています。
これは、YAMAHA(YMEH)から出版されている幼児向け教本
ミッキーマウスを筆頭に、Disney のキャラクターたちが学習の案内役として登場。
リトミックを取り入れた総合学習の教本です。
これはすでに絶版になっていますが、
かつてのピアノ製造会社
アトラス社が自社の音楽教室向けに制作した総合学習教本メトード・クリエ
ダルクローズのリトミックと即興も取り入れられ、
石丸由理氏も執筆しています。
素晴らしい教本です。
これは皆様きっとご存知のアメリカ合衆国の教本、adventure シリーズ中のwriting.
多くの米国教本、例えばペース、バスティン、メインストリーム、ミュージック パサウェイズ、
アルフレッド、グローバーなどに共通する
プレリーディングや即興(improvisation )が用いられています。
これは、今回取り上げた石黒加須美先生による教本「まいぴあの」です。
ダルクローズだけでなく、様々な教育法が巧みに取り入れられ、総合的に学べるピアノ教本です。
中でも、導入レベルのぷれでは、言葉とリズムを結びつけた学習法が用いられています。
今ご活躍中の作曲家や音楽教育家、さらには、
石黒加須美先生主宰のかすみミュージックスクールの先生方による作品が散りばめられています。
全体はぷれ1、2から5巻までの7巻構成。
QRコードからアクセスして無料で音源が聴けるようになっています。
時代は進み、デジタル化進行中。
教材もアプリ化が進んでいて、時代の波を感じずにはいられません。
近い将来、AIを活用する指導法や教材が登場するのでしょうか。
時代は進んでも、ピアノ学習で求められる基礎学習は変わらないのですね。
人の心に寄り添える指導者であり続けたいものです。

最後までお読みくださり、本当にありがとうございます。
連載は最終回を迎えましたが、
今後もマイペースで研究を続けていきたいと思っています。
またお目にかかかれると嬉しいです。
心から感謝をこめて
丸山京子


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