[創作童話]クリスマスローズと二わの鳥
クリスマスローズと二わの鳥
春になると、山のふもとにある農家の庭で、クリスマスローズがさきます。寒さに強く、芍薬の様にきれいな花です。
ここは、夏の暑さをのぞけば、ずごしやすくクリスマスローズは、幸せにくらしていました。
でも、時どき、緑の多いふるさとを思い出します。
花は庭にやってきたスズメや、ツバメ、ムクドリや、カラスに、ふるさとのことをたずねましたが、どの鳥にもわかりませんでした。
そんなある日、ロシアの国鳥ゴシキヒワがやってきました。赤、茶色、黄色、黒、白と、五つの色を持ったスズメぐらいの鳥です。
花のふるさとのウクライナでは、よく見かけましたが、そこよりも、はるか東の日本で見たのは、初めてです。
なつかしくて、
「こんにちは」
と、声をかけると、ゴシキヒワも、
「まあ、こんな所で、ふるさとで見なれた花に会えるなんて」
と、おどろいています。
「人間たちのあらそいから、にげているうちに、なかまとはぐれて、この国にまよいこんでしまって」
「遠すぎて、もどるのはたいへんね」
「ええ・・・」
「ここでくらしては?ほかの鳥たちといっしょにね」
「はい、そうします」
たくさんの木がうわっている庭には、いろいろな鳥が飛んできますが、ゴシキヒワには、なじめません。
クリスマスローズのほかに、友だちがいなくてさびしい思いをしていた数日後です。
はい色と、赤だいだい色の、ヨーロッパコマドリが、やってきました。
ヨーロッパではよく見かけますが、日本のコマドリとは、色あいがちがいます。
ヨーロッパコマドリは、
「こんな遠い所で、ゴシキヒワに会えるなんて」
おどろきながら続けます、
「わたし、ウクライナにいましたが、ロシアにせめいられ、にげてきました。
「えっ、わたしもウクライナうまれです」
「緑ゆたかな、いい所でしたけど。もう、もどることはできません」
「じゃ、ここでくらしましょうよ」
「それ、いいですね」
今、ゴシキヒワとヨーロッパコマドリのふるさとは、戦そう中ですが、食べ物の取り合いなどで、二わがあらそうことはありません。
ゴシキヒワは、主に植物のタネを、ヨーロッパコマドリは、主に虫を食べるからです。
「いいなあ。ゴシキヒワさんと、ヨーロッパコマドリさん。すっかりなかよくなって」
こんなすがたは、ほほえましさと同時に、クリスマスローズにとっては、かなしみもわいてきます。
「どうして、戦そうがおこっているのだろう。わたしのふるさとウクライナでは・・・」
ゴシキヒワと、ヨーロッパコマドリは、首をかしげるばかりです。
「人間も、ゴシキヒワさんたちのように、あらそうことなく、なかよくくらしてくれますように」
クリスマスローズは、このように願いながらも、つつましくも、美しくさいていました。
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