二人



路面の碧色がこちらまで伸びている。


私はその中に君の温もりを感じられる。










通過するまでにはまだ遠い。


滲んだままで点滅が始まる。


もう間に合いそうには無い。






雨は滝のように流れる。


ワイパーの音が煩い。








溢れ出す水は、あらゆる光を伸ばし暈す。



森は深く息を吸い、黒黒と私を見つめる。



分厚い雲はほの明く、時間の感覚が狂う。





雨は激しく打ちつける。


ワイパーの音が煩い。









私はペダルから足を離せない。


宛は無いが止まりたくも無い。




もう君に会えないこの街を遠ざけていられる。


進み続ける限り君の温もりを反芻していられる。







滑る路面。包む光。


森は余りにも近い。


感覚は狂ったまま。


足はまだ離せない。


雨はまだ止まない。


夜はまだ明けない。




ワイパーの音が煩い。






路面は赤と黄色の点滅。



碧色にはもう会えない。



それでも夜は明けない。




雨は容赦なく降りしきる。


ワイパーの音だけが煩い。








夜と雨と光と森と時間とが、


私を独りに閉じ込めていく。







ワイパーの音だけが、ただ只管に、



もう戻れない時間を刻一刻と刻む、



その苛立と後悔を離してくれない。











※追記
この度、ともちゃんさんの企画に参加致します。










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