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Latter

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記録によれば、裏山の桜は、二百年前にはすでに枯れていて、緑の広葉樹が広がる山の中腹、花を咲かせることはおろか、葉をつけることさえもないーーー とある村、不吉と言われ、誰も辿り着く…
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#小説

Latter1「行方不明者」

次話 Latter2「亡霊を追って」

記録によれば、裏山の桜は、二百年前にはすでに枯れていて、緑の広葉樹が広がる山の中腹、花を咲かせることはおろか、葉をつけることさえもない。あの巨大な桜の枯れ木は、そこだけ山が死んだかのように、ぽっかりとした穴となって佇む。
村の人間たちは、朽ちることもなく「生き続ける」枯れ木を不吉だとして、その桜を切り倒す計画を立てた。
「お前も行くか」
ヨウエイに突然声をか

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Latter2 「亡霊を追って」

前話 Latter1「行方不明者」

もうそろそろ、1時間目の始まるころかな。朝ごはんも食べなかった。体内時計は狂ってた。
ソウシは、トヨマルの墓を掘りながら、初めてこいつを拾った日のことを思い出した。その日、この木の下に、この野良猫は、ちょこんと座った。ソウシは、自分と同じ黒い目をした猫と、しばし向き合った。あくびをするように、にゃあと小さく鳴くと、ソウシは、目を合わせたまま、静かに縁側に座った

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