料理はたのしい。家から締め出されたママの回鍋肉記念日!
「ママ出てって!」
そう言われてうちから徒歩1分のコーヒーチェーン店で熱りが冷めるのを待っている間にこの記事を書き始めた。
何がどうしてこうなった?!
遡ること40分前。
息子はピアノの練習をしていて同じところでつまづいていた。
次の音はこれだよ、と軽く鼻歌で教えた私。
これがいけなかった!
「なんでシー、って言うの?」
「何言ってるのかわからない」
次の音を示したかっただけだけど、そもそも、演奏中には他人の声が耳に入らなくなるのだった。
余計な雑音が入って怒り狂う息子。
そこまで怒ることかなあ…と思うものの時すでに遅し。
「家から出てって!」
前にもこんなことがあった。
がんばってやろうとしていて先回りして教えようとしたらひどく怒られたのだ。
また私は過ちを犯したようだ。
わからないままでは可哀想かなと思って答えを示して怒られるくらいなら、息子が苦労しわからず怒るのを見守るほうがよいのだろう。
家を出てしまうわけにいかない。
私は弟を保育園から連れて帰らないといけないと説明したら弟を連れて帰ることは納得してもらえた。
弟を連れて帰り、手を洗うと、息子はまだ怒っていた。
「出てって!靴履いて!」
なんとご丁寧にシンデレラを探すの如くに靴を履かさせてくれる。
かくして私は家を出されてしまったのだ。
家で唖然と取り残される夫にラインした。
「息子のほとぼりがさめたら教えて」
「キッチンにごはん、お味噌汁、回鍋肉、焼き魚、ロールキャベツがある。冷蔵庫にカブのサラダがあるから」
今日は夕方ミーティングがなかったから夜ご飯の支度ができたんだった。
ああ!料理は身を助ける。
料理を作っておいてよかった。
料理にはおもしろい物語がたくさんある。
今日は息子に締め出された回鍋肉記念日ということになる。
コーヒー店で冷たいドリンクをおいしくちびちびいただいてると、息子からメッセージを賜った。
「そろそろ帰ってきていいよ」
そうだ。ちょうど、ごはんの時間だ。
夫が痺れを切らして息子を説得したのか。
さらに電話がかかってきた。
「もう悪いことしなかったら帰ってきていいよ」
息子に帰宅を許可された。
ぼくもう悪いことしないからママ帰ってきて、と懇願されるのではなく、ママが悪いことしなかったら家に帰っていいってどゆこと?!
しかし、最近お疲れ気味の私。
少しの時間家を離れてひとりで過ごすたったの20分ほどで身が軽くなり、ほどよくリフレッシュした。
帰ったらごはんをよそい、味噌汁をよそい、あれこれ支度し、落ち着いて食べる暇もなく食後のとっ散らかったテーブルと床を片付ける自分の姿が浮かぶ。
慌しい夜の合戦が始まるのか。
でも、冷蔵庫やガス台に料理が待機しているとなればもう安心、大丈夫だ。
全てほっぽって、夜の街に1人繰り出したい気持ちも一方でむくむくと湧き上がる。外はちょうどあたたかくなり、涼やかな気持ちいい風がかけぬける。
けれど、初めて電話を通して聞いた息子の声がかわいすぎたので帰ることにした。
今日はママが息子に締め出された回鍋肉記念日に認定する。
次はもっとおしゃれで素敵な記念日にしたいな。
不思議なことに、その日に限ってなぜか空っぽになった子どもたちのお皿やお茶碗やお椀を見たら、家から締め出されたのに今日は良い一日だったと思う。
料理はたのしいな。
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