《詩》春のマスク
マスク着用が個人の判断に委ねられた初めての春
おずおずとマスクを顔から剥がし
春の粒子を直接吸い込むと
肺があわてて点滅し始める
まだ体は冬のままなのだ
思考も凍ったまま
春が顔にはりつく
春に晒された顔は
不安に歪み強張る
マスクを着けるべきか
外すべきか
春の空気にはどこにも書かれていない
手錠のように手首にマスクをくくりつけ
一体どこへ連行されるのだろう
行きつ戻りつする冬に
問いかけることも出来ない
マスクを着けても外しても
怯えたままだ
不安や不満をマスクでしっかり覆って育てたが
真珠にはならなかった
マスクを着けるべきか
外すべきか
鼻出しマスクか
顎マスクか
どうすべきか
春のなかで揺らめきながら
消え入りそうになりながら
体はふらふらと決めかねている
2023年の美しい日本の春