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高校野球と人権【読書感想】#理不尽な世界の人間達(その4)<王様のコントロール方法>#「見せしめ」と「吊し上げ」について

「干される」は投獄や死と同じ〈栄京学園の小倉捕手〉

あだち充『H2』14巻P141より抜粋

城山監督率いる栄京学園に小倉という捕手がいる。
強肩、好リードの名捕手で打者としても優れ下級生からの信頼も厚い。
しかし城山監督の度を超えた勝利至上主義に異を唱えたため、1年生からベンチ入りするも、一度も試合出場が無いという嫌がらせを受けている。

著書では「干される」は投獄と同じと説明している。
小倉捕手は「監督の意に沿わないとこうなる」という「見せしめ」として1年生から投獄されているのだ。

「見せしめ」は最大限の効果が発揮できる選手をターゲットにする。
実力はレギュラー以上、人格も申し分無くチームからの信頼が厚い選手に監督はマウンティングをかける。
そうやって監督の権力は絶対であることを選手に誇示するのだ。
著書では権力者は権力を行使して誇示しようとすると説明している。

類似した手法として「吊し上げ」という手法がある。
著書では2012年の「桜宮高校バスケット部主将が自殺した事件」を紹介して、体罰と人権について説明していた。

大勢の前で長時間立たせ大声で恫喝する。
場合によっては暴力も辞さない。
どう見ても理不尽な光景である。
これを「吊し上げ」と言う。

「吊し上げ」は1人の選手を大勢の前で激しく叱責することで、チーム全体を引き締める効果がある。
その恐怖により選手は無条件で服従するようになる。
無条件な服従は「煩わしい選手への説明」の手間が省ける。

この手法は選手を駒として捉える監督には大変都合の良いものである。
それと同時に「俺が野球部だ」と言う事実を確認できる方法でもある。
この旨味を知ってしまった監督はパワハラ問題で騒がれている現在でも変化することは出来ない。
そうなると監督は王様の立場を維持させる為に伝家の宝刀の「生殺与奪の権利」を使い出す。

次は監督の政権維持に必要な「お気に入り」について考える。

<続く>



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