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どうする団塊ジュニア世代(#11)<偉くない人が作る憲法>


introduction


敗戦後の第一次ベビーブームにより誕生した世代は「団塊世代」と呼ばれ、戦後日本の復興に大きな影響を与えました。

「団塊世代」は文化的、思想的な部分で共通しているという特徴を有しており、この特徴こそが戦後日本復興の大きな要因であると考えます。

私は戦後日本を早急に復興せさるため、何者かが恣意的に第一次ベビーブーマーを団塊化させたのではと推察します。

あくまで個人的な見解ですので、ホラ話と思って読んで下さい。


憲法は誰が作る

時は遡り1946年 日比谷図書館にて
(完全にフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係のあません)

MSK25最年少のシロータは今日も日比谷図書館にいる。
法律について全くの素人だった彼女だが、米森という初老の紳士に出会ったからというもの、すっかり法律の虜となっていた。

なぜならば、米森の話は刺激的で彼女の知識欲を満たすには余りあるものだったからだ。
そして何より易しくて面白い。
話は基本的に対話形式であり、それが彼女を飽きさせない理由である。

「お嬢さん、憲法って誰が作ると思う?」
話の始まりは、いつも突拍子ない。
「そりゃー もう偉い人でしょ」
シロータは当然とばかりに即答する。

想定通りの答えに紳士は、ほくそ笑む。
「じゃ、お嬢さんは偉いんだ」
孫ほどの年頃のシロータは手を振り
「全然、偉くないですけど」

米森は質問を重ねる。
「お嬢さんは誰に対して憲法を作っているの?」
彼女は戸惑いながら答える。
「んー 日本のためかな」
困惑しているシロータを確認して、米森は話を始めた。

アメリカという国

「お嬢さんは偉くは無いけど憲法を作っている。」
「実はアメリカの憲法もそうなんだ。」

少し驚いた様子でシロータは聞き返す。
「それで、よくアメリカの偉い人は黙っていますよね」
「日本では考えられない」

紳士は良い質問だと感心したように説明する。
「もともとアメリカには偉い人はいないんだよ」
「そもそも偉い人から逃れる為に出来た国なんだ」

シロータは信じない。
「大統領は偉いですよ」

そうきたか、と米森も譲らない。
「大統領は権力者の代表だから偉いんだ」
「そして大統領は生まれながらに大統領では無い」

なんだか、はぐらかされたようでシロータは面白くない。
「言ってる意味が全然分かんないんだけど・・」

不貞腐れるシロータを横目で見ながら米森はニコニコしている。
「すまなかったね。少し意地悪な言い方をしてしまった。」
「権力者というのは生まれながらに持っている権力」
「すなわち人権を持つ人間という意味だよ」
「大統領の子どもだからと言って、当然には大統領にはなれないってことを言いたかったんだ。」

シロータの表情が得意気な顔つきに変わり、相槌を打つ。
「つまり世襲制ではない」
紳士は出来の良い孫を見つめるような目で話を続ける。
「そのとおり」
「大統領には任期があり、必ず交代する期限付きの偉さなんだ」
だんだんとシロータの知識欲は止まらなくなる。
「じゃ、結局、アメリカの憲法って何なの?」

民定憲法

米森はそろそろ頃合いかなという表情になった。
いつもの答え合わせの時間だ。
「私が察するに、お嬢さん達が作ろうとしているのは民定憲法というものでは無いのかな?」

「ミンテイケンポウ?」
初めて聞く名称をシロータは聞き返す。
米森は話を続ける。
「民定憲法ってのは、国民が政治権力に対して守らせる約束事なんじゃ」
「言い換えれば国民の人権を政府から守るため、政治権力を縛るものだ」
出来るだけ分かり易く説明しようとしたが余計な心配だった。

ここまでくるとシロータの頭の回転は止まらない。
「大統領が国民をまとめるには大きな政治権力が必要だけど、その権力は国民との約束事の上に成り立っているんですね」

「そのとおり」
シロータの理解力には眼を見張る瞬間がある。

欽定憲法

勢い付いたシロータの質問は続く。
「じゃあ、大日本帝国憲法って、アメリカの憲法と違うの?」
想定内の展開に米森は上機嫌だ。
「逆だな」

「逆?」
答えの物足りなさに彼女は不満顔だ。

「政治権力が国民を縛る為に作った約束事」
米森は一拍置いて、更に続ける。
「欽定憲法というやつじゃ」

「キンテイケンポウ?」
シロータは復唱する。

米森は少し意地の悪い顔でシロータに言い聞かせる。
「日本には、未だ沢山の偉い人たちがいてね。その人たちが国民の人権を制限して縛り付けているんだよ」

刹那、シロータの顔つきが変わる。
「女性の権利もですか?」
米森は表情の変化に驚きつつ答える。
「そうだ」

「私、今回の憲法では女性の権利を確立させたいの」
彼女の言葉は力強い。

表情を崩さない彼女に米森は優しく語りかける。
「そうだな、その為には封建制度を無くさなくてはいけないな」

「ホウケン?」
聞き返すシロータに金田は答えようとするが思い止まる。
「君たちの仲間で加藤という日本人が封建制度について調べているはずだ。彼と話し合うがいい。」

シロータは米森と加藤は知り合いなのか?と疑問に感じるも、「ありがとう」と言い残し、彼がいる大日本生命館に走り出した。

結局

結局、第10回であれだけ反省したのに終始、小芝居風の物語となってしまいました。
この回では、なぜ素人同然のMSK25が新しい憲法を作る必要があるのかを民定憲法に触れながら説明しました。
次回はマッカーサー三原則の一つ「封建制度の廃止」について触れていきたいと思います。脱線ばかりですいません。
<続く>

次回はこちら


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