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イチロー臨時コーチの成果は如何に?#旭川東高校VS帯広大谷高校#高校野球地区予選アナリシス(分析)#第106回全国高校野球選手権大会#北北海道地区予選1回戦(令和6年7月15日第二試合)

イチローイズムを伝授された「知能」とセオリーに囚われない「才能」の対戦


「11対1」(7回コールド)

このスコアは令和6年7月15日に十勝の才能軍団:帯広大谷高校がイチローイズムを伝授された北海道屈指の知能:旭川東高校を破ったスコアである。

セオリーに囚われない「知能」と「才能」の雌雄を決する興味深いカードであったが、結果はワンサイドゲームとなってしまった。
それは何故か。

この要因を分析してみる(あくまで個人的な見解なので、あしからず)。

*イチロー氏との関わりが分かる『予想編』をまだ見ていない方はコチラから

「革命返し」(帯広大谷のスタメン)

①投手:背番号9(夏季大会初登板)
②捕手:背番号12
③一塁手:背番号14(夏季大会初スタメン)
④二塁手:背番号5
⑤三塁手:背番号3
⑥遊撃手:背番号4
⑦左翼手:背番号7
⑧中堅手:背番号8
⑨右翼手:背番号17

これは帯広大谷のスターティングメンバーである。
高校野球は守備位置と背番号が一致するのが普通だ。
大学野球の話では無い。

データ分析が長けているチームにとっては、今までの努力が水泡に帰するスタメンである。
トランプの大富豪で「革命」を起こす手札を用意していたのに、全て無にされた状態。
帯広大谷の一手目は「革命返し」による「知能封じ」である。

「選手層の厚さ」(帯広大谷の選手層)

笑い話だが全国制覇した大阪桐蔭の選手に「全国で二番目に強いチームは?」と質問したところ「大阪桐蔭のBチーム」と答えたという。
勿論、作り話の類だが、大阪桐蔭の選手層の厚さを物語っている。

帯広大谷のスタメンには驚きだが「奇策」では無い。
練習試合でも複数ポジションで使い回されることは日常茶飯事であり、それが複数人で行われる為、スコアを付ける相手チームは大変だ。
常日頃から訓練されているのだ。

なので急なポジションチェンジも他チームよりは無難にこなす。
それも個々の選手の才能の高さが成せる技だが、それにより選手層は掛け算になる。

これが相手のデータ分析対策に効果を発揮した。
見慣れぬ左投手に一安打で抑えられ、挙句に牽制にも刺されてしまう。
また、初スタメンの選手に三塁打含む四打数三安打と打ち込まれてしまい、背番号12番の捕手に盗塁を刺されてしまう。

データが無いから仕方ないと言えばそれまでだが、データが無い事が脅威になると言う事はデータ依存の弊害と言える。
また背番号二桁と言えども遜色無い才能を有しているのが帯広大谷の強み。
純粋な選手層も厚いのだ。

才能の壁(旭川東が見た壁)

一回表、旭川東の守備。
足の速い一番、二番は浅めの内野守備で上手く打ち取りデータ通りの滑り出し。
しかし続く三番は四球を許し、四番を迎える。

四番は十勝地区予選の代表決定戦では、プロ注目左腕から右中間に痛烈な三塁打を打っているので、右中間よりに深めのシフトをとる。

その刹那、目で追うのがやっとの打球が左中間を真っ二つに裂き、あっと言う間にフェンス到達。外野手としては本塁打も心が折れるが、打った瞬間100%取れない打球をフェンスまで取りに行くのも心が折れる。
続く五番がセンター前に打球を運ぶ。
センターが完璧なタイミングでバックホームするもクロスプレイさえも至らず楽々のホームイン。
あっという間に帯広大谷が二点先取した。

シフトの意味を無にするような、打球速度や走力。

それは旭川東が冬季間に鍛え目指していたもの。
自ら律して鍛えたからこそ分かる凄み。
「己が下手さを知りて一歩目」
その才能の壁を見せつけられた一回表である。

「間に合わなかった旭川東の覚醒」


「失策4」

これは帯広大谷高校の失策数である。
しかも全てが内野のゴロ捕球に関する失策であり、記録に付かないものも含めるとあと2、3個はあった。

タネ明かしとなる為、展望編では伏せたが帯広大谷は強い正面の内野ゴロに弱い。

度重なるコンバートで不慣れである要因は大きいが、鋭い打球を継続し続けると崩壊する恐れがある。そこが旭川東の勝機であった。
しかしながら旭川東は守備を崩壊させるだけの打球速度を持ち合わせて無かった。イチロー氏が来てから半年では下半身強化に至らなかったのだ。
甲子園へ1歩進んだが、3歩までは至らず、打線は「4安打、1得点」と成果を出せなかった。
基礎は半年程度では身に付かない。恐らく彼らは学業の実体験から痛感したのだと推測する。

「3年遅かったイチロー氏の来校」

2022年に旭川東が53年振りに決勝進出を果たした基礎的要因となったもの。
それは51年振りに旭川東に才能が集結したことである。
実績を残した強豪少年野球チームの主力数名が旭川東高校に進み、それに呼応するように他の才能たちも野球部に集結したという。
野球強豪校では信じ難いことだが、進学校では中学時代に活躍した選手が野球部に入らないケースが多い。
学業に専念したいという秀才ならではの超合理的理由であり、進学校あるあるである。

2022年の旭川東は「知能」を駆使して勝ち進んだが、それだけの素地があっての産物である。実際、イチロー氏が指導して結果を残した「智弁和歌山」「高松商業」「國學院久我山」は、プロを輩出するような素地が出来ている才能集団である。

「たられば」の話だがイチロー氏が2021年に旭川東に来ていれば、結果は大きく違っていたかもしれない。
しかし時計は逆には戻せない。

「セオリーの呪縛」(旭川東)

リアル「もしドラ」
私が2022年の旭川東に感じた印象である。
今回の旭川東ベンチを見たところ、その印象は払拭されていた。
「理系」といういうよりは「体育会系」という雰囲気で、怒鳴り声に近い指示が飛び交っていた。
指導体制や方針が変わったのだろうか?

2022年に私がテレビ越しに見た光景は、野球素人マネージャーとそれを許容できる指導者が作り出した偶然の産物だったのだろうか。はたまた私の勘違いか?

旭川東のダックアウトは「勝ちたい」という創造性より「負けたくない」という保守性が勝っていた。そこにはセオリーに囚われている秀才たちの姿があった。

「躍動する才能たち」(帯広大谷)


「14安打、10打点、三塁打1、二塁打3、残塁4」

4回からは十勝大会地区予選決勝で球場の雰囲気を掻っ攫った165センチの「小さな巨人」が登板し、旭川東の圧倒的ホーム感に風穴を開ける。

*「小さな巨人」についてはコチラ

帯広大谷は5回に3点、7回に6点を追加。
長短打にセーフティバントや盗塁などを織り交ぜ、旭川東がやりたかった事を帯広大谷が具現化する。
7回表、セカンド・ライト間にフラフラと上がったフライがグランドに落ち、運にも見放された瞬間、試合の趨勢は確かなものとなる。

「やられたらやり返す」

帯広大谷高校のリベンジは達成された。

アナリシス

現代の野球ではデータ分析は重要なファクターとなっているが、データが活かせない展開になった場合、大差がつく試合になる。
序盤は旭川東も守備シフトやエンドランなどを帯広大谷に対して仕掛けたが、才能のファンダメンタルの差により無効化される。
一方、帯広大谷は失策が続くも割り切った感が見受けられ大崩れすることは無く、経験値と戦略理解度の高さの差が出た。
「奇策」が日常の帯広大谷高校。
セオリーに囚われない才能集団が成せる業である。
旭川東はイチロー氏の来校以来、メディアにも取り上げられ相当のプレッシャーがあったのだろう。
秀才軍団と言ってもまだ十代の青年。
最後まで諦めず挑戦し続けた姿に敬意を表したい。

高野連北海道HPより抜粋

*十勝の才能軍団の結末はコチラ


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