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住宅ローンで煮詰まってしまったアナタへ#2<変動金利と固定金利の決め方って違うんです>



金利3兄弟

前回は「固定金利3年特約型」を選びたくなるように金融機関がパンフレットを作り込んでるから。という話をしました。
*前回の内容についてはコチラ。

そこで「特別金利」「標準金利」「優遇金利」という様々な金利を登場させて訳を分からなくさせると説明しましたが、本当に訳が分からなくなったアナタ。
まず、「特別金利」「標準金利」「優遇金利」の金利3兄弟について、分かり易く説明しますね。

基準金利・・・基本となる金利
優遇金利・・・基本となる金利の値引後金利
特別金利・・・最初だけの金利(あくまで特別)

住宅ローンの金利と言えば「標準金利」です。
しかし金融機関は、この標準金利を中々、表に出しません。
現在の3年固定特約の標準金利は大体3.5%前後です。
しかし印象として「3.5%なら高いな」と感じますよね。

そこで「優遇金利」の登場です。
標準金利3.5%では高いから、1.5%値引しますよ。
その値引後金利2.0%が「優遇金利」と言われるものです。
それなら最初から「優遇金利」を「標準金利」にすれば?
そう思いますよね。
ところがどっこい。
簡単にそうはいかないのが住宅ローン金利の奥深さです。

その答えは、続いて説明する「特別金利」との関係性にあります。
「特別金利」は言葉の通りスペシャルな金利です。
2023シーズン、阪神タイガースが38年振りに優勝を果たしましたね。
そこでauじぶん銀行は38年振りの優勝を記念して定期預金3.8%のキャンペーンを実施しました。

*『auじぶん銀行』HPより抜粋してます。

そのパンプレットには「特別金利 年3.8%」と記載されてます。年3.8%に目を奪われがちですが、その横にしっかりと「1ヶ月もの」と記載されています。
非常に分かりにくい記載ですが、結局こうなります。

50万円を預けたとして
500,000円✖️3.8%🟰19,000円(年利)
だたし1ヶ月ものなので
19,000円➗12ヶ月🟰1,583円
そこから税金が引かれるので実際は1,258円

この定期預金の特別金利が適用されるのは1ヶ月だけです。
だから「特別金利」なのです。
住宅ローンの「特別金利」も、これと同じです。最初の3年間は1.05%でも、その後は全く関係の無い金利となってしまいます。

では3年後はどうなるかと言うと

借入時点:標準金利3.5%
     優遇金利2.0%(標準金利➖1.5%)
     特別金利1.05%
     *借入時点は特別金利1.05%が適用されます。
3年後 :標準金利4.5%     
     優遇金利3.0%(標準金利➖1.5%)     
     特別金利 無し    
     *3年後は優遇金利3.0%が適用されます。

3年後は1.05%から3.0%になってしまいます。
優遇金利でお得感を強調(優遇金利の役割)していますが、金利が3倍近く上がってしまいビックリですね。
それはもちろんだとは思いますが、もう一箇所気になる点がありますよ。
目ざといアナタなら気づいたはずです。

そう、「標準金利」が変動していますね。
そうなんです。
「標準金利」は、その時々で変化するのです。
なので、借入した時点の「標準金利」が3.5%だったとしても、特約期間が終了する3年後の「標準金利」が5.0%になっている可能性もあります。
これって何かに似てません?

3年ものの定期預金と同じ仕組みです。

「阪神優勝記念定期預金のパンフレット」と「住宅ローンのパンフレット」を見比べてください。「特別金利」が引き立って見えると思います。
そして「住宅ローンのパンフレット」を今一度見てください「基準金利」「優遇金利」「特別金利」がしっかり表示されてますよね。
諸々の関係上、パンプレットを掲載できず御免なさい。
しかし住宅ローンで煮詰まっているアナタは、既にパンフレットを手に入れているハズです。
そちらをご覧ください。

先ほど、「標準金利」は、その時々で変化すると説明しました。
多分、アナタは「標準金利の変化」が気になっていると思います。
なので次にその点について説明します。

「標準金利」の決まり方

「標準金利」はどのように決まるのでしょうか?
金融機関の気まぐれや都合で勝手に決められたら、たまったものではありません。
心配ご無用。
それなりのルールがあります。

固定金利特約の「標準金利」は、長期金利に連動して変動します。
長期金利?
いきなり難しいなと思いましたか?、
ならば、言い換えれば、
債権市場のうち「日本10年債権利回り」に連動します。
もっと難しい。いい加減にして欲しい。
と思いましたか?

そうなんです。
「標準金利」の決まり方は難しいのです。
それがわかれば十分です。
アナタが金利を決める訳では無いので決まり方を覚えたとしても、あまり意味がありません。
ですからコレだけ覚えておけば大丈夫です。

固定金利特約の「標準金利」は変動しがち。

「日本10年債権」はいわゆる「国債」です。
「国債」は売る人が多ければ金利が上がり、買う人が多ければ金利は下がります。
売買する人は不特定多数なのでコントロールすることは困難です。
「債権市場」と言われる所以です。
また、金利が上がると不景気になり、金利が下がると好景気になるという特性もあります。
そこで不景気が続いていた日本を好景気にするため、日本銀行は金利が上がらない様に頑張りました。

何をしたかって?
「国債」が売られたら、売られた分だけ日銀が買い取ったのです。
そして日銀は市場にこう知らしめます。
「日銀が国債金利が0.5%になる様に買い支えるから、売っても無駄だと」
そんなこんなで日銀がコントロール(誘導目標金利)してきましたが、市場は日銀の思い通りにはいきません。
なので変動するのです。

実際に2008年に3.4%程度だった3年固定特約の「標準金利」は、2018年の2.5%を底に乱高下しており、最近では3.2%程度となっています。
日銀が誘導目標金利を上げてきているので、今後は更に上昇する可能性があります。

先ほどから固定金利特約の「標準金利」は変動しがちと、繰り返し説明してきたことにお気付きでしょうか?

実は変動していない「標準金利」もあるよ。
ということを説明するための前振りだったのです。
では変動していない「標準金利」について説明しますね。

変動しない変動金利

住宅ローン商品には、先ほどから説明している「固定金利特約商品」の他に、「変動金利商品」というものがあります。

この「変動金利商品」。
「標準金利」の決まり方が違うんです。

変動金利の「標準金利」は短期金利に連動しています。
短期金利?
また始まったか、難しいんだよ。と思いましたよね。
言い換えれば、
短期金融市場のうち「無担保コール翌日物金利」に連動します。
もう、そういうのいいから。
その通りです。

コール市場は金融機関同士でお金などを貸し借りする市場です。
まったく分からん。当然そう思いますよね。
「おーい」と呼びかけたら直ぐにお金を借りられて、翌日には直ぐ返すみたいな超短い貸し借りだから短期金利なんだな程度の理解で十分です。

で、何?
となりますよね。

ここで言いたいことは
「短期金利は簡単に変動しにくい」
ということです。

なんで?
先ほど説明した呪文みたいな言葉
「無担保コール翌日物金利」
これは今の政策金利としての意味合いがあります。
つまり日銀が決めることが出来るのです。
先ほど「長期金利」は市場が相手なので、コントロールが難しいと説明しましたが、「短期金利」はコントロール可能です。
2001年から「無担保コール翌日物金利」はマイナス推移してます。
一度は耳にしたことがあると思います。
「ゼロ金利」というやつです。
マイナスのうちは金利は変動しません。
実際、住宅ローン変動商品の「基準金利」は2009年から2.675%のまま現在まで、ビターっと不動です。
つまり14年間、変動金利の「基準金利」は変動していないのです。
乱高下している固定金利特約とは大違いです。

あくまで現時点でのお話にはありますが
「変動しない変動金利、変動激しい固定金利特約」
ということが言えます。

それでは変動金利が変動するときは、どのような時か気になりますよね。
それは住宅取得に対する考え方と大きく関わりがあります。
すっかり長くなったので、それについては次回に説明します。
不定期に更新しますので次回をお楽しみに。
<続く>






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