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大企業でDX人材が育たないのは「金があるので作らなくていいから」な件

はじめに

筆者は生命保険会社のCDOとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。

多くの事業会社からDX人材育成の方法や進め方、社内の巻き込み方を聞かれることが多く、その中で多いのは「DX人材育成が上手くいかない。どうしたら良いかわからない。教えて欲しい。」ということだ。

何をやってるかと聞くと「海外製の教育デジタルプラットフォーム」で社員何千人の履修でデジタルバッジを付与し名刺に印刷させているという。これが何百社もそういう状態である。これでは自社のDX人材を育てているのではなく、海外の教育プラットフォーマーのデジタル人材を育てることに貢献しているという皮肉である。

イーラーニングだけでは不十分

はっきり言うが最初からイーラーニングをやっても人は育たない。人を育てるのなら商品やサービスを作る方が良い。なぜなら、作る過程でわからないことだらけになって必死に学ぶからだ。人は分からないと不安なので勉強して理解して不安を解消したくなる。これが学習動機である。動機がなければ勉強はしないのは当たり前のことだ。多くの人は試験があるから、良い点を取りたいから勉強するのだ。

DX人材を育てる方法

ではどうしたらDX人材は育つのか。有効だと思う方法は「価値ある商品やサービスを作る」ことだ。これはオススメだ。筆者も住友生命も金融IT協会(筆者が理事を務める金融機関向けデジタル教育をミッションとする協会)もそうしている。自分で作ることこそ重要なのだ。

しかし大企業には金がある。だから買ってしまうので作らない。金がないと自分で作らないといけないから作る。作る過程でスキルがつく。これが大事なのだ。DXもそうだし生成AIも同じだ。先ほどの教育プラットフォームであれば海外のものを金を出して使うのではなく、自社や自分で作れば良い。

もちろん全部を作る必要はない。コンテンツを作れば良いのだ。非競争領域は安いものを使えば良い。価値の部分の料金が高いところを内製すれば良く、これを外販すれば良い。Amazonと同じ理屈だ。

Amazonは内製後外販して投資回収するモデルだ。もちろん最初からその発想はなかったかもしれないが、後付けでそうなっている。極めて合理的なビジネスモデルである。

住友生命では教育プラットフォームは自社で内製している。イーラーニングもバッジもワークショップも内製して社内で使うことはもちろん、社外に外販している。また教育コンテンツのデジタルマーケティングも内製している。

お金がかからないだけでなく、他社からも感謝され受注は好調でAIもたくさん使って海外にも展開したいと思っている。

実践の重要性

このようにDX人材が育たない理由は明白である。やらせてないからだ。小さいことでも良い。デジタルを使って何かをやらせてつかむ。それが一番の方法なのだ。DXを推進するには、まず社内でデジタルを活用した商品やサービスの開発に取り組むことが重要だ。

その過程で、社員はデジタル技術に触れ、学習意欲が高まる。また、自社で開発したプラットフォームやコンテンツを外販することで、他社からの評価も得られ、さらなる改善につながる。

大企業のDXの可能性

大企業には、DXを推進するための資源や人材が豊富にある。しかし、それを十分に活用できていないケースが多い。海外の教育プラットフォームに頼るのではなく、自社で内製化することで、コストを抑えつつ、自社に最適化されたDX人材育成が可能になる。また、AIなどの最新技術を積極的に取り入れることで、さらなる効率化や高度化が期待できる。

DXを推進するには、経営層から現場まで、社内の巻き込みが欠かせない。トップダウンでDXの方針を示すだけでなく、現場の声を拾い上げ、実践的な取り組みを後押しすることが重要だ。また、社内の成功事例を共有し、DXの効果を可視化することで、社員のモチベーションを高めることができるのだ。

まとめ

DX人材を育成するには、イーラーニングだけでは不十分であり、実践的な取り組みが欠かせない。大企業には、DXを推進するための資源や人材が豊富にあるが、それを十分に活用できていないケースが多い。

自社で内製化し、AIなどの最新技術を積極的に取り入れることで、効果的なDX人材育成が可能になる。また、社内の巻き込みを図り、成功事例を共有することで、DXの推進力を高めることができる。大企業がDXの可能性を認識し、実践的な取り組みを進めることで、日本全体のDXの加速につながるだろう。

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