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DX担当部署に異動したら最初にすべきことは4つの確認。全部低かったら自社ではDXは無理なので社外の成功者を招聘するように動くべき件

はじめに

筆者は生命保険会社のデジタル共創オフィサーとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。その関係でDXやビジネス、人材育成、地域活性化について相談を受けることも多い。

「DX担当組織への異動」は本人にとって大ごとである。新しいことや理不尽なことの連続で、今まで通りにいかないことが多いからだ。DX担当部署への異動は、自ら希望したかどうかに関わらず、大きなチャンスであると同時に、多くの課題に直面することになるだろう。

そこで知っておいて欲しいのは、DXの4つの要素からなる成功法則である。4つの要素を適切に評価し、必要な施策を実行していくことが求められる。今回は、DX担当部署に異動した際に、最初に確認すべき4つの要素について解説し、それぞれを高めるための施策について、社外の事例を交えて紹介していく。

DX成功の4つの要素

DX担当部署に異動したら最初にすべきなのは以下の要素の確認だ。

①DXの目的の明確性の高さ
②経営トップの意欲の高さ
③組織の適切性の高さ
④社員の能力の高さ


DXの成功は、これらの4要素の掛け算で決まる。一つでも0だと全部0。逆に、各要素が高いレベルで揃っていれば、DXは大きな成果を生み出すことができる。しかし現実には、これらの要素が全て高いレベルで揃っている企業は少ない。特に、DXへの取り組みが遅れている企業では、これらの要素が全て低いレベルにあるケースが多い。そのような場合、自社単独でのDXの実現は難しいかもしれない。早めに見切りをつけて社外のDX成功企業から人材を招聘するなど、外部の力を借りながらDXを推進していくことが求められる。

①DXでやることの明確性

DXの取り組みを成功させるためには、まず何をやるべきかを明確にすることが重要だ。漠然とした目標では、組織を動かすことは難しい。具体的な目標を設定し、それに向けてのロードマップを描くことが必要となる。

DXでやるべきことを明確にするためには、自社の現状を正しく把握することが欠かせない。自社のビジネスモデルや、競合との差別化ポイント、顧客のニーズなどを深く理解することが重要だ。その上で、DXによってどのような価値を生み出すのか、どのようなビジネスモデルを目指すのかを明確にしていく。

DXでやるべきことを明確にするためには、社外の事例を参考にすることも有効だ。他社がどのようなDXの取り組みを進めているのか、どのような成果を上げているのかを知ることで、自社の目指すべき方向性が見えてくる。

ある大手家電メーカーでは、DXの目的を「顧客体験の向上」と明確に定義し、その実現に向けて、データ活用基盤の構築や、AIを活用した新サービスの開発など、具体的な施策を進めている。DXの目的を明確にすることで、社内の意識統一を図り、スピード感を持って取り組みを進めることができている。

②経営トップの意欲の高さ

DXの成功には、経営トップの強いコミットメントが不可欠だ。トップが本気でDXに取り組む姿勢を示さなければ、組織全体の意識を変えることは難しい。トップの意欲を高めるためには、DXの意義や効果を明確に示し、理解を得ることが重要となる。

経営トップの意欲を高めるためには、DXがもたらす価値を定量的に示すことが効果的だ。例えば、DXによって客の増加や売上拡大がどの程度見込めるのか、具体的な数字を示すことで、トップの理解を得やすくなる。トップ自らがDXの推進役となることも重要だ。トップが率先してDXに取り組む姿勢を示すことで、組織全体の意識が変わっていく。

ある保険会社では、経営トップ自らがDXの推進役となり、全社的なデジタル化を進めている。トップの強いリーダーシップのもと、行内の意識改革が進み、新たなデジタルサービスの開発や、業務プロセスの効率化が実現している。

③組織の適切性を高める

DXを進めるためには、適切な組織体制の構築が欠かせない。従来の縦割りの組織では、スピード感を持ってDXを進めることは難しいので柔軟で機動的な組織づくりが求められる。DXに適した組織体制を構築するためには、以下のような点に留意する必要がある。

・全社横断的な体制を構築する
・アジャイルな開発体制を整える
・外部の知見を取り入れる
・意思決定のスピードを上げる


特に、全社横断的な体制の構築は重要だ。DXは、特定の部署だけの取り組みでは限界がある。全社を巻き込んだ取り組みとして進めていく必要がある。そのためには、各部門の壁を越えた連携が欠かせない。

④社員の能力を高める

DXの推進には、高度なデジタルスキルを持った人材が不可欠だ。社内の人材育成に力を入れると同時に、外部からの人材獲得も積極的に進めていく必要がある。社員のデジタルスキルを高めるためには、以下のような取り組みが有効だ。

・全社的なデジタル人材育成プログラムの展開
・外部研修の活用
・デジタル人材の中途採用
・デジタル人材の社内での育成と登用


デジタル人材の育成は、一朝一夕にはできない。長期的な視点を持って、継続的に取り組んでいくことが重要だ。ある大手製造業では、全社員を対象としたデジタル人材育成プログラムを展開している。基礎的なITスキルから、AI・データ分析などの先端技術まで、体系的な教育を行うことで、社員のデジタル化対応力を高めている。同社では、デジタル人材の育成が、DXの推進力になっている。

社外の成功事例を参考にする

他社のDX成功事例から学ぶことが重要だ。業界の垣根を越えて、先進的な取り組みを進める企業から学ぶことで、自社のDXを加速させることができる。他社の事例を参考にする際には、単に表面的な取り組みを真似るのではなく、その背景にある考え方や、成功のポイントを深く理解することが重要だ。他社の事例を自社の文脈に落とし込み、自社なりのDXの在り方を見出していく必要がある。

まとめ

DX担当部署への異動は、大きなチャンスであると同時に、多くの課題が待ち受けている。DXの成功には、

①DXの目的の明確性の高さ
②経営トップの意欲の高さ
③組織の適切性の高さ
④社員の能力の高さ


が重要な要素となる。DXの実現は、企業の未来を大きく左右する。DX担当者は、重要な役割が託されているので4つの要素を高めるための施策を実行し、自社のDXを成功に導くことが必要である。

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