生成AIとアプリ作成ローコードSaasツールとコミュニティが「やや大きくなったアプリ受託スタートアップ」には辛い件
はじめに
筆者は生命保険会社のデジタル共創オフィサーとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。
その関係で年間何回もエグゼクティブセミナーなどで講演を聞いたり、スタートアップと膨大な面談をしたり、事業会社のDX責任者から悩みを聞く。①事業会社の願望や悩み、②スタートアップの営業担当の焦りや叫び、③外資の巨大アプリ作成ローコードSaasツール提供プラットフォーマーの製品紹介などを聞いて感じるのは
①事業会社の内製願望とローコードツールでの内製化の流れ
②外資巨大ローコードツール提供プラットフォーマーのますますの繁栄(悔しいが)
である。生成AIの登場と進化でその流れはますます進むと感じる。
そこで辛くなるのは「やや大きくなったアプリ受託スタートアップ企業」である。彼らは事業会社向けに顧客向けアプリなど(事業会社やシステム子会社がめっぽう弱い)「今どきのシステム」を事業会社から受託開発したり部分的なSaasを提供してきたが、外資の巨大アプリ作成ローコードSaasツール提供プラットフォーマーの営業話法
「何でも使えます。ツールはまとめましょう。コミュニティ運営もサポートします」
で事業会社はローコードツールをまとめる動きが出る。すると個別のアプリ開発委託が少なくなってくる。この流れはやや大きくなってコストが高くなった中堅スタートアップには辛いだろう。
ローコードツールプラットフォーマー
外資の巨大アプリ作成ローコードSaasツール提供プラットフォーマーは、事業会社に対して「何でも使えるツール」と「コミュニティ運営のサポート」を提供している。これにより、事業会社はローコードツールを一元管理し、アプリ開発を内製化する動きが加速する。
この流れは、やや大きくなったアプリ受託スタートアップにとって脅威だ。これまでは事業会社からの個別のアプリ開発委託が収益源だったが、ローコードツールの普及により、その需要が減少するからだ。
生成AIの進化がもたらす影響
また生成AIがこの流れを加速させる。生成AIの進化により、システム開発は個人でも可能になりつつある。これは、アプリ受託スタートアップにとってさらなる脅威となる。従来は、システム開発には専門的な知識と技術が必要であり、事業会社はアプリ受託スタートアップに開発を委託するのが一般的だった。
しかし、生成AIの登場により、社員個人でもシステム開発ができるようになってきた。これにより、事業会社は社員に開発をさせることができるようになり、中間業者であるアプリ受託スタートアップは中抜きされる可能性が高くなっている。社員の中からイノベーションに向く人材を発掘してデジタルビジネス人材として鍛えれば、もうコンサルタントも委託業者も不要だ。これが事業会社の立場としての筆者の野望である。
中堅スタートアップの課題と対策
やや大きくなり、コストが高くなった中堅スタートアップがこれらの脅威に対抗するためには、中堅スタートアップは対策を講じる必要があるだろう。
1. 差別化の強化
単なるアプリ開発だけでなく、事業会社の課題解決に貢献できる付加価値の高いサービスを提供する。
2. 専門性の追求
特定の業界や領域に特化し、その分野での専門性を高める。
3. パートナーシップの構築
外資の巨大アプリ作成ローコードSaasツール提供プラットフォーマーとのパートナーシップを構築し、共存共栄を図る。
4. 人材育成
生成AIを活用できる人材を育成し、AIを活用したサービス提供に注力する。
まとめ
生成AIとアプリ作成ローコードSaasツールの普及により、やや大きくなったアプリ受託スタートアップは大きな脅威に直面している。事業会社の内製化の流れと個人でのシステム開発の可能性が高まることで、従来のビジネスモデルは大きく変化せざるを得ない。
中堅スタートアップがこの脅威に対抗するためには、差別化の強化、専門性の追求、パートナーシップの構築、人材育成などの対策が必要である。これらの対策を講じることで、生成AIとローコードツールの時代においても、中堅スタートアップは生き残り、成長し続けることができるだろう。
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