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知らないおばあちゃんにギャップ萌えを食らった


今朝は早起きできたから、春が終わる前にと賀茂川の河川敷を散歩した。
夜型の私にしてはあまりにもらしくないことをしたもんだ。
早く起きただけでも珍しいのに、まさか朝から川沿いでギャップ萌えまで食らうなんて思ってもなかった。

朝の賀茂川には、ランニングをしたりベンチに座って読書をしたりしている人がたくさん。
朝の河川敷ってこういう世界なんだなぁなんて思いながらてくてく歩いていたら、右肩に気配を感じた。
振り返る前に、私の真横を自転車がのんびり通り過ぎる。
横目でちらりと見たその人は、麦わら帽子を頭に乗せた小柄なおばあちゃんだった。

その彼女が私を追い抜いて、こじんまりした背中をこちら見せたときの違和感たるや。
その身を包むウィンドブレーカーの背中に、教科書体のような力強い字体ででかでかと

『賀茂競馬』

と書かれていた。
一瞬で彼女のトリコになった。
こうやって文字にしてみたら何だそんなことかとくだらなく思えてしまうのも無理はない。

しかし、現実にその四文字は強烈な存在感を放ちながら私の目に飛び込んできたのだ。
別に競馬がどうとかそういう話では一切ない。

麦わら帽子を被り、少しガニ股でのんびりと自転車を漕ぐおばあちゃんがその背中に「賀茂競馬」という四文字を背負っているというギャップ。

もっと言えば、爽やかな朝日と流れゆく水の音、春らしい緑に包まれて真っ直ぐに伸びる賀茂川とそれらを思い思いに楽しむ朝の住人たちが構成するこの空間に、四文字はこれでもかというほど馴染めていなかった。もはや力強い字体の場違い感に切なささえ抱いてしまう。

颯爽とした「意外」は上手く操れば強力な武器になる。
こんな取るに足らない今朝の出来事を、21時まで覚えていて文章にせずにはいられないほどの印象深さだったのだ。

これから何かを作るとき。何かを生み出したいとき。
離れた場所にある要素たちを引っ張ってきて近づける、という一つの引き出しを持っておこう。
この引き出しを使えば、自分の短所も長所になり得るかもしれない。

おばあちゃん、一本取られました。
早起きなんてらしくないことも、たまにはしてみるものですね。

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