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子どもたちの変化を考える その3

子どもたちの変化を考える その1|Kosuke Inudo (note.com)

子どもたちの変化を考える その2|Kosuke Inudo (note.com)

その2で書いた世代の少し後、2010年~12年の生徒についてこちらでは書いていくことにする。全て中学世代のエピソードである。

Fくん。オシャレで色気のある少年だった。勉強は嫌いだが話す内容は大人びていた。押さえつけられることが嫌いで教師や親とよくぶつかっていた。部活も顧問とぶつかったようであまり行っていなかった。家出をして教室に泊まったことも何度かある。そんな時は流しで髪を洗ってカバンから整髪料を取り出してセットしてから学校に行っていた。20年代の子との大きな違いは「真面目に部活やる奴は立派だわ」とか「そりゃ俺みたいな態度だったら親や教師はキレるの当たり前、でも俺も抑えられないんすよね。よく自分が分からないんですけど」などの発言にある。どこか危うい彼は近い世代の女子に人気があった。そんな異性に優しく振舞うが一線より中に入れない姿勢もまた見事だった。高校卒業後に専門学校から美容師になり、代官山のサロンで働いていると聞いたのが7年前。

Gさん。ここまで書いたAくん~Fくんまでの6人と比べると、成績的には格段に上だった生徒。クラス委員や部活のキャプテンも務めていた。ここまで書くと真面目な中学生のテンプレだが、性というか異性に奔放だった。私に倒錯した性行為の相談をしてくることが多く正直最初は困惑した。一度授業に少し遅れてきて「彼氏の家から来たんですけど、中に出されました!」と怒り叫びながら教室に入ってきたので、トイレに行って処置をしたり気持ちを落ち着けたりするように指示したことがあった。この時の教室の生徒の雰囲気が強烈で、あまり驚いた感じがなく淡々としていた。「後で話をちゃんと聞くわ」と話す親友の姿もあった。あの反応は学校で似たような場面を経験しているからであろう。「その1」で書いた「本校が田舎っぽい」と書いた理由の一端である。彼女は大学以降何度か留学して今は欧州に住んでいる。ポカホンタス系の見た目でPUBでお酒を楽しむ様子が時々インスタに上がる。

Gさんの世代は生徒が多かった。彼女のような奔放な子からオタク気質の子まで様々な生徒が揃っていた。オタクの子に向けられる視線はまだ冷たいものがあった。「排除する雰囲気」は無かったが、どこか下に見る空気はまだあったように思う。Fくんのヤンキー気質といい、オタク蔑視の空気といい、そんな価値観が残る最後の世代という感覚がある。

こんなに風紀が乱れているのにもかかわらず、本校の地域と比べると学力レベルは圧倒的に上だった。その1で出てきたA中で5番(150人)だった生徒と、Fくんの世代で50番(130人)だった生徒が同学年で同じ公立高校に進学した。高1の定期テストや模試では後者の生徒の方が常に上の成績だった。「荒れている=学校のレベルが低い」が全く当てはまらないことに気付き始めていた。

「その1」で書いたように私は2011年の6月に独立して自分の教室を出した。立地はここまでの話で出てきた校舎からそれぞれ10㎞程度離れた場所である。ただ鉄道路線が異なるので生活圏が違う場所だった。開校して半年くらいで気が付いた。地域の中学校の雰囲気が本校のA中学校に近いことを。「悪い」と噂されている子でも「反抗が少しきつい」くらいの感覚だった。そしてトップ層と言われている生徒たちでも県模試の偏差値が60程度だった。不思議なくらい「学力レベル高い中学⇔精神年齢高めの生徒が多い⇔学校が荒れている」の図式が当てはまった。これは様々な所で言われる情報とは全く違うものであった。

最後にこの頃の世代で印象深い話を一つ。2011年3月の公立高校入試の時期の話である(まさに東日本大震災の時のこと)。本校の受験生で風邪が流行った。そして受験の日に3人の塾生が高熱を出して、休んだり別室で受験したりすることになった。その3人が偏差値が低い方からの3人と一致した。「『バカは風邪ひかない』が定説だったけど、どうも違って戸惑ってしまうな。『バカは肝心な時に風邪をひくだな』」と本校の教室長が話して皆が苦笑いした。「勉強が苦手な生徒は体が頑丈なことが武器にならないといけないんだけどな」に皆がうんうんと頷いた。
この感覚どうだろう?現代の子ども周りの職に就いている方の多くが思うはずである。「できない子は体が弱い。とにかくよく休む」これが暗黙の了解になっている。そういえば「バカは風邪ひかない」のフレーズが死語になったような気がする。この10年で聞くことはめっきり減った。

次回は「その4」ではなく、ここまでの総括をしようと思う。ここまで出てきた教え子たちは現在26~31歳くらいである。彼らの世代の動向をまとめる内容とする。

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