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二度目の FIRST LOVE。

僕は君に恋をした。二度目の初恋。そんな気分だった。何者でもない僕がその瞬間だけ主人公になった気がした。「あっ、あっ、は、早見さんっ!」
早見さんが振り返る。
「ん?何?」
「あ、あの宿題、やりました?」
「あ、やってないや。見せてくんない?」
「は、はい!」
潤いのある皮膚、つやつやの髪、キラキラとした眼。ネオンより光り輝く爪。少し丸まった、小動物みを帯びた字。そのどれをとっても美しかった。
「ありがとー!〇〇君、優しいし彼女いそうだよねー。なんちゃって笑」
「い、いや。そんな。」
貴方が好きです。とは言えない。
「写させてくれたお礼に帰りなんか奢るよ」
 「あっ、えっ、あ、あ、はぁい」
意外な言葉がきて焦った。
ど、どうしよう。なにか笑いのネタでも持ってくのか?そんなことを考えていたらいつの間にかお昼になった。
「ねぇねぇ、学食奢りは?」
早見さんだった。突然の訪問で心臓のBPMは190になっていたと思う。ドキドキで寿命が少し縮み、早見さんの尊さで少し伸びた気がする。
「ねぇねぇ、きいとんのカー」
「は、はい!あ、でも学食は自分で選ぶから…」
普段ならきっと応じていた。まぁ普段奢られることもないけど。なんていうか、ここだと冷静で居てしまう気がした。二人だけの空間で恋を味わいたいと欲張った。浮かれ気分で授業を終え、放課後。
「じゃ、行こっか。」
「ど、どこなんですか」
「ラブホ♡」
「あ、えっ、えっ、?」
「嘘に決まってんじゃん笑」
その時の早見さんはいつもとは違う、
少し薄汚れた目をしているように思えた。
普通なら、引くのが正解かもしれない。
清楚で、おしとやかで、優しくて。そんな早見さんからの攻めた発言。僕はその「闇」に触れたくなった。
適当な会話をする。
「今日の朝ごはんはなんでした?」
「あ、あの、好きなゲームとか」
「夢とかあるんですか」
やっぱり、フリートークは苦手だ。
「ついたー!一緒にパフェ食べよっか!」
「は、はい」
小さなスプーンで食べるといつもより贅沢に感じる。
「あーん。私、ブルーベリー嫌いなんだよね。」
間接キスだ。柄にもなく浮かれ気分になる。
こんなに綺麗で僕みたいなものにも優しくしてくれる早見さんはきっとモテるはずだ。
「あ、あの。早見さんって彼氏さんって」
「やめて。」
冷たい音だった。聞いたことのない、音色だった。
「す、すいません」
「ごめん。」
早見さんの闇は、一歩踏み込んだら落ちてしまいそうになる。
「こ、この苺美味しいですね」
「うん。着いてきてくれてありがと」
気がつけば時計が進んでいる。
夢を見ていたようだ。
「あのー、さ。」
「は、はい」 
「私ね、初恋の人に捨てたれたんだ。ヤるだけヤってポイってさ。私は彼氏だと思ってたのになぁ。信じてたのに。なんでそうなったんだろう。私ってそんなにダメなのかな。どうしたらよかったっていうの」
早見ダムが壊れた。もう止まらない。
それを見た僕は、最高に興奮した。体がゾクゾクしている。自分でも驚いている。もう今すぐにでも早見さんをめちゃくちゃにしたい。
「僕は君に恋をした。」
「早見さん、君が欲しい。」
「早見さん、愛してるよ。」
「早見さん、今すぐ」
「早見さん、楽しめるよ」
「早見さん、早見さん、早見さん、早見さん、」
ドスッ。鈍い音が響く。ベットから落ちた。
「あ、そっか笑。俺、外出れないんだった笑」
「おい!囚人番号37564静かにしろ!」
「アハハハハ」
「おい!囚人番号37564静かにしろ!」
「大好きだよ、早見さ〜ん笑
久しぶりに会いに行こうかな。アハハハハ。」

二週間後、その死刑囚は自殺を計った。


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