⑧ ―1中世に栄えた港町 ベルゲン

ベルゲンはフィヨルド観光の玄関口で、中世にはハンザ都市として栄えた港町だった。
「山の牧場」という意味を持つベルゲンは、北欧有数の海洋都市で、
ノルウェー第2の街にして最大の港湾都市だ。
7つの山に囲まれるベルゲンは坂が多く、湾を山に挟まれて、細長く街を形づくっていた。
12~13世紀はノルウェーの首都であり、19世紀までは北欧最大の街であったベルゲンの繁栄は、
おもに干ダラの売買によって、築かれた。
当時、北ノルウェー産の干ダラの取引を一手に握っていたのが、
ベルゲンに住むドイツのハンザ商人たちだった。
このハンザ商人たちの隆盛は16世紀半ばまで続き、三角屋根の木造家屋が並ぶブリッゲンは、
まるで映画のセットのように残っており、ユネスコ世界遺産となっている。

ベルゲンには独自の雰囲気があり、内気な人の多いノルウェーにあって、
ベルゲンの人々は明るく開放的で、進取の気性に富んでいるといわれている。

ノールハイムスンから、バスでベルゲンに向かった。
北欧はほとんどが、カード払いだった。
北欧はユーロ圏でなく、国境を越えると各国の紙幣が必要だったので、
ほとんどをカード支払いに頼った。
現金は、土産やこずかい分しか保持していなかった。
だがB&Bは、現金のみの支払いだった。
慌てて3人分の現金を集めて、なんとか払うことができた。
長距離バスはカードで大丈夫だったが、ローカル線は現金払いだった。
B&Bからのバス停からのバス代は、なんとか足りた。
3人で胸をなでおろした。
ベルゲンに到着後は、真っ先に両替の予定をしていた。
 
ここからベルゲンまでも、バスに乗った。
このバスは長距離だから、カードで大丈夫のはずだった。
バスに乗り込み、カードを出すと、現金のみだと言われた。
急いで3人のお金を集めてみたが、やはり足りなかった。
この便をはずすと、昼過ぎまでなかった。
わたしはユーロを持っていた。
バス内には、20人ほどの乗客がいた。
バス内に向かって、わたしは大声を張り上げた。
「両替をお願いします。ユーロをもっているので、クローネと交換してください」と。
英語がわかる人が、ほとんど居ないようであった。
だが一番前の老婦人が、小銭を出してくれた。
お金が足りないと思い、出してくれたようだ。
2~3回、同じ言葉でみなさんにお願いしたが、反応はなかった。
するとバスに乗るために後列にいた青年が、お金を差し出してくれた。
私たちは何度も「ありがとう」と言って、3人はバスに乗ることができた。
バスの中で、青年にお返しするユーロの計算をした。
青年もベルゲンまでだった。

もし、この青年がクローネを差し出してくれなかったら、わたしは持っている日本製の品物を
乗客に、買ってもらうこころづもりをしていた。
途中から小雨模様になったが、あくまでも緑は美しかった。
北欧は、どこの道を走っても、自然があふれていた。
のどかな風景に、眠気が誘われた。

ベルゲンに到着し、青年が降りてくるのを待った。
青年にユーロを差し出すと、いらないと言われた。
日本円にして900円位だったが、青年の好意に甘えた。

以前、ひとり旅最後の日のドイツの地下鉄でも、お金が足りなくなり、
空港までのチケットが、買えなかった。
通り過ぎる婦人に、理由を話し両替をお願いした。
すると、彼女はチケットを買ってくださり、何も要求されなかった。
空港内で食べる予定のパンを差し出したが、笑顔で手を振り去っていった。
移民のような婦人で、身なりも立派でなかった。
彼女もどこかで人に助けられた経験があるようで、その態度はやさしかった。

ベルゲンに到着するなり、すぐに案内所を探した。
そこでユースホステルの予約確認と両替をおこなった。
すぐちかくに市場があった。
この市場は、魚介類と野菜もあり、そこで食べれる惣菜もあった。
一回りすると、日本人女性が働いている惣菜売り場があった。
久しぶりの日本語の会話で、美味しいものを聞いた。
テーブルと椅子も完備され、ランチをそこで食べた。
日本にある良く似た、すり身の揚げ物が、大変美味しかった。
持ち帰り用もできたので、夕食の分も買った。

ユースホステルには、バスで行かないと行けなかった。
ユネスコ世界遺産のブリッゲンもすぐ近くだったが、明日にした。
バスはカラフルな家が建つ市内を走り、山を登っていった。
中腹まで来ると、ユースホステル近くのバス停があった。
そこで降りて、ユースホステルに向かった。
山の中腹にあり、環境は抜群であった。
敷地内のある場所からは、町を一望できる展望場もあった。
館内も清潔で、スタッフも親切で、設備も立派だった。
ただ、3人部屋はなかったので、わたしのみのドミトリーにした。
ここは、女性のみのドミトリーで、6人部屋だった。
そしてここで、素敵な夜が待っていた。
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?