見出し画像

『かもねんしゃいん』第3話

 ○豪邸・広間(夜)
 
パリピ男「(マイクに)ドリームターイム!」
   黒服たちがドラッグを来客に渡していく。
まり愛・秀二「!」
 
○どこかの部屋(夜)
 
男1「お前を始末する」
サクラ「!」
 
○豪邸・廊下(夜)
 
   扉前にペロンを追い詰めた獅子。
獅子「ご主人様が待ってるぞ」
   扉を引っ掻き出すペロン。
獅子「…開けるのか?」
ペロン「にゃん」
獅子「(ドアを開ける)」
   部屋──本棚の前で「にゃーん」と
   泣くペロン。
獅子「?(本棚に手を掛ける)何かあるのぉぉ」
   本棚がギィーと扉のように開く。
獅子「あああッ」
   下り階段を転がり落ちていく獅子。
 
○どこかの部屋(夜)
 
サクラ「嫌…」
男1「一瞬で終わる」
   サクラに手をかけようとする男1。
   と、「あああ!」の声と共に扉が
   ドンッと鳴る。
男1「!?(扉を開ける)」
獅子「(がいた)痛ってぇ(起き上がり)…」
男1「誰だ」
獅子のM「ヤバいヤツう!」
     *    *    *
   フラッシュバック──第2話より。
監督「やり過ごせる!」
     *    *    *
獅子「(笑顔で)お日柄もよろしいようで」
男1「あん?」
獅子のM「やり過ごせねぇじゃねぇか!」
   獅子の首を絞める男1。
獅子のM「死ぬ死ぬ」
   「にゃーん」とペロンの鳴き声。
サクラの声「ペロン!」
獅子のM「この声…」
男1「死ね」
サクラの声「無事だったんだ」
獅子のM「無事、だとぉ!」
   男の腕を引き離していく獅子。
男1「おお」
   男1の後ろに回り込み、チョーク
   スリーパーを決める獅子。
獅子のM「落ちろ」
男1「んぎぎぎ」
獅子「落ちろッ」
    ガクッと気を失う男1。
獅子「はぁはぁ(「獅子?」の声に見る)…」
サクラ「いたんだ」
獅子「死ぬとこだ!」
サクラ「何でいるのよ」
獅子「巻き込まれたんだ、お前のせいで!」
サクラ「またまたぁ」
獅子のM「(拳を握りしめ)殴りたい」
獅子「(溜息ついて)何でいるかは知らないが、
 早くここから逃げるぞ」
サクラ「嫌」
獅子「そうか、嫌か(ビックリして)嫌ッ? 
 危険なんだ、警察が今にも」
サクラ「人身売買を止めないと」
獅子「そうそう人身売買を止めええッ!? 
 じ、人身売買?」
 
○豪邸・広間(夜)
 
まり愛「(ドラッグを手に)間違いない」
秀二「(同じく)これ…ブラックキャットか?」
まり愛「ええ」
秀二「お前がホントに捕まえたいのは」
まり愛「猫宮凶事」
秀二「人身売買って噂も」
まり愛「ええ。広間は待機してる部下に任せる」
秀二「(溜息)とんでもねぇ案件よこしやが
 って」
まり愛「だからあなたを呼んだの」
秀二「サクラに猫探し任せてよかった」
 
○同・廊下(夜)
 
   歩いている獅子とペロンを抱えている
   サクラ。
サクラ「まり愛さん来てるの!?」
獅子「パーティーに潜入してるみたいだったが…
 お前の言うことがホントなら、人身売買が本
 当の目的なのかも」
サクラ「絶対そうよ」
獅子「変な男もいたな。お前のこと知ってたぞ」
サクラ「え」
   外が騒がしくなっている。
獅子「(窓から見て)! 警察だッ」
サクラ「嘘!?」
   黒服たちを取り押さえている警察。
獅子「逃げるぞ!」
サクラ「人身売買は?」
獅子「身の安全を確保する方が大事だろ」
サクラ「そうだけど」
   「突入!」と警察の声が響き渡る。
獅子「行くぞ!」
 
○裏口〜中庭(夜)
 
   出てきた獅子とサクラ。
獅子「ふう」
   と、草で覆い被った地面がガコンと扉の
   ように下から浮き上がる。
獅子・サクラ「!」
   下から出てきたのは猫宮。
猫宮「(見て)…何だお前ら」
獅子・サクラ「…」
猫宮「聞いてるのか」
サクラ「(猫宮を指して)人身売買?」
猫宮「!」
獅子「(片言で)じんしん、ばいばい?」
サクラ「なぜ片言!?」
獅子「外国人だろ。髭モジャだし」
サクラ「なら英語使いなさいよ」
獅子「日本人だからな、俺は」
サクラ「話せないのね。いいわ」
猫宮「…」
サクラ「(片言で)じんしん、ばいばい?」
獅子「お前もか!」
猫宮「ふざけんてのかッ(ナイフを取り出す)」
獅子・サクラ「!」
   と、警察の声が聞こえてくる。
猫宮「サツか(逃げ出す)」
獅子・サクラ「!」
   *    *    *
猫宮「はあはあ(「動くな!」の声に止
 まる)!」
   拳銃を構えたまり愛と秀二がいる。
まり愛「ブラックキャット日本支部支部長、猫宮
 凶事。ドラッグの違法所持売買及び、人身売買
 の容疑で逮捕する」
   と、後ろから獅子とサクラが来る。
サクラ「観念しろ!」
獅子「逃げられねぇぞ!」
   挟まれた猫宮。
サクラ「(片言で)かんねん、しろ!」
獅子「(片言で)にげられ、ねぇぞ!」
猫宮「日本人だ、俺はッ」
獅子・サクラ「え?」
秀二「サクラ!」
まり愛「獅子!」
サクラ「!」
獅子「まり愛さん!」
ペロン「(サクラに抱きかかえられている)
 にゃーん」
まり愛「ペロンちゃん!?」
秀二「何で…ていうか(獅子を指し)お前!」
獅子「違います! 俺はサクラを」
秀二「呼び捨てにするなッ」
まり愛「ペロンちゃん!」
サクラ「(秀二を見て)何でいるのよ」
猫宮「うるさい!」
4人「!」
   猫宮の手にはボタンスイッチの機械が
   握られている。
猫宮「これを押したらボンッ。人質全員あの
 世行きだ」
4人「!?」
まり愛「そんなことしてもあなたの罪は重くな
 るだけよ」
猫宮「俺は消される。なら最後にドデカい花火
 打ち上げた方がいいだろ」
まり愛「…組織について話すなら、情状酌量の
 余地はあるわ。私が取り計らってあげる」
猫宮「そんなもんに何の意味もねぇ」
秀二「(小声で)撃て」
まり愛「え」
秀二「お前がやらねぇなら、俺がやる」
まり愛「人質がいるのよ。間違ってボタンに触れ
 でもしたら」
サクラ「私を人質にしなさい!」
まり愛・秀二「え」
獅子のM「またかよ!」
猫宮「は?」
サクラ「聞こえなかったの?」
秀二「馬鹿なことはやめろ!」
サクラ「誰も守れなくて何が警察、何が探偵よ。
 私は誰も失いたくないし、失わせない!」
秀二「!」
獅子のM「何考えてんだ…いや、何も考えてねぇ
 な、絶対……ああもうッ」
サクラ「(猫宮に)私を連れて逃げればいい」
猫宮「…」
獅子「(サクラを制して)馬鹿だな、お前」
サクラ「え」
獅子「こんな状況で(サクラが抱えていたペロン
 を奪う)」
サクラ「獅子?」
ペロン「にゃん?」
獅子「怖くないのか。俺は怖いね。演じてるとき
 もそう。これでいいのか、こんな演技でって。
 今の現状から飛び出せるのか、エロVシネから
 羽ばたけるのかって」
秀二「あいつ、何を」
獅子「なのにお前は、いつも自ら危険に飛び込ん
 で…ったく名探偵になるならもっとスマートに
 解決しろよ」
   猫宮に近づく獅子。
猫宮「止まれッ」
   ボタンスイッチに手を掛ける猫宮。
獅子「だが、俺もこのままじゃいけないと思って
 た。あの名俳優ならどんな状況でもきっとその
 状況に合わせた、最も効果的な人物を演じて乗
 り切るんだろうと」
サクラ「…」
獅子「猫宮っつったか。人に言えた義理じゃねぇ
 が、お前…クソだな」
猫宮「!」
獅子「まあ、クソなのは構わねぇが、他人の人生
 をクソにするなよ。巻き込むな」
獅子のM「俺は最強のスーパーヒーロー」
獅子「人の命、何だと思ってやがる」
獅子のM「演じろ、演じきろ! 
 名俳優になるんだろ、レオン!」
猫宮「ふざけんのも大概にしろッ」
獅子「かもねんしゃいん」
猫宮「?」
秀二「(拳銃を構えて)準備しろ」
まり愛「ええ」
獅子「(ペロンに)頼むぜ」
ペロン「にゃん」
猫宮「おい!」
サクラ「行け…輝け!」
獅子「かもねんしゃいん!」
   掴んでいたペロンを猫宮に投げる。
   投げられたペロンは剛速球の如き
   早さで、猫宮に向かって飛んでいく。
   余りにも早さで、ブサイクになって
   いるペロン。
まり愛「(嫌あ、という表情で)ペローン!!」
秀 二「嘘ぉーん!!」
猫 宮「!」
   猫宮の顔にピタッと張り付くペロン。
ペロン「(キラーンと目が光り)にゃーんッ」
   猫宮の顔をシャシャシャと猫爪で引っ掻く
   ペロン。
猫 宮「ぎゃあああ!」
   持っていたスイッチボタンを思わず放り
   投げる猫宮。ボタンを下にして地面に向
   かって落ちていく。
まり愛・サクラ「!」
獅子「げ!」
   バンッと銃声が響き渡る。
3人「!?」
   スイッチボタンが粉々に砕け散る。
秀二「(構えている銃から出ている硝煙)…」
 
○中庭(夜)
 
   手錠を掛けられ連行されていく猫宮。
まり愛「ドラッグ漬けにされていた人たちも無事
 救出したわ」
サクラ「よかったぁ」
獅子「あの、先輩がいたと思うんですけど」
まり愛「広間にいた人は全員捕まったわよ。
 取り調べないとわからないけど、何らか
 の処分があるとは思う」
獅子「そうですか」
秀二「(獅子に)こいつも逮捕したほうがいいん
 じゃないか」
獅子「え」
サクラ「何言ってるの」
秀二「危険だぞ、こいつは。サクラをいやらしい
 目で見てる」
獅子「見てるか!」
まり愛「やめなさい、大人げない」
秀二「…」
まり愛「2人とも、帰っていいわよ」
獅子「え」
サクラ「取り調べは?」
まり愛「(抱えていたペロンを見せて)猫探し、
 してただけでしょ?」
獅子・サクラ「(微笑む)」
   会釈して行く2人。
サクラ「(振り返り、秀二に)ねぇ」
秀二「?」
サクラ「今度教えてよ、銃の撃ち方」
秀二「は?」
サクラ「約束ね、お父さん」
獅子「お、おお父さん!?」
秀二「お父さんと呼ぶなッ」
まり愛「(溜息)」
サクラ「(獅子の腕を掴み)行こ!」
獅子「お父さん……」
秀二「逮捕だ、逮捕ッ」
 
                         END

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?