見出し画像

【詩】満ち満ちる世界の中で差す傘は

海は波に満たされる
地は蠢きに満たされる
空は風に満たされる

満ち満ちる世界のなかは
たゆたうには窮屈で
口遊むのも息苦しく
ささやきに乗せた
ことばたちすら
ひしめき
軋む

この世界のなかで
差す傘は

満ち満ちる世界に
こぼれた
余白

傘の影は
ヴェールとなり

満ち満ちる世界を隔つ
しなやかな
シェルターになる

傘の中

あなたは
覚えたばかりの
指編みで

ループを作って
引いては
新たなループを生み出し

呼吸のように
赤い鎖を繋ぎ

わたしは
詩をひとつひとつ
編み連ねる



(作者から)
ここしばらく

親しい友人の死に際し、
書き留めた言葉の断片を
できごとの順を追いながら
いくつかの詩の形にしてきました。

現実を受け止められない思い
喪失感
埋めてよいのか
埋めてはいけないものなのか
今だにわからない
空白のようなもの

まだ、自分の中にあるものが
形にならない
言葉にならないものもあるのですが、

ふと、
空白を感じるのも辛いけど、
満ちすぎているのも苦しいように
思いました。

満ちすぎていて苦しい。
そのなかでは
どんなふうに
息を継ぐのだろうと思って
できた詩です。

満ち満ちる世界と
傘、
手鎖編み

それらのイメージと言葉が
ひとつの形に
なりたがっていたのですが、
うまく形になっているでしょうか?

いろいろな
言葉やイメージも
溢れてきているので
それらも
形にしていきたいと
思っています。

これからも
自分になじむ言葉で
詩を編み続けたいと思います。
また、
どうぞご訪問ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?