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【詩】ナルシシストの鏡

わたしがあなたの目を見つめるのは
あなたの目の奥を覗きたいのではなくて
ただ
あなたの目に映るわたしを
見たいから

わたしがあなたと抱き合うのは
心を溶け合わせたいからではなくて
ただ
極限までつぶされたわたしの身体を
感じたいから

わたしがあなたとおしゃべりするのは
あなたの声を聴きたいからではなくて
ただ
あなたの声の中に反響するわたしの声を
聴きたいから

わたしがあなたと言葉を交わすのは
あなたを知りたいからではなくて
ただ
わたし自身のありのままの姿を
知りたいから

いつも
いつも
あなたには
わたしを鏡のように映し出すことを
望んでいて

すべて
すべて
わたしの中から放たれるものは
鏡に反射するだけで
なにも変わらず
わたしに還ってきて

幾重も
幾重も
張り巡らされた鏡の中で
わたしはひとり回り続ける

だから
だから

あなたのことなんて

これっぽっちも考えていない


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