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【詩】蒼穹の白鯨

アスファルト焦げる住宅街で 奇妙な声を聴いた

それは高い音だが、不快感はなく
どこか涼しい風を運んでくれた

僕は少し辺りを見渡してから歩こうとするけど、
また足を止めてしまった

波の音がする
地球の揺り篭にゆられた水の音がする

それは空から響いた

ぽつ ぽつ ぽつ という雨音が
僕の目線をうえへと誘う

不思議な声と波の音が
だんだん大きくなる

そして僕の瞳に映ったのは―――


蒼い海を泳ぐ白鯨だった


鯨の起こした水飛沫が、空から僕らへと落ちていく
蝉の鳴く夏に晴れた雨が降る

宝石のように輝く雨粒が
アスファルトに溶けて 消えていく


夏こそが水の一番美しい季節


僕はそう思った


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