見出し画像

【詩】狐の嫁入り

桜吹雪は幻のように美しく
あの日の記憶 忘れはしない

鳥居の真ん中 君と私
狐の嫁入り やむことはなく
雨音だけの世界で
二人で一つの会話を紡いだ

愛しい君との記憶は幻のように美しく
飴玉のように味わい続けた
なんども
なんども

だけど 満たされることはない

やがて桜枯れ 雪が舞う季節
鳥居の真ん中 ぽっつりと私
狐の嫁入り ふることはなく
石段見下ろして君が見えるのを
ずっと待ち続ける

最後に君と会ったのはいつか?

もう覚えてはいないが
あの桜が遠い記憶に感じるほどに
君の顔を見ていない

雪が鳥居を白に染める
狐の像も雪に隠れて
鮮やかな景色はもう名残もなくて

私の体は形を保てず
静かに瞼を閉じていく―――


「久しぶりだね」


―――懐かしい声
―――桜の匂い
春のような温もりに目覚める心

私の手を握るあなたの手
なんども なんども 求めた ぬくもり

涙のせいで
あなたの顔は満足に見れない
だけど
あなたは私を見つめてくれる

鳥居の真ん中 君と私
狐の嫁入り  再びふりだしはじめ
雨音だけの世界で

二人で一つの物語を紡ぎはじめよう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?