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大阪府大東市の地域リハビリ:事例から学ぶリノベーションまちづくり

 こんにちは。私は、2011年より作業療法士としてのキャリアを歩み始め、現在は訪問看護ステーションに勤務する一方で、個人事業主としても活動を行っています。人生の中で、常に好奇心をもって、前向きに取り組んでいます。

 今回の記事では、大阪府大東市におけるまちづくり会社「coomin」の先進的な取り組みを紹介します。彼らが「リノベーションまちづくり」と「地域リハビリ」を組み合わせて進めるプロジェクトの詳細に迫ります。

 現代社会は少子高齢化の影響を受け、私たちのコミュニティは疎外感を増しています。しかし、リノベーションを活用したコミュニティ再構築の取り組みが注目されています。特に「リノベーションとまちづくり」のプロジェクトでは、空き家や公共スペースを有効活用し、補助金を使わずに街の魅力を再発見する活動が進められています。私も31歳で入学した美大で、この活動に興味を持ち、卒業論文で取り組みましたが、作業療法と地域活性化の組み合わせは容易ではなく、計画は中断してしまいました。卒業論文の方はなんとか合格を果たしましたが、私はその探求を続けています。

 大東市は公民の協働により、地域の活性化と社会的課題の解決を目指しています。その中心的役割を果たしているのは、市が主導して設立したまちづくり株式会社「coomin」です。この会社は公的施設のリノベーションを行いつつ、数多くの地域活性化プロジェクトを実施し、新たな経済サイクルを築き上げています。特筆すべきは、地域リハビリに関連した事業も手がけていることです。

 「coominは、介護予防に特化した専門的な知識を提供するコンサルティング事業、大学との連携による健康や長寿をテーマにした商品の開発といったLABO事業を展開しています。さらに、2019年からは事業は一層の拡大を見せ、全国で初めて機関型包括支援センターの運営を委託されるまでに至りました。

 「coomin」がこれらの事業を推進できる背後には、理学療法士である山本和儀氏(1938-2007)の影響があります。山本氏は「地域リハビリの父」として知られ、彼の功績により大東市は地域リハビリの先進地域として注目されるようになりました。彼の尽力により、市内のリハビリ環境は大変発展し、市町村役所の中でリハビリテーション部門を持つ唯一の時期も生まれました。

 そして、 「coomin」の魅力は、まちづくり事業と地域リハビリ関連の事業を進めることにより、シナジー効果を生む点にあります。シナジーは、異なる要素が結合して、単独の効果を超える大きな成果を生むことを指します。大東市のリノベーションまちづくりと地域リハビリの結びつきは、まさにこのシナジー効果を体現しています。

 この記事では、山本和儀氏の功績やまちづくり会社「coomin」についてさらに詳しく書いていきます。この記事を読んでいただいた療法士の皆様が、新しい行動のきっかけになれば幸いです。


(1)大阪府における地域リハの動向

 2000年に国が「地域リハビリテーション推進事業実要網」を策定したのを受け、大阪府も『大阪府地域リハ推進事業実要網』を設定しました。大阪府から地域リハ支援センターとして指定を受けた「府立身体障がい者福祉センター」を中心に、2次医療圏域ごとの地域リハ地域支援センターと各保健所とが連携して、地域リハの推進を行いました。大阪府の地域リハは非常に活発で、全国地域リハ研究会の会長には大阪府の保健所出身の医師が就任しています。しかし、2013年に政策方針の変更で「大阪府地域リハ推進事業」は終了しました。大阪府は、リハビリの各分野を担当課に分けて、効率を重視しましたが、結果として多くの地域リハの専門家が大阪を去ったのです。

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