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真夜中のアウトプット2023/1/22(S.L.A.C.K.)

心療内科で処方されている睡眠薬をのみわすれて寝ると、大体3時くらいには目が覚めてしまう。この時間から薬を飲むと日中頭がボケて仕事に差し障るのでそれはせず、だいたい音楽を聴いたりスマホを眺めたりしているうちにウトウトしてきて1〜2時間くらい寝るというのが通常のルーティンだが、何となく勿体無い気がするので日記というか雑感のようなものをメモする。妻と娘は隣の布団で寝ている。娘がいま寝言をいった。

S.L.A.C.K(現5lack)の”NEXT”という曲がある。楽曲自体はもちろん、ビデオも素晴らしくて未だに見返すことがある。

この曲の「適当にいけよ/適当にいけよ/考え込むな/考え込むな」というフックが好きだ。それはとりもなおさず僕が考え込むタチであり、ほどよく「適当にいく」のが苦手であるということの裏返しであって、もしかしたら作り手も実はそうなのかもしれないが、ともあれ救われるような、肩の荷をすっと下ろしてもらえるような感覚がある。YouTubeについているコメントを読む限り、同じことを考えている(いた)人は多いようだ。

この曲、そしてこれが収録されているアルバム”Whalabout?”(2009)を初めて聴いたのは高2のときだった。季節は冬で、当時僕は大学受験のことをうっすら考えはじめるような時期に入っていたが、特に何を始めるでもなく怠惰に日々を過ごしていた。そんな中、たしかsnoozerの年間ベストで野田努さんが紹介していたのをきっかけにS.L.A.C.Kを知った。

当時もちろん僕は実家で暮らしていたが、休みの日になると父親が「現状に満足するな」「上を目指して努力しろ」的な説教を事あるごとにしてきてウザいことこの上なかった。リーマンショックで痛い目を見たのか、それとも新自由主義的な価値観にかぶれたのか、とにかくそんな感じだった。「朝活」的なものにもハマっていたし僕のことをそれに巻き込もうともしていて、朝方、僕が昼過ぎまで寝ちゃおうかななどと考えながら自室でゴロゴロしていると勝手に入ってきて叩き起こしてきた。娘が思春期を迎えたら絶対にそんなことはするまいと心に誓っている。

そんな日々にあって、S.L.A.C.K.が提示する価値観は僕に呼吸する場所を与えてくれるようなところがあった。アルバムの冒頭、ドゥーワップを素晴らしくモダンに解釈した”Sin Son (In)”において、彼は「最低限で暮らしたい」と歌っている。それは僕自身の偽らざる気持ちでもあった。

今にして思えば3.11が日常を丸ごとひっくり返す前の話だし、そもそも僕はバカ高い金を払ってもらいながら中高一貫の私学に通う良いご身分だったわけで、そういう小金持ちのボンクラ特有の贅沢な悩みだった(一年ほど前にはすでに、「最低限」で暮らすことすらできない人たちのために年越し派遣村が開設されていたのだから)という振り返りもできてしまうわけだが、まあ、何というか、狭い世界の中でそれなりに苦しさもあったのだ。

アルバムのハイライトである”That’s Me”で、S.L.A.C.K.は「俺は自分の足でクラブへ行き/自分でFriendsを選び/自分で曲を作る/シーンのルールには興味もない/Musicのみ/Musicのみ」とラップしている。未成年だった僕は当然クラブに行ったことなどなかったし、悪ぶっている同級生が嗜んでいた酒もタバコもその味を知らなかったが、だからこそ想像が膨らむところもあって、自分の知らない世界を見せてくれる年上のオシャレな兄ちゃんを得たような、そんな気分にもなったものだった。

明日も書くかもしれない。短くても長くても、そのときのテンションとか時間の有無に任せて適当に文章を書いてみるのは色々な意味でいいかもしれない。この文章を書きながら久しぶりに“Whalabout?”を聴き返しているからか、けっきょく頭がふわふわしてしまっている。まあいいか。

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