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ヘビの疾病・健康管理④くる病

ヘビだけではなく、爬虫類でしばしば起こる疾病の1つが骨の形成異常によって起こる "くる病" です。

カルシウムやリンなど、電解質が骨にうまく沈着できないと骨は柔らかく、もろくなります。その結果、骨が曲がるなどして正常な運動機能に障害が起こる、これがくる病です。

くる病が起こる原因としてはさまざまなことが考えられ、カルシウムだけをサプリメントなどで与えていればいい、というわけではありません。

骨を堅くするために必要なリンの吸収、そのために重要なビタミンDの摂取が有効だとされますが、ほかにマグネシウム、あるいはカルシウムとリン・マグネシウムの摂取量のバランスも骨の健全な形成と深く関わっています。

また、最近ではリンの血中濃度がくる病と深く関連している、という報告もあり、カルシウムはくる病とは無関係だとする説もあります。

雑食性のナミヘビでは、餌による栄養操作である程度の予防が可能ですが(ヘビの餌:①雑食性のナミヘビ類の餌|cobra_thief (note.com))、もちろんそれだけではリスク回避には頼りないと言えるでしょう。

くる病の予防と深く関連をもつビタミンDは、紫外線の照射により表皮で生成されます。このことで、いわゆる "紫外線ライト" の使用が推奨されますが、市販の紫外線ライトは一定の波長しか照射できないため、表皮のビタミンD生成にはほぼ無力に近いと考えられます。

したがって、必ず一定時間、ヘビに自然光を照射させることは健全な飼育においては不可欠だと言えるでしょう(ヘビに不可欠な太陽光。"時間" と "質"の管理 |cobra_thief (note.com))。

くる病が発症し、進行すると完全に元の状態へと完治することは難しく、進行を遅らせる対処療法しかできないようです。

とはいえ、くる病をわずらった個体が長生きできないか、というとそんなことはありません。
たしかに運動機能に障害が出ることで飼育管理者が摂餌や給水など、一部の行動をサポートをしなければならないこともあります。
しかし、直ちに命を奪うという疾病ではないため、太陽光の適度な照射によって進行を遅らせつつ生涯を全うすることも不可能ではありません。

飼育管理者は、絶対に自ら ”これはもう面倒を見切れない” などと飼育を放棄してはいけません。
仮に生まれつき障害を持っていたり、重度の疾病を発症したりしても、あきらめることなく最後まで ”それでも生きようとする動物” の意思を尊重し、救おうとする努力をする必要があります。

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