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ヘビの疾病・健康管理①脱皮不全

ヘビの "脱皮不全" は、飼育下において比較的よく見られる健康異常の1つです。
定期的に行われるヘビの表皮、皮下組織の更新がうまくいかない場合、身体の一部に古い組織が残ってしまったり、あるいはひどい時には脱落すべき表皮が細切れになり、全身に "網目状" に古い表皮が張り付いているというような状態を見ることもあります。

脱皮不全は "湿度不足" によるもの、という情報が紹介されることがありますが、実際的には空気中の水分と脱皮不全との間にはほぼ関連性はありません。

脱皮不全は一種の代謝異常で、体液や血流の不足、すなわち循環器系の不全によって起こります。
脱皮の際に必要な液体(体液)は空気中から取り込むものではなく、ヘビの体内の水分量と関係しているのです。

したがって、いくら空気中の湿度を上げたところで、脱皮という生理現象の正常化を促すことはできません。せいぜい、ケージの壁面についた雫をヘビが舐め取り、体液に流用することで若干良くなるかも知れない、という程度のものでしょうか。

脱皮不全が起こる原因の最大のものは、ヘビにかかる恒常的なストレスです。ストレスにより血流や体液の循環に異常が起こり(脱皮の際にはこれらが低下するのが普通ですが、ストレス負荷によりそれが必要値を超える)、古い組織と新しい組織の剥離がうまくいかなくなる。
簡単に言えば、こういう仕組みで起こるのが脱皮不全です。

こう考えると、脱皮不全を予防することは難しくありません。すなわち、普段の飼育個体のストレスを減らしてあげればいいのですから。
具体的には床材(https://note.com/calliophis/n/n906bb3c64d5a)、ケージ(https://note.com/calliophis/n/n966f512a044c)、そしてシェルター(https://note.com/calliophis/n/n884821873d97)などにヘビのストレス負荷の原因となっていることがないかを確認します。その上で、問題のある箇所があれば、正常化することで、ほとんどの脱皮不全は改善されることでしょう。

脱皮不全が起きた際に、ヘビを "温浴させる" などという記事を見ることもありますが、このような措置はほとんど狂気の沙汰と言ってもいいかも知れません。すなわち、ヘビのストレスを異常に増大させるものだからです。
本来しなくてはならない措置と真逆のことをしても、改善される可能性は全くありません。

外的な水分によって一時的には古い組織が脱落するかも知れませんが、根本的な解決にはなりませんので、何度でも脱皮不全が繰り返され、その度にストレスが増大して結果的には寿命が縮まることでしょう。
したがって、温浴などということは絶対にしてはいけません。

脱皮不全に関わるもう一つのポイントは、水分摂取です。空気中の水分は無関係と記しましたが、ヘビの体内の水分量は決して無関係というわけではありません。
脱皮にあたり、ヘビが普段よりも水分を必要とすることは間違いありません。脱皮には脱皮には一定値の体液の循環、あるいは血流の促進は不可欠だからです。

脱皮の前後に拒食を起こすヘビがいるのも、脱皮で体液を消費することによって、餌の消化に必要な水分が不足がちになることと関係しています。
摂餌・消化に必要な水分を節約するため、ヘビが餌を食べなくなるというのが脱皮前後に拒食が起こる仕組みでしょう。

これを考えると、飲用の水が汚れていたり、水質に問題があった場合にヘビが水を摂取できないとなれば脱皮不全が起こりやすくなります。

もちろん脱皮の時だけ気をつければいい、というわけでは決してありませんが、特に若い個体、あるいは暖かい時期では比較的代謝が上がり、脱皮の頻度も上がる傾向にあることから、飲用の水の保全には十分に注意を払う必要があります。

なお水の管理については、別項(https://note.com/calliophis/n/n3cb0161cbb56)でご紹介していますので、よろしければ参考にしてみてください。

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