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新卒のオペレーターが1年で異動した話

新卒でコールセンターに配属になったが

会社に入社して、1年ほど毎日電話をとっていた。オペレーターとしても仕事に慣れてきて、自分なりにこうしよう、ああしようなどという発展的な考えも浮かぶようになった。そんなある日、コールセンター長に呼ばれて、さてなんだろうとセンター長の長机に行ってみると、「あなたもう電話の受付はいいから、来月1日からレポートのチームにいきなさい。」という。なんだか今思うと、フォレスト・ガンプが軍隊で卓球をやってて、いきなり「除隊」の知らせで軍隊を去るというシーンがあるが、それくらいあっけなかった。

電話対応の品質がわるかったとか、苦情が多かったとか、電話に向いてないと判断されたか、そういうことではないと信じているが、結果としてはもう少しやってもよかったなくらいのところで、違う仕事に行ったのは、自分にとってはよかったと思っている。会社勤めでは自分の好みに関わらず、異動や転勤があるが、自分のやりたいことや向き不向きがよくわからない段階では、思わぬ仕事をしてみるのもよいと思う。

一応、外資系の企業で、新卒採用の一期生で入社したので、先輩社員は全員転職組だ。当時としては面白い環境だったと思う。自分はこの会社で骨をうずめてもよいくらいの気持ちで入社したのだが、先輩は全員転職組で、バリバリの日本企業から初めての転職で来ている先輩もいれば、もろに外資系のジョブホッパーのような人もいて、先輩たちのいうことも一貫性があまりない。はやくから、先輩のいうことも大してあてにならないものだと感じながらも、こっちはなにもスキルがないから大人しくしていた。

コールセンターのレポートを経営に報告する

で、レポートチームというのが何をするのかというと、まったく知らなかった。ざっくりいうと、コールセンターに来た問合せや苦情の件数を計算し、さらにその内容などを分析して経営陣にレポートを書くというチームだ。いまなら、問合せのみならず売上やWEBページの閲覧の遷移との関係など、ものすごい詳しいデータが、ダッシュボード化されて経営陣がすぐに確認できるようになっているところも多いだろう。しかし、当時は本当にのどかなものだ。

日次や週次のレポート、苦情などはオペレーターが紙に書いたメモなどを集計したり、内容を吟味したりしていた。そして月初になると、前月の状況を分析した詳細なレポートを作成して、毎月第5営業日くらいに日本語で提出する。そのあと、翻訳業者に翻訳を依頼してさらに1週間後くらいに英語のレポートが米国人の社長や幹部に提出される。

紙とハサミのリアル・カット&ペースト

パソコンの機能に、カットアンドペーストというのがある。エクセルで作成したエクセルのグラフをワードに貼って、図表付きのレポートを作成したりする機能だ。しかし、最初にそのチームに異動した時には、パソコンはまだウィンドウズではなくて、キャノンのワードプロセッサー専用機(CANOWORD)で文章を作成し、グラフはロータス123というDOSのソフトを使って作成していた。ワープロでは、グラフを貼るであろうところに余白を作っておき、印刷する。そしてグラフも別に紙で印刷しておく。そしてグラフを余白に合うように縮小コピーをする。そのあと、はさみでグラフを切って(カット)、そして(アンド)、糊を裏に塗って、紙の余白に張り付ける(ペースト)。まさにリアル・カットアンドペーストだ。

まったく自分は何やってんのかなぁという気持ちは、オペレーターとして電話を取っている時よりも強く持った。思い切ったことを書こうと思うと、先輩や上司のチェックを受けるし、嬉々として“テニヲハ”や細かい表現ばかりにこだわって時間をかけて直すのにもへきえきした。

経営陣が好んで読んでいたのは顧客の生の声だった

もっとも経営陣が熱心に読んでいたのは、件数のレポートや所見などよりも、顧客の生の声やコメントを、1件1件読めるようにしたものだった。それと合わせての分析レポートはよく読まれていた。

今でいうと、VOC=Voice of Customer (ボイス・オブ・カスタマー)というやつだ。顧客の声に耳を傾ける、という活動は昔も今も最も重要なことだろう。そしてそれらの声をどのように活用するのか、会社の経営陣に課せられた重要な役割だ。

最近では、WEBサイトにおける閲覧履歴や何が一番売上につながるかという導線まで、またさまざまなマーケティング事業者による分析などが活発に行われ、こうした分析で、顧客の属性やあるいや個人レベルの特定までを可能にしている。

なので、コールセンターにだけ顧客の生の声があるかというとそうでもないし、相対的にコールセンターの情報の価値はさがったのかもしれない。それでもなお、顧客の要望や行動に関する豊富な情報があるはずだ。さらにいうとオペレーターと話した内容もかなりの精度で音声からテキストデータ化できるようになっている。こうしたテキストデータの分析は、今後さらに活用される機会が増えるだろう。

まとめ

・コールセンターの仕事はオペレーターだけじゃない

・レポート発信側の仕事を希望してみるのもおもしろい

・コールセンターの持つ情報はまだまだ価値があるはずだ

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