すばらしいワインは「低収量」と「熟したブドウ」で決まる?
私は27年間で30万本以上のワインをテイスティングしてきたが、未熟なブドウからとびきり上等のワインが生み出された例を知らない。
未熟なオレンジや桃、杏、さくらんぼをおいしいと思う人がいるだろうか?
格別なワインをつくるためには、低収量と熟したブドウは欠かせない。
にもかかわらず、驚くべきことに、多くのワイナリーがこの基本原則を理解していないように見えるのだ。
[引用: ロバート・パーカーが選ぶ 世界の極上ワイン (ロバート・M・パーカーJr.著)]
ワインの最高権威 ロバート パーカー
(Robert Parker)
これほどまでに影響力がある人は他にいるでしょうか。
ワインにはまってくると、必ず目にし耳にする名前が、ロバート パーカー (Robert Parker) です。
ワインの傍らに、RP...点やWA...点のように記されていることが多いことにお気づきの方もいらっしゃるかと思います。
RPは彼の名前のイニシャルで、WAは下記のとおりです。
彼は、ワインを100点方式で評価してきました。
Wine Advocate (WA; ワイン アドヴォケイト) というワインのニュースレターを発行し、1978年創刊以降、その影響力を広めてきました。
約40年後の2019年、71歳で引退しましたが、その影響力は今なお計り知れません。
ワインのつくり手、売り手、買い手に至るまで、世界中の非常に多くの人びとが、彼の点数を気にしてきました。
ニュースレターは、広告などは一切なく、最初から最後までただひたすら各ワインの評価が記されていました。
まるで電話帳です。写真すらありませんでした。
創刊号の表紙はこちら。
100点方式とは
100点の配分は、
50点: “出席点”
+
5点: 色と外観
15点: 香り
20点: 味わいと余韻
10点: 全体の品質と熟成可能性
としたようです。
そして点数の意味は、90点以上のみ記しますと、
90-95点「傑出している (outstanding)」
96-100点「並外れている (extraordinary)」
のような感じです。
テイスティング能力は「集中力」によるもの!?
ここで疑問がわきます。
「パーカーはなぜワインを評価できるのか、どのように評価しているのか」
という点です。
ワインの帝王 ロバート・パーカー (エリン・マッコイ著) に、以下のような記載がありました。
WA創刊前のことです。
自分がすぐれた舌を持っていることは確信していたが、それは生来の能力というよりは、集中力の賜物だろうと考えていた。
「集中力」
わたしにはこれがどういったことなのか、よくわかりません.....。
同書には、このようにも書かれていました。
これもまだWA創刊前。学生で結成したテイスティング会での一コマ。
パーカーは、ワインの味、香り、テクスチュアについて、あたかもそれらが建築物でもあるかのように、「見よう」としはじめた。
と。
1年間に1万本をテイスティングしていたそうですから、半端ないですね。
ざっと、1日30本です!
たとえこの尋常でない味見をやり遂げたとしても、ワインに数点単位の点数をつけるなんて、想像もつきません......。
「凝縮感」と「熟した果実味」がお好き!?
そして、彼は「凝縮感」と「熟した果実味」を好みとしたと言われています。
凝縮感.....これもわたしにはうまく説明できませんが、おそらく、果実味が豊か(つまっている)ということで、ぶどうの収穫が少ないことに主に起因するのだと思います。
熟した果実味については、主にぶどうの遅詰みによる熟度の高さに起因するのではないでしょうか。
ワインは、万人に共通の評価というものは難しいもので、彼の評価を好まない人びとも多かったようです。
しかし、それに影響力が優ったということは本当にすごいと思います。
金の前に屈しないニュートラルな姿勢がうけたのかもしれません。
226 対 226でフランスとアメリカは同点
ちなみに彼が現役時に100点をつけたワインは、フランス vs アメリカとでどちらが多いと思いますか?
カウントしてみました!
フランス100点ワイン「226 本」vs アメリカ100点ワイン「226 本」
なんと驚くことに、同数だったのです!!
では、そもそもの評価母数にちがいがあったのではないか、という疑問がわきます。
そこで、カウントしてみますと、
フランス 36,335 本 vs アメリカ 36,268 本
(つまり、フランス100点ワイン 0.6% vs アメリカ100点ワイン 0.6%)
でした。
二強を平等に評価しようとしたパーカーの姿勢・精神が、ほぼ均等な評価本数にもあらわれていました。
(Header Photo by Kym Ellis on Unsplash)