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漆塗り職人、保育士を目指す その7

一次試験である筆記の結果通知が届いた。

「実技試験受験票」と表に記載されていたので、中を開くよりも先に一次を通過していた事がわかった。

事前に選択していた「言語表現」と「音楽表現」の2つの実技試験を通過すれば保育士資格が得られる。

言語表現は3分間で童話を話すというもので、音楽表現は課題曲2曲を弾き歌いするというものである。

「試験は1ヶ月先やし、まだまだ余裕。」と思っていたら、あれよあれよと時間は過ぎていき、何の対策もしないまま気づけば試験当日の7月4日まで残り2週間となった。

これはまずいと思い対策する事にしたが、練習場所に困る。

私は祖父の残してくれた一軒家で生活しているが、隣人がトイレを流す音が聞こえるくらい音が筒抜けである。

そんな家屋で大きな声を出して童謡など歌う気がしないし、
3匹の子ブタを周囲に子どもがいる想定で大声で読み上げるなどとんでもない。
お隣さんから頭が変になったのかしらと思われそうではないか。

とはいえ私は試験のために防音室をレンタルするような人物でもない。

こうなったら、練習はそこそこにしておいて、当日のぶっつけ本番しかあるまい。

3匹の子ブタの読み上げは、暗記したものを小声で読み上げ、大声で読み上げるのは当日のみとした。


弾き歌いは大学時代に弾いていた事もあって、ギターを選んだ。

試験はアコースティックギターでの弾き歌いだが音が大きいので、練習ではエレキギターをアンプに繋がず小さい音でシャラシャラと弾く。

歌は隣人に聞こえないよう、小声で口ずさむのみである。
大きな音の出るアコースティックギターの練習は、仕事場の移転予定地である農村でする。

農村とはいえ、近隣の家が近いので、こちらでも童謡など大声で歌う気がおきない。

じゃあいつ歌うのだということだが、これはさすがにぶっつけ本番というわけにはいかない。
小声で歌っていては、高音部の音域が自分が歌えるものかわからなかったのである。

なので、歌は農村部に向かう峠道の運転中に声を張りあげて歌う。

当然、車のハンドルを握りながらギター演奏は出来ないので、歌のみの練習である。

ギターと歌を別々に練習して、当日に初めて両方を組み合わせるという分割練習方式を採用したのだ。
そんな方式があるのかは知らないが。

そして試験当日、思いもよらない展開が私を待ち受けていた。

みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。